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軍事侵略≠軍事作戦?

締結来、約8年間ミンスク議定書に拘ってきた露が、とうとうこの議定書の条項をウクライナ(と書いて『西側』、いや『米』と読む)に守らせるころは現実的でないとし、ドネツクおよびルハンスク(露語:ルガンスク)人民共和国の独立を認めるに留まらず、この2か国と友好協力相互支援協定まで締結し、軍事支援も可能にする大義名分を作った。これは急な方向転換であり、ミンスク議定書はこれで実質的に廃止されたのは言うまでもないが、気になるのは西側の反応だ。

 まず、当のウクライナ。大統領が元コメディアンだけあって、やはり面白い。
順不同になるが、まず国連安保理の会合の場で、露に対して該当の2か国独立承認の取消を求めた。パフォーマンスだと分かっていても、ちんけなものだと言わざるを得ない。
それと、露の上述の承認に先立って、ウクライナ領土に配置されている核兵器の排除と新規配置の禁止を定めている1994年の所謂ブダペスト条約の見直し(端的に言うと『脱退』)を示唆。この火に油を注ぐように、独の駐ウクライナ大使がブダペスト条約の核兵器関連条項は任意だと発言。こんな議論をしだすとどうなるかは、簡単に想像できるだろう。
更に、露がドネツクおよびルガンスク人民共和国の独立を承認した翌2月22日、BM-21 GRADミサイルをドネツクに向かって発射し始めた。他にも、OCSEの2月23日付け報告によると、戦車を始めて重兵器のドンバス付近への配備が続いている模様だ。配備だけでなくその兵器を使っており、被害者(死者)も出ている
一方、ウクライナ国営NAFTOGAZの最高経営責任者によると露のGAZPROMが予定通り、2022年も欧州への天然ガスをウクライナ領土経由で運び続けないと、契約違反となり多額の賠償金を払うことになるそうだ。端から見て、いいところ取りにも見えなくないけど、おそらくこれはNAFTOGAZ社長の本音というか、悲鳴なんだろう。ウクライナそのものが露の天然ガスに依存していることはさておき、ウクライナ経由での欧州へのガス運びも大きな商売になっているのも事実であり、これが無くなってしまうと立ち行かなくなるのも目に見えている。

 そしてウクライナを操る米。ここは派手で情報量も多く容易に入手可能なため、重要な部分だけ。
バイデン大統領がNORD STREAM 2稼働に制裁を科すとし、稼働開始への承認を中断(独政府と共同)させるという声明書を出した。他にも制裁を科すと(これで、米が露に制裁を科すのは101回目だと)。だがしかし、この制裁は露にどこまで影響を与えられるものなのか、米国内の疑問の声も絶えない2014年も制裁を科したけが露の進む方向が変わっていないことを踏まえると至極当然な話し。この辺りはさすがに米政府も理解しており、ただ単に現在の酷い経済状況を露のせいにしたいだけだという見方もある(世論を煽るための動きに過ぎないと思っているが)。

 では欧州の方はどうなのか?
結論からいうと、中途半端。エネルギー面で露に大きく依存している欧州だから、仕方ない。EUが制裁を科したところで、独がNORD STREAM 2の承認プロセスを中断させたところで、大打撃を食らうのはガスをスポット価格基準で買うEUの消費者だろう。これだけガスのスポット価格があがると、露は既にNORD STREAM 2の投資を回収出来ているのではないかという見方すらある。仏(財務相)は、露の動きを厳しく評価しながらも、「米大統領が使っている『侵略』という単語が適切ではない」といって取り繕っている姿を見ると、まだ国民思いの政治家もいるものだなと思えてくる。英は若干トーンダウンしている様にも見えるが一応、国連安保理では露を批難する声明を発表した。欧州の他の小国なんかの声を、残念ながら、誰も聞いていないのが実情。

 そうこうしているうちに、原油価格が2014年来の高値を更新しようとしており、露が儲かっているので、欧米の制裁が逆効果となっているのではないかと思えてしまう。

 上記を露が良く理解しており、西側からこれといったレスポンスが無いもしくは帰ってくるレスポンスの影響度が織り込み済みだろうから、2月24日早朝、プーチン大統領がウクライナでの軍事作戦の開始について国民に伝えた。そして西側(具体的にはNATOかな)に対し、関わる前にその結末を考えるようにと注意(脅迫?)までした。そして既に、ウクライナ首都キエフの軍事施設、空港等が攻撃されている。前にも述べた様に、露にとってウクライナを止めるにはガス供給の停止に加え数発のミサイルで重要インフラを停止するだけで十分。なんだかんだ言って共通の歴史をもつ兄弟民族なのだし、この後も共に隣り合って暮らしていかなければならない。それもあって、露防衛相が一般市民を危険にさらさないという声明まで出しているのだと思う。

どっちが正しいかはさておき、一般人が可哀想だから軍事作戦(戦争)がこれ以上拡大せずに速く終わってくれることを祈るばかり。

今日はここまで。

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