「新しい当たり前を創る」を仕事にするということ
今、フリースタンダードで働くことの魅力を語るとすれば、「新しい当たり前を創る仕事」である点に尽きます。
時代を背負うプロダクトを作り上げる面白さと、それを一緒に面白がれる仲間と働ける環境が、フリースタンダードにはある。こう自信を持って言えるようになるまでに創業から4年間で築いてきたこと、そして「新しい当たり前を創る」ことを仕事にするうえで大切にしていきたいことを、整理してみようと思います。
「戻す」から始まる、新しい消費のあり方
私たちフリースタンダードは、『Retailor(リテーラー)』を通じて、あらゆるアイテムが作り手であるブランドの元に戻ることができる環境づくりを目指しています。それは、消費者、そして世の中に数あるブランドに対して、新たな消費のモデルを提案することに他なりません。
現代の日本は、物余りと人口減少という大きな課題に直面しています。1990年と2020年のアパレル業界を比較すると、生産量は234%増加しているのに対し、消費量は116%の増加に留まります。2050年には生産人口が2005年比で42%減少すると予想され、消費者層の縮小は避けられないのです。
これまでの大量生産・大量廃棄を前提とした業界のあり方を見直す動きと連動してサーキュラーエコノミー(循環型消費)という言葉が広く使われるようになってきたものの、多くのブランドやメーカーにとって、オペレーション負荷や人材不足などの懸念から、リユースビジネスに中々一歩を踏み出すことが出来ませんでした。
一方で、社会の変化は加速していきます。フリマアプリやリユースショップといった再販プラットフォームが、二次流通市場をこの10年の間に急拡大させてきたのです。
メルカリの浸透がユーズド品取引の一般化に貢献したのは確かですが、サーキュラーエコノミーの実現という観点で言えば、私は依然として大きな課題がひとつあると考えています。それは、こうした再販プラットフォームと、その収益の源泉である商品を提供するブランドやメーカーとが分断されているということ。つまり、商品を作る側(一次流通)と再販する側(二次流通)の間にある溝によって”サーキュラー”の輪がつながらず、相乗効果が生まれていないということです。
ただ、このセカンダリーマーケットの急激な成長によって、ブランド側の意識も、少しずつ変わりつつあります。メルカリのGMV1兆円のうち、服飾雑貨の取引は4000億円弱。この事実は、アパレル産業における二次流通市場の大きな可能性を示してくれました。そして、これだけの取引金額を生んでいるのは、元をたどればブランドやメーカーから生まれてきた商品たちです。
こうした背景があるからこそ、私たちは、商品の供給元であるブランドと二人三脚で、循環型消費の考え方をしっかりと社会にインストールしていこうとしています。そのためにも、ブランドのパートナーとなってリコマースに挑戦する舞台を整えて提供する「リテーラー」 が価値を発揮すると考えています。
目指すのは、あらゆるアイテムを当たり前にブランドに戻せる世界。
この「戻せる」システムにより、消費者は再販の手間やリスクから解放され、必要なくなった商品を安心してブランドに引き取ってもらえるようになります。「戻す」ことで新たな商品と出会う余白ができたり、その戻した商品が新たなユーザーへと繋がったりしていく。単なる返品システムを提供するのではなく、ファッションの選び方や楽しみ方、そして買い物の仕方そのものを変革する可能性を秘めていると思っています。
ブランドと一緒にやるからこその価値
「こういう取り組みをブランドがやってくれるのを待っていました」
これまでに実践してきたブランドとのリコマース取り組みでは、エンドユーザーである各ブランドのお客様たちから予想をはるかに超える反響をいただいています。中でもブランドスタッフとエンドユーザーとの関係性が深く、上質なコミュニティが形成されているブランドで、その傾向が顕著です。
ブランドがお客様と積み上げてきた関係値の延長にあること。この点こそがブランドリコマースの強みと言えるかもしません。ブランドにユーズド品を持ってくるお客様たちは、単なるお小遣い稼ぎが目的ではありません。大好きなブランドだからこそ、自分たちのアイテムを提供し、この新しい流れに参加したいという思いがあるのをひしひしと感じます。
ある国内ブランドを例に取ると、年間150億円の売上のうち、年間20万円以上購入する「ロイヤルカスタマー」約8000人だけで16億円以上を占めています。単純計算で、10年で160億円以上ということになります。この層のクローゼットに眠るアイテムのうち、例えば10%を再び流通させることができれば、このブランドの年間売上の約10%を、環境負荷を増やすことなく実現できる計算になります。
この試算に現れるように、アパレル業界において環境負荷の軽減やサーキュラーエコノミーを実現していくには、各ブランドが「生産量を減らしながら売上を増加させる」方法が求められますが、ブランドリコマースはまさにそれを体現できる仕組みでもあります。
ブランドにとっても、そのブランドを愛するお客様にとってもポジティブな体験を提供できているというのが、この事業を前に進めていく大きな自信になっています。
フリースタンダードで大切にしていること
リテーラーの事業を創り上げながら思うことのひとつに、「自然体」というキーワードがあります。もう少し掘り下げて言語化するとすれば、本来あるべき姿を追求することで、無理のない持続可能な事業展開が可能になっていて、社会や環境に真の価値をもたらすことができていると実感しています。
新しい「当たり前」を創ることは、今ある当たり前を否定することではありません。
パートナーとなるブランドが大切にしている顧客との関係性やブランディングを尊重し、その上で新しい価値を付加していく。これは、私個人としても、フリースタンダードとしても、大切にしている考え方です。
もちろん、新しい市場を開拓することは決して容易ではありません。まだ誰も手をつけていない未知の領域から始まる挑戦には、手探りで進める部分も多くあります。新しい概念や価値観を浸透させ、顧客や関係者の理解を深めていくのは、一定の時間と忍耐力を要するプロセスです。
インターネットファッションコマースを確立したZOZOも、わずか17ブランドでスタートし、現在ではほぼすべてのブランドを扱う企業へと成長しました。しかし、彼らが上場するまでには10年を要したことも事実です。私たちもいずれ、ブランドリコマースを通じて、ファッション・アパレル業界に大きな変革をもたらしたい。フリースタンダードのメンバーはそれぞれのスキルを最大限に発揮し、この壮大な挑戦に全力で取り組んでいます。
フリースタンダードは今、市場が形成されていく瞬間を、まさにその中心で体感できるフェーズにいます。この貴重な時期に、本気で挑戦したい仲間と一緒に、新しい「当たり前」を一緒に創り上げていきたいと思います。