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⑥今世ではもう、誰も傷つけたくない。


前回の続きです。




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ジャックの父の話。


ジャックが産まれる前…。


ジャックの父は東の国との戦争中に足を負傷。

そのタイミングで東の国とは休戦のとなり、田舎に越した。



元々ジャックの父の出身地は西の国にとても近く、侵略に怯えると共にあまり治安もよくなかった。



そこには帰らず、どちらかといえば西の国に近いが…

穏やかで自然が美しい田舎の小さい街に縁ができて住処に選んだ。



そこでジャックの母と出会い家族となる。



負傷して足は不自由であったものの、歩くことはできるようになっていた。

元々勉学が好きで、近くの教会で子どもたちに読み書きや勉学を教えていた。



西の国…。現在は協定を結び、何年も何事もなく過ごしている。


西の国は大国であった。



大国である上に、資源も豊富で油断はできない。


交流もほとんどない。


西の国とは言語も違う。


ジャックの父は経験から

自分の息子であるジャックに、西の国の簡単な文章を教えていた。


ジャックの父も父に教えられていたそうだ。


人には言ってはいけないお守りの言葉だと。


「私の名前はジャックです。」

「助けてください。」

「迷子です。」

「知らない」

「分からない」

「これは何ですか。」

「(西の国の)陛下万歳。」


そして、西の国の民謡も。



連れ去られたり、トラブルに巻き込まれた時の為に。




ジャックもはっきりと内容を理解していたわけではないが、

教えられた文章を今でも覚えており発音も良かった。


民謡も歌え、歌詞のフレーズも喋れた。


この国で西の国の言語を理解出来る者はほとんどいない。ほとんどというよりも、いない。


しかし、誰もが抑揚から西の国の言語だということは理解はできる。


それをジャックは発音できた。



また王子の部屋に西の国の装飾のバッジのようなものがある事をジャックは知っていた。

それは何年も前に協定を結んだ際、友好の証として贈られていたものだった。



その存在を知っている者もほとんどいない。


それを借りる。




そして、ジャックは名家の出身ではない。

家を調べた所で何も出ない。





という事を踏まえて、


ジャックはある案を提案する事にする。




王子の弟(エリオット)の東の国との交流を暴く。

(現段階でジャック達の国と東の国との交流は認められていない。)



王子の弟(エリオット)の荷物を検査すると共に、

確たる証拠が出ない時はそのまま王子の弟(エリオット)の屋敷に侵入する。


ジャックはあまり表に出ないので顔を覚えられている可能性が低い。



万が一バレた時。



○ジャックが王子付きと気付かれないままバレた場合→そのまま逃げるなり、何とかする。


○ジャックが王子付きとバレた場合→逃げることは諦める。

(王子が指示したとなる事は避けなければならない。王子が指示し、東の国との証拠をでっち上げられたと言われては分が悪くなる。)

逃げるふりはするがあえて捕まり、西の国から贈られた装飾のバッジのようなものを見せ、西の国の言語を話し(話すのではなく、知ってる定型文を話し話せる風を装う)自分は西の国のスパイと名乗る。

王の死の混乱を機に、西の国のが協定を破り攻めるつもりだと。

なぜなら最終的には東の国の豊かな土地をも奪いたいからと。





一か八かであるが、やらないともう勝算は無かった。



王子を王にしないと、


国の存亡が危ぶむ。


王妃の出身国の南の国、王子の弟(エリオット)が密かに交流している東の国。


そして…沈黙の西の国。



王子はずっと民を豊かにしたがっていた。

そのずっと話は聞いていた。



普段はほとんど喋らない王子。


しかし、酒の席で酔い始めるとすぐ国の行く末の話になる。


どうありたいか。

何を発展させたいのか。

どんな人を育てたいのか。


人が国だと。


人がいるから、


我々がいる。



父上…先代の王がそう言っていたと。





戦争体験者がいるから、民は心からの“平穏”を望んでいる。


国を守ろうとして肢体が不自由になっている人にも王子は敬意を持っていた。



そんな王子を心から尊敬していた。


そして、酒の入った時にしか笑えない…そんな王子の笑顔を守りたいと思っていた。




この人を、命をかけて守る。


19歳で初めて王子と酒を飲んだ日に決めていた。





だから。


今だ。


自分の持ってるもので命をかける時だ。



“俺にしかできない。”






しかし…。



その願いはレオンさんに却下される。



「それはダメだ。


勝手な事は許さない。」





…続く。

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