うさぎ
くさくさしてるときにおもろいもの読んだり聞いたり見たりして思わず吹き出したりなんかすると、憂さがうさぎになってぴょんと飛び出してどこぞへ跳ねながら逃げていくんですね。
なんとなく不法投棄するみたいで放っておけなくて追っかけるんですけどね、これが必ず穴の中に逃げ込むんです。こんなところにテイよく穴なんてあったかなんてその都度思うんですけど、これが覗き込むと大人ひとり屈めばどうにか入れそうな大きさで、ははんとなりましてね、もうそれ以上わたくしも深追いしないわけです。わたくしももういい大人ですから。スーツも皺になるし汚れちゃうしするから。
それでくるり踵を返して帰ろうとしますと背中に熱視線を感じまして、ああ、こっちを憂さぎが見てる見てるとなるんですけど、けっして振り返ってはやらぬわけなんです。そういうの、いらないからって。
ところがこの頃では憂さ妓は家の庭に現れまして、朝ぼらけに寝ぼけまなこをこすりながら庭の異変を確かめようとガラス戸に鼻先近づけたわたくしに、右手に広げたトランプの束を扇にしておいでおいでの合図を送ってよこす。よくよく見れば憂さ妓の足元にぽっかり穴があいている。人を呪わば穴二つ、をどうやらわたくしも遅ればせながらに思い出したもので、冗談じゃないと父祖伝来の散弾銃に弾込めまして庭に躍り出ましたら、あいにく足元にあいた穴に気づかなくって、奈落の底へと落ちていった。
というわけで、只今絶賛落下中なんでございます。落下中のわたくしを見舞いに憂砂戯がのこのこやって参りまして、ババ抜きやろうなんて申しますもんで、それではと相手になったはいいものの、全然決着がつかない。どうやらハンパなトランプで、何枚か抜けてる上に肝心のババがないようなんですな。とうからわたくしは気がついておりますのに、憂鷺は鼻膨らませふんふん言いながら真剣に挑んでおりまして、その姿たるやほんとうに滑稽で笑ってまうレベル。
いやはやこのたびは憂さは溜まり放題、年末あたりにどでかいのを放ってやりたいものです。マシュマロマンみたいな🐇をね。
それではまた。