「おおっー、これこれ!」自宅で手軽に食べられる極細ストレート麺に感動
パンデミックという未曾有の状態。多くの店舗が休業し、外出先では隣の席に座るだけでも怪訝な顔をされたあの頃。2020年の初夏にこの味に出会った。
※本記事は、宣伝会議 第43期編集・ライター養成講座の課題で作成したものです。
九州ラーメンのパリッとした食感を見事に再現
外食に出かけることもできず、自炊する生活が定着した。ある日、スーパーのレジに並んでいると、特売されている即席ラーメンを発見。
「明星食品 チャルメラ バリカタ麺豚骨」5食入りで300円ほどだったか。
昔から九州ラーメンが大好きで、東京近郊のお店を探しては食べ歩きをしていた。六本木に福岡の名店「一蘭」ができたときは、何度も通った。川崎駅の近くにある「暖暮」もお気に入りだった。
即席袋麺や冷凍麺も以前に比べれば格段に美味しいものが増えたが、九州ラーメンの極細麺を再現した即席袋麺には未だ巡り会えていなかった。博多の名店が販売する即席麺や、棒状の乾麺はあるものの、お店で食べる麺よりやや太く、食感も違う。求めている極細麺ではなかった。
「やはり乾麺で、本格的な生麺のような食感を再現するのは難しいのかな」そう思って諦めていた。
たまたま見つけて、あまり期待はせずに買ったこの麺。まさに感動!よくぞこの麺を作ってくれました!
極細・バリカタで小麦の風味が感じられる麺は、まさに九州のラーメン屋さんと同じ。即席麺でありがちな、ぶにょぶにょした感触はなく、パリッとした食感だ。
麺はノンフライでサラッと食べられる。内包されているは、粉末スープと秘伝の調味油。癖のない豚骨スープで、本格的な九州のとんこつスープよりはあっさりしており、塩味も控えめの印象だ。
アレンジ&トッピングで完成度がアップ
一度試しに食した後、好みであるハリガネ(バリカタより硬い茹で方)に近い麺の硬さと濃厚なスープに仕上げるため、アレンジを加えた。
説明書きには麺の茹で時間は90秒とあるが、あえて60秒に。
こってりで塩気が強い味にするために、スープを溶かすお湯を少なめにする。「一蘭」でお馴染みである唐辛子ベースの「赤い秘伝のたれ」の代わりに、豆板醤を加えた。栄養価と彩りを考え、刻んだ小ねぎと、お湯に割り入れて茹でた卵をトッピング。
ラーメン屋さんのサイドメニューのように、小ライスと辛子高菜を付け合わせる。いよいよ実食タイム。
「おおっー、これこれ!」
完璧だ。自宅でこれほど完成度の高い九州ラーメンが食べられる日が来るとは、想像もしなかった。
予想外の驚きに出会った「感動」
人が「感動」するときには、いくつかの種類があるように思う。
壮観な景色に対峙したときに起こる、全身が震えるような「感動」、壮絶な人生や奇跡的な体験を描いた物語に触れたとき、心が動かされる「感動」、想像を超える美味しい食事に際会したときの「感動」、予想外の驚きを目の当たりにしたときに、湧き起こる「感動」。
この極細麺は、予想外の驚きに出会った感動だ。「家庭でこの味や食感を再現するのは無理だろう」という諦めが、いい意味で裏切られた。
以後、大量に買い貯めし、定期的に食すようになった。外食に飢えていた時期にこの味に遭遇したことで、自炊生活に彩りが添えられた。
「技術の進歩って本当に凄い」そう思い知らされた体験だった。
(了)