いつもと違う営業形態を期間限定で
アルプスの麓。
高原の森の奥に、
吹けば飛ぶような、ちっぽけなカフェを、
妻と二人きりで営んで、8年目になります。
少し変わったお店で、
カフェなのに完全予約制。
席数は僅か8席。
稼ぎどきのランチタイムは営業せず、
道沿いには看板もなく、
流行りのメニューなんかもありません。
静かな時間を愉しむ為のお店と銘打って、
本当に細々と、暮らしています。
さて、この約1ヶ月間私のカフェは店内での飲食(通常のカフェの形態)をお休みし、
焼き菓子と紙コップのドリンクの、持ち帰り販売専門営業を行ってきました。
ウッドデッキに面した掃き出し窓にカウンターを作り、お客様には店内に入らずに持ち帰りの品をご購入いただくシステムです。
毎年1ヶ月間程、このテイクアウトスタイルでの営業を行っています。
なぜこんなことをするのか?
当店は、『静かな時間を愉しむ』というコンセプトで営んでいるので、普段は小さなお子様のご入店をお断りしてしまっているのです。
ありがたいことに、長く通ってくれていたお客様で、めでたくお子様を授かって「もう、しばらくこのお店に来れません」と惜しんでくださる方が何人もおります。
また、当店で提供している焼き菓子を、店内でお召し上がりの後に、お持ち帰りをご希望くださるお客様も多くいてくださいますが、
狭い厨房で全て手作業でご用意しているので、1日に焼ける量に限りがあり、お持ち帰りに対応していないのです。
自分たちが提供しているのは、あくまでこのお店で過ごす時間であり、食品のみの提供をしている訳ではないとの気持ちもあります。
そんなふうに、普段は応えることができないご要望に対して、
お店の基本コンセプトを変えることは決してしないし、自分で作ったルールを変えることもしないけれど、でもたった1ヶ月間でも、例外、特別な機会を作ろうと思ったのです。
この期間だけは、小さなお子様に会えるのが嬉しい。えへへ。
妻は体力的にかなり過酷な1ヶ月間。
営業日は週に3日。
前日に丸一日仕込みをして、当日は朝3時前からひたすら焼き菓子を焼き続け、オープンの10時までになんとか約200個を焼き上げる。
(機械を使わずに、手捏ねにこだわる。オーブンの庫内を広々と使い、“息苦しくないように”焼くのもこだわりらしいので、生産効率は劣悪。笑)
もちろん、僕も袋詰めなど、手伝います。笑
本当におかげさまで、お取り置きの予約受付開始から数時間で、3日間分約600個が完売してくれます。
心から感謝です。
でも、妻は、実はこのテイクアウトスタイルに、自信がない。
前述の通り、自分たちが提供しているのは、あくまでお店で過ごす時間であり、食品のみの提供ではご満足いただけないんじゃないかと、いつも怯えています。
だから、お買い上げいただいた商品に添えるお手紙には、『ほんとうは、店内でゆっくり食べていただく方がおいしいです』との旨が書いてある。
販売を促進する為には、『ご自宅でも美味しくお召し上がりいただけます』と書くべきだけれど。
ものすごく内情を赤裸々に明かすと、
このテイクアウト期間は、平常時より売上がいいのです。
そりゃあ、たった8席を予約制でのんびり営んでいるカフェの売上なんて、簡単に想像がつくと思います。
きゃあ、満席だ〜!なんて喜んでいても、
お一人様1,000円×8席だと、8,000円ですものね。
だから、バタバタ〜っと200個の焼き菓子と飲み物が売れてくださると、それはいつもよりは効率が良い訳です。
でも、1ヶ月しかやらない。
これは、あくまで例外で、特別な時間なんです。
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