Dungeon Antiqua の配信を観て思うこと
まーた小学生の読書感想文みたいなタイトルになってしまいました。
2024年10月10日にSteamでリリースした「Dungeon Antiqua」は、実況やプレイ動画の配信を強く意識して(テンポ感、ゲーム全体の尺が短め、ダンジョンが自動生成など)制作したのですが、その願望が叶ってかなりの数の動画がYotubeやニコニコ動画に上がっていて嬉しい限りです。
動画をアップしてくださった方々、本当にありがとうございます!
配信動画によって製作者が得る大きなメリットの1つは、一般的なプレイヤーが初見プレイしているときのリアルな感覚が伝わってきて偽りのないフィードバックが得られることですね。
レビューやXのポスト等ももちろん貴重なフィードバックなのですが、文章にまとめる=冷静になって鮮度が少し失われたりもするので、配信動画はその観点ではよりありがたみがあります。
というわけで、いろんな配信を観て得た気づきを整理がてら記録します。
ほぼ自分のためのメモ的な記事になっており、少なくともDungeon Antiquaを遊んだ方以外には、読んでいただいても何のこっちゃわからない内容であることをお断りしておきます。
1)ダンジョンわかりにくい問題
本作のダンジョンは自動生成ですが、そこまで気が利いたアルゴリズムで生成されているわけではないため、「人間がよく考えて設計した、プレイヤーにとって気持ちのいいダンジョン」ではなく、無機質に部屋や通路があったり意味不明な場所に一方通行ドアがあったりして、人間の認知的には「わかりにくい」構造になっていると思います。
そのため、配信でプレイヤーさんが「あれ、どうやったら戻れるんだ?こっち?ちがうちがう、えーっと」などと混乱されていることが多かったです。
また、最初はダンジョンが上下左右でループしていることにも気づかず、すぐそこから城下町に戻れるのに一周回って帰路につく、といったパターンもよく見かけました。
魔法使いレベル2呪文にバードアイという地図確認呪文も用意したのですが、迷う人ほど使わずに頑張って自分で歩き回りがちです。
結果、これと次の「拠点との往復ダルい問題」によって、探索にストレスを感じるプレイヤーも多いのではと思いました。
なお上下左右ループについては、自分としては(本家Wizがそうなので)当然そうするべきだと思って設計してしまっていたのですが、考えてみれば一般的には全然そんなことはなく、どちらかというと「ごく一部のいじわるなダンジョンの仕掛けとしてループするパターンがある」くらいの位置付けですよね。
レビューでも「上下左右ループやめてほしい」という意見があり、たしかになぁと納得しました。
2)拠点との往復ダルい問題
本作は拠点となる街は1ヶ所しかないので、何度も何度もこの唯一の拠点と往復しながらゲームを進めることになります。
せめて帰路は一方通行の仕掛けを使って素早く拠点に戻れるようにするなどの工夫はしたものの、往路は(中盤以降になるとエレベータを使えますが)、毎回探索済みの道を歩き直すことになってしまいます。
しかも前項で触れた通り、地下2階に行く道さえわかりづらくて迷ったりするため、じわじわとストレスが溜まっている印象を受けました。
慣れれば素早く下層にアクセスできるようになっていくのですが、問題はそこに至るまでですよね。
関連して、「回復の泉があるがMPは回復しない」という仕様があります。
もしMP回復もすれば、城下町に戻る回数も減ったのでこのストレスは軽減されたはずなので。
配信でも「え?MP回復せんの?」という不満そうな声を見かけています。これは、MP回復までしたら難易度が下がりすぎる、と思ったための仕様だったのですが、逆に泉でMP回復することを前提としたバランス設計はアリだったなと後になって思いました。
3)バトルをボタン連打で終わらせがち(脳筋プレイ)問題
ドラクエやFFなどのメジャーな(レトロ)RPGでもそうですが、対ザコ戦で呪文を使うのはいちいち考えるのが面倒だったり、本作の場合は呪文が最大9回の回数制で「がんがん使うとすぐ枯れる」という意識が生まれがちなのもあって、とりあえずボタン連打、またはオートモードで戦う人が多いようでした。
これはある程度は想定内ではあって、基本的には「戦士系を強く、魔法使いは活用すればボスや難所を突破しやすく」というバランス設計にしていました。
しかし、前述の泉で回復しない&拠点まで戻るのがダルい問題もあって、ますます呪文を使わない脳筋プレイに誘導してしまっているな、というのが複数の配信を観て得た気づきです。
プレイを進めて僧侶がリターン(帰還呪文)を覚えれば、実は「帰ろうと思えばいつでも帰れる」という状況が生まれるのですが、すでにその頃には「基本的に脳筋プレイでOK」という意識が定着しているのもあり、そこから戦術を変えるということもあまりなさそうでした。
脳筋プレイ中心で悪いかというと必ずしもそうでもないのですが、不評レビューの中に「戦闘が単調でリアル眠気に襲われるのが辛かった」というものがあり、これらの反省点を集約した象徴的な意見だと感じました。
4)ACと命中率問題
本作はWizardryを踏襲したAC(アーマークラス)制度を採用しており、自分的には「親の顔より見た」くらいの馴染みがあるのですが、非Wiz経験者には当然そうではないわけで、ACは下がるほうが良い/マイナスもある、という点がとにかく混乱するようです。
チュートリアルでも「ACは低い方がいい」って言わせているのですが、まあ読み飛ばしますよね、チュートリアルも。
本作の戦闘のバランス設計はこのAC方式を軸としており、以降のRPGの大半で使われる「攻撃力から相手の防御力を減算する」+「場合によって相手が回避する」といった方式のダメージ計算ではなく、「1回あたりのダメージ x ヒット数が攻撃力となり、相手のACに応じてヒット数が削られる」という、ダメージ軽減と回避判定が一体化した方式を用いています。
(ACの使い方はWizardyとも少し違うのですが、ここでは上述の「ダメージ軽減と回避判定が一体化した方式」をAC方式と呼びます。)
これは「現代のレトロゲー」としてはどうするのが良かったですかね。
「防御率:◯%」といった標記にするとかでしょうか。
また関連して、上記のような方式をとっているために、最序盤では特にミスが頻発します。
地下1階に「スピリット」というACが低めの敵を登場させているのですが、こいつが攻撃を避けまくることに憤激したり戸惑ったりする方が多く、「ミス=自分の行動が無駄になった/事態が一歩も好転しなかったストレス」を嫌がるプレイヤーが想像以上に多いのだなと気付かされました。
AC方式を前提にするとしても、少なくともこういった敵はもっと下層から登場させたり、もしくは回避率を控えめにしてその分HPや相手の攻撃力などで強さを調整するほうが(やりすぎると没個性になっちゃいますが)プレイヤーのストレスを軽減できそうですね。
まとめ
本作の仕様を今から変更することはありませんが(既存プレイヤーが混乱しますし)、「たられば」としては、以下のように改善することでプレイヤーのストレスを軽減できそうだと結論しています。
ダンジョンの(人間的な)わかりやすさに配慮すべき。特に上下左右ループは廃止、もしくは下層の一部のみ適用とする。
拠点との往復のダルさを軽減する工夫が欲しい。たとえば回復の泉でMPも回復すればそれだけでも減るし、テレポート呪文を初級呪文として用意して、一度でも行った階層にはすぐに戻れるようにするといった方法も考えられる。
上記の点とセットで(呪文をがんがん使える安心感を与える前提)、戦闘面で呪文職をより優遇するほうがバトル面の面白みが増すか。
現在のAC方式(マイナスのほうが良い)はWizプレイヤー以外にはわかりづらいので、表記を工夫したほうが良いかも。また同等の戦闘バランスでも「ミスが多い」ほうがプレイヤーのストレスが溜まる。
一方で、クリアまでプレイした方からは「あっさりしすぎていた」「簡単だった」という意見も多かったです。
ストレス要素を軽減することで(心理的な面も含めて)難易度がさらに下がることが想定されるので、あわせて歯応えやボリューム感を出す工夫が必要そうです。
それにしてもこの辺りの設計や調整、ゲーム制作していてめちゃくちゃ楽しい点ですね!