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取るに足らない孤独について


結局のところ人は孤独なわけ。

幸せなハッピーエンドの先にさえ、
トイレットペーパーの芯を拾うとか
グラスの結露を拭う
ティッシュペイパーとか
牛丼に付いてる七味を
冷蔵庫にしまうとか
そういうものが
ずっと存在しているわけ。

彼女はそう言った。

僕は
たしかにそうだ、と思った。

僕はこの後この缶コーヒーを飲み終えたら
彼女と別れて
ポケットに手を突っ込み電車に乗り
隣で眠りかけている中年の
くたびれた革靴を見て
ため息をつきながら
イヤフォンから流れる
ユーチューバーの高笑いを聴くだろうから。

そういう現実を突きつけられると
死にたくなるわけ。

彼女はそう言った。

僕は
たしかにそうだ、と思った。

退屈で日常的で取るに足らない孤独には
それは最高にドラマティックだ。

そうだね、死にたくなる。
僕はそう答えた。

そうして僕らは
空になったコーヒーの缶を手に取り
今朝見た芸能人の、ことさらどうでもいい
スキャンダルについて話しながら
ゴミ箱を探した。

彼女はこれからも
Twitterのタイムラインをスクロールしながら
納豆をかき混ぜながら
眉毛の剃り残しを探しながら
死にたくなるんだろう。

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