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勝手に分析:何故プーチン大統領はここまで支持されるのか?

ウクライナ情勢を踏まえ、露のプーチン大統領への注目度がより一層高まった。露国内でも、彼の功績が再認識されようになっており、支持率もうなぎ登り状態。今回はそんなプーチン氏の大統領としての功績を振り返りながら、同氏が支持される理由について再度考えてみたい。勝手な分析につき、情報源へのリンクを貼らずにおく(時間がかかるため)。この点はご容赦頂きたい。では、早速・・・ 

大統領功績ハイライト

まず、プーチン氏が露を率いてきた約17年間の間大きく変わった点をお浚いしよう:

  • 露の国家予算22倍増、軍事予算30倍増、GDPが12倍増(GDP順位で世界36位から一時期6位までジャンプ)。

  • 露の金・通貨の準備資産が48倍増。

  • ソ連崩壊直後に私有化された(天然資源採掘)鉱床の256箇所が再び国有化された(残り3か所)。

  • 石油産業の65%、天然ガス産業の95%が国有化された。

  • 農業が凄まじい発展を遂げ、露が直近5年連続で小麦輸出世界トップ3入りを果たしている。

  • 公務員(注:露では医療を国家が運営するため、医師も原則公務員)の給料は平均18.5倍上昇。

  • 1999年150万人程だった死亡数が2011年の2万1千人まで減少した!

  • チェチェン戦争が停止され(実際に露が単一国家として存続しているのもこのお蔭)、国会議員の国外銀行口座所有は禁止され、シリアも完全崩壊を逃れた。

 当然ながらこれらは思いつきで実施出来る内容ではない。ソ連崩壊後に、実質的に米の支配下に居た露は独自の政策を施行どころか考えることすら許されず、プーチン氏は様々な手を使い数え切れないハードルを突破してきた(当然ながら全てをクリア出来た訳ではない)。 

国民生活水準の向上

次にいくつかの分野を掻い摘んでより詳しくみよう。
まず、エリツィン時代に米との間に締結された商品共有協定(Production Sharing Agreement)の取消が大きかっただのだろう。この協定により、米が露の天然資源に参加でき、特別条件の下で輸出出来ることになっていた。平たく言うと、1990年代は米が露の天然資源をただ同然で国外に持ち出し、好きなように使ったり転売したり出来た。つまり、露の地を吸っていた訳だ。同協定の取消も一瞬して実現された訳ではなく、プーチン氏が4年かけて、修正等を加えたりした結果出来たものだった(経済に限らず、90年代は米が露を裏庭の如く使える様になっていたため、いくらプーチンでも、当時の現状を急には変えられなかった)。

協定の取消を受け、米側はプーチン氏個人を憎む様になった。

似た様なことを実現しようとしていたリビアのカダフィ大佐は、命を失ったのを(今や、カダフィもリビアも消されている状況を)見ると、プーチンの動きも決して安全だったと言えない。

 1990年代の露は、給料や年金が支払われないのは日常茶飯事、電気・暖房・水道が供給されていない自治体は無数に存在していた。当然ながら治安も悪く、庶民は生活水準の向上どころか生きているだけで感謝していた。

今や、給料や年金のタイムリーな支払は当然になり、一般人が好きなもの買え、若い家族は住宅手当を受け、出産手当や母子積み立てを国が負担することになっている(今どきの露人は、50∼60年代の人は出産56日後に職場復帰し、特に金銭的な支援を受けていなかったと想像すらできないだろう)。だいたいの町を見る限り、集合住宅の前は自動車で埋め尽くされ、一般人が海外旅行をするのも通常化している。 

国力強化、外交戦略

元KGB職員のプーチン氏は、策略家としても知られているのは言うまでもない。

あの2007年のミュンヘン演説の頃には、プーチン氏は西側との衝突は避けられないと察していた筈だ。しかし当時の露軍はまだこの様な衝突に耐えられる程の力は無かった。そして、露が西側との衝突に向けて準備していると気づかれると、西側に先手を取られ、対決の前に負けたのだろう。それを分かっていた筈のプーチンは、そのずっと先を考えたのだろう。

一時的に後継者として、メドベージェフ氏を置いたのがその一環だとみて差し支えないのではないか。リベラルで知られるメドベージェフ氏に世間が気を取られ、安心していたそのとき、実は2007年の2月(ミュンヘン演説の直後)にセルジュコフ氏を防衛相に抜擢。一見、防衛相に相応しくない(足りない)経歴を持つセルジュコフ氏を見て、西側は更に安心したのだろう。露には不要な「ミストラル」級強襲揚陸艦の購入も、独の戦車、伊のヘリコプター購入の「検討」も、西側を安心させるための「餌」だったのではないだろうか。防衛そのものを他の面々が着々と進めていた一方で、セルジュコフ氏の役割は、零細企業や税金免除等を通じて、金銭取引を上手に隠すことだった。賄賂塗れの露防衛相は、西側が持つ露の印象ともぴったりで安心していたのだろう。

一方では「盗まれた」筈の国費は、密に進められていた露の再軍備化に費やされていた。今となってみては、露で話題になっていたオリンピック施設の建設に割かれていた予算の横領も、同じく軍事力強化に使われていたのではないかと推察できる。

そしてセルジュコフ氏のもう一つの役割は、露軍の崩壊だ。最新鋭の軍事を気づくのはその後(現在)の防衛相ショイグ氏の役割だった筈だが、その前に古い軍隊(特に高級司令部)を崩壊する必要があったからだ。そしてその役目を果たし終えたセルジュコフ氏は、「横領等の疑いで」見かけ上だけだけど起訴された訳だ。 

特別訓示作戦と経済戦争

露の「悲惨な状況」を見ていた西側は、また騙されたのではないか(流石に出来すぎの気もしないでもないが)。オバマ、バイデン、サキ報道官、サルコジ‥等の人事を見ると、西側の人材不足が深刻化していたことも伺えるが、この事態も露にとって好都合だったのではないだろうか。

そして、特別軍事作戦開始とともに、世界中が想定していなかった程の戦闘力を持つ最新鋭軍隊がお披露目された訳だ。そして、欧州諸国の中でも兵隊人数一位のウクライナ領からイギリス領に相当する部分をたったの3ヶ月で実質的に奪い取ってしまった訳だ。

 また、経済戦争の「プレイ」も見事だと言わざるを得ない。
例えば、エネルギー分野戦略的企業の国外(西側)株主から株を返却され、実質的に国有化を実現した。クリミアの露との統合を受けて価値が急低下していたルーブル、短期間で立場を取り戻した(天然ガスのルーブル購入もやむを得ない反応ではなく、そもそも誘導だったのではないかと)。しかし、その前に、特別軍事作戦開始直後にルーブルのレートがどん底まで落ちるのを待ってから、国外(主に欧米)株主から露国有企業株の買い取りを命じた。これによって、株で200億ドル程儲かったのも然ることながら、露企業の株を国内に戻せた。欧米の株主は露のエネルギー企業から配当金もらえなくなったのも重要なポイントだろう。経済制裁でどちらが被害を被っているかについては以前も触れているのでここでは割愛する。 

終わりに

この様な、なんちゃって分析はどこまで正しいかは分からないが、おおよそこのロジックで考えるとプーチン大統領の支持率が世論調査を行う度に上昇していることと、露国民がより一層纏まっていることに納得できるのではないだろうか。露国民も何処まで理解、分析しているか不明だが、肌で感じている部分はあるのではないだろうか。

 今日はここまで。

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