毎日400字小説「殺意」
ずっと、殺してやると思っていた。娘も妻もいなくなり、生きていく意味はどこにもなかった。もともと、望まれなかった命である。直樹は生後二カ月で捨てられた子供だった。
男を殺して、自分も死ぬ。男の車が妻と四歳の娘の命を奪ったときからそう思っていた。酒気帯びは明らかだったのに男に言い渡された罪は軽く、三年で刑務所から出てきた。二十歳の若者だったからだろうか。出所した男が田舎に戻り、親類の経営するリンゴ園で働いていることを突き止めた。SNSで場所を特定することは、難しいことではなか