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【コラム】人の話を聴く技術
ワタシは怖そうなおじさんだが公認心理師である。医療従事者でもあるので国家資格のダブルホルダーだ。クソみたいな会社勤めや窮屈な正社員生活にねをあげ、二つの国家資格をうまいこと使ってフリーランス生活を送っている。ネットで見栄を張るのは簡単だが正直に話すと年収は500万ぐらいだ。週休3日ぐらい。月の労働時間は100〜120時間ぐらいだ。
まーこれをどう考えるのかだが、ワタシはまあまあ納得している。空いた時間で好きなクライミングが好きなだけできるからだ。無論産まれた時からこうだったわけではなく、がむしゃらに努力した20代30代をくぐり抜け、お金を貯め、正社員時代に結婚して子供を一人もうけ住宅ローンを組んだ。その土台があればこそこんな生活ができている。今だけ見るとしょぼくれているが、土台が割と堅固なのでこんなフラフラした生活でも普通にやっていけている。子供が一人なのも大きい。二人ならこの生活は破綻するだろう。また、嫁さんも昭和的な生活力があるタフな女なのでそれもありがたいことだ。まあもちろん無慈悲な税金や物価高により貯金は全然できてないが、コツコツ貯めようとはしている。。
そんなワタシだが、医療職単独なら正社員続けるしかなかっただろう。休みは少なく給料は安い。滅私奉公したって誰も認めてくれない。死ぬまで働かされ使い潰されるだけ。そんなのは嫌だった。
なので公認心理師の資格を取って心理の仕事を自営で始めた。空いた時間を使って人々のお悩みを聴く毎日だ。つうか医療職のほうも似たような仕事をしている。もうちょっと医学や薬学の知識が必要になるのだが、人を癒す仕事という意味では共通点が多い。また、こちらも病に苦しみ悩む人の話を聴く仕事でもある。
医療職のほうは悩みを相談されたら解決策を提示するのが必要だが、ワタシが在宅医療の分野にいるものだから、解決策を提示するより黙って聴くいわゆる「傾聴」のスキルが求められる。人は誰も自分の家で他人にアドバイスされるのを好まないのだ。
ただ聴くだけだろ。スキルとかあるのかと思うだろうが、SNS見てると、大抵の人は黙って他人の話を聴くことができないとわかった。ワタシはそれは得意だ。まあ仕事だからトーゼンだが。。。
心理の仕事はそれに輪をかけて傾聴が絶対基本の態度となる。何か言いたくても我慢する。相手の気持ちを考え、それを言う必要があるのかよく吟味し、大抵は付け焼き刃の安い助言などは必要ない、誰もそんなもんは求めてないとわかる。黙って…るわけではないが寄り添う態度、遠回しに回答を提示し相手に自分でそこに辿り着いてもらうような態度が求められる。面倒くさいね。
カウンセラーに男は少ない。この手の仕事は男は苦手であろう。男はズバッと解決策を提示し、相手に無理やり感謝させて気持ちよく終わりにするのが得意だ。ワタシもそうである。しかし、仕事なので我欲は我慢する。自分が言いたいだけ、言ってやりたいだけ。なんなら皮肉を言って相手を傷つけてやりたい、俺のほうが優秀だとわからせてやりたい、そんな醜い欲がヒトにはある。それを正しく認める。認識する。そしてそれは今だけは我慢する。封印する。その態度が必要だ。
また、相手に共感するのも男は苦手だ。つうかワタシはこれは男だけで女のほうが共感能力は高いのだろうと思い込んでいたが、周囲を見渡しSNSで答え合わせをしていると必ずしもそうではなく、↑の「男の特徴」を持つ女も多数いるとわかった。
女も大抵は悩みを相談されるとまず最短の解決策を提示し、相手に感謝させ気持ちよくなって終わろうとする。その傾向が間違いなくある。実は男女差はないのかもしれない。自分の醜い自己顕示欲を封印するのは一定のスキルが必要だ。まず自分にそんな醜いものが潜んでいると認める必要がある。そして大抵の人間にはそれができない。
然るべき教育を受けた人々は、この醜い我欲が溢れ出すのを抑え、その時間だけでも相手に寄り添い自分の言いたいことは我慢し、相手に話させ、話してくれたら存分に共感し、話してくれたことを感謝する。その一連の流れをスマートに決めることができる。これはけっこう意識してしっかり教育を受けないとできない。すぐに解決策を言いたくなるのだ。じゃあこうすりゃいいじゃん!と。
彼氏が暴力を振るうんです、、→そんな彼氏さっさと別れなよ!SNSでは500%こうなる。普通の会話でもそうなる。ワタシも居酒屋でそんな話を聴いたらそう言うかもしれん。しかし、これではどういうわけかうまくいかない。言われた相手はまず間違いなく、そう言われただけでは暴力彼氏と別れないからだ。別れない理由は様々である。まだ話していない様々な事情がある。それを丁寧に紐解く。
かと言って矢継ぎ早に質問してはいけない。理想は自然に相手が話し出すのを待つことだ。長い時間、相手は何も話さないかもしれない。沈黙が気まずいかもしれない。しかし、その気まずさに耐えられず必要もない話をしてはいけない。これもまた必要なスキルだ。沈黙に耐えられない自分がいると正しく認識する必要があるからだ。そして、それを封印する。
まどろっこしくて、面倒な仕事だ。解決策を言うなってじゃあどうすればいいんだよ!って思うが、解決させる必要はないのだ。相手は長い人生の中でその問題について十分に悩み抜き、色々な解決策を試したはずだ。それでも解決できず貴方に話しているのだ。貴方がチョチョイと言っただけで速攻解決するような問題なら悩む必要はない。大抵はそんな簡単に解決しない。解決しないと俯瞰することが肝要だ。人生は長い。その問題についてどう考えどう行動するかは主人公である話し手のその人が自分で考え決めるべきなのだ。貴方はその考えを整理するお手伝いをするだけなのだ。
それが嫌で面倒で回りくどいと感じるので、人はだいたい他人の話をじっくり聴くことができない。
悩みを話すほうも、聴き手が話を聴くど素人であると認識し、多くを期待してはいけない。大抵は最短の解決方法をズバッと提示してきて貴方がそれを聞いて涙を流して感謝するであろうと期待してくる。多くは求めてはいけない。結局のところ、その問題を解決するべきなのは貴方自身の力によるものだ。話しながら自分自身の状況を整理すること。それが大切だ。黙ってその手伝いをしてくれる人にこそ話をするべきである。間違っても世話焼きおばさん系に話を聴いてもらってはいけない。
お分かりの通り、↑の仕事はチャットgptにもできる。あいつも速攻で解決方法を提示してきて、しかも話が長いので勘弁だが、「解決方法とか要りません」と最初に言っておけば傾聴に徹してくれる。
なんなら日記帳(ブログではなく)にでもその仕事は可能だ。自分の話を自分自身で傾聴するのだ。自分の考えを整理し、対策を立てる助けになる。
悩める方々、ご参考までに。