今世ではもう、誰も傷つけたくない。
《前世のお話です》
最初に降り立ったのは、石畳の牢獄。
牢獄の中には自分しかいない。
外には甲冑を着た兵士。
後ろ手で縛られたまま、横に転がっている状態。
片足には鎖。
寒さは感じなかったが、体が寒いと震えていた。
頭は重く、思考はうまく働かず…
そして、
全身が痛い…痛い感覚と共に、一部麻痺していた。
そして、呼吸がうまく出来なかった。
浅い呼吸を繰り返す中で考えてる事。
それは…、
『自分は一人じゃない。』
そう言い聞かせ、
折れそうになる心を必死で繋ぎ止めていた。
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名前はジャック。
冬は山に雪が積もり、夏は花が咲き乱れ…とても自然の美しい田舎で産まれた。
王が国を統治し、数年前まで近隣の国と戦争をしていたが、今は平穏均衡を保っている。
家には犬がいて、暖炉があって。
優しい父と母。
父は国に仕えていたが、戦争での怪我がたたって体調を壊し、田舎に越してきて母と出会ったそうだ。
5歳の頃、
母親のお腹には赤ちゃんがいて、ジャックはお兄ちゃんになるのをとても楽しみにしていた。
弟がいいなと密かに思っていた。
父も母も優しかった。
父は畑をしたり、子供たちに勉学も教えていた。
10歳になった時。
城の兵の募集があった。
城で勉学も学びながらゆくゆくは国を守る兵にという話であった。
ジャックは行きたいと思った。
父も城にいたので憧れがあった。
父は城の事をあまり話さなかったけれど、周りの大人や子供たちに勇敢な城の兵の話を何度も聞いていた。
その募集には試験があった。
合格すれば…という話であったが、幼い頃から父に読み書きは教えてもらっていたし、健康であったので容易に合格する事はできた。
ジャックは一人でこの家から出てお城に入る。
父も母も反対はしたが、ジャックの熱量に負けた。
家族とのお別れの日、
妹が大泣きして離れなかった。
弟がいいなと思っていたが、やんちゃな弟みたいな妹だった。
家族とさよならして、
ジャックは一人…誰も知り合いのない城へ。
期待で高揚した気分と共に、少しの不安を持ちながら…。
そして、ここから沢山の人に出会って…。
また、今世に繋がる出会いもあります。
“ご縁”とは何なのか。
お話の続きはまた次回…。