「白バイを抜け!」 大八木弘明の名セリフはカメラマンをも奮い立たせる ~2022出雲→2023全日本プレイバック~
駒澤大学陸上競技部総監督の大八木弘明さんには数々のエピソードがあり、どれも愛情のこもった名セリフがありますね。
その中のひとつ「白バイを抜け!」は、箱根駅伝で飛び出したセリフ。
思い描いた通りのペースを刻めない選手に向かって、運営管理車から選手の背中越しに放たれた言葉だったと記憶しています。
この言葉、動くものを被写体としている私にとっては「白バイの後ろにいるランナーにピントを合わせろ!」に聞こえる訳です。
2年連続三冠を目指す駒大。
第99回箱根駅伝4区から他校の背中を見ていない。
その姿を写真で表すのに必要なアイテムは「第一中継車」「白バイ」「監察車」「運営管理車」「バイクカメラ」などトップランナーを取り巻く車両たち。
この車両たちを脇役に見せる撮り方をすればいいだけのこと。言うのは簡単だけど、実現するにはなかなかハードルが高い。
そのハードルを越えるべく、チャレンジし続けているのが
「白バイを抜け!」
「アスリートが最高のパフォーマンスを発揮しているから、カメラマンも最高の感性で撮らなきゃ失礼」が自分の撮影スタンス。
いちヒヨッコカメラマンが学生トップアスリートたちをどう写しているのか、見ていただけるとうれしいです。
今回も伏線をたくさん仕込んでありますので、回収しながら見ていただけると嬉しいです。前回はこちら
🆖写真の転載はご遠慮ください🆖
「白バイを抜け!」にこだわる理由
マラソンや駅伝など、一般道を使って行われるロードレースの車列を確認してみます。
各大会の競技実施要項に、車列が明記されています。
先頭ランナーの前は、「中継車」「カメラ車」「白バイ2台」が走行していますね。
ランナーの表情を真正面から捉えるためには、白バイと白バイの間から撮影することが必要になってきますね。
ところがカメラにピント合わせを任せると、ランナーの前にいる白バイにピントがあってしまいます。
したがって先頭ランナーを真正面から撮影するためには、白バイにピントが合わないように手動でのピント合わせ操作が必要になります。この操作を「白バイを抜く」と言っています。
大八木さんが選手に「白バイを抜け!」と言ったのは、「白バイを追い抜け」
その言葉を沿道でランナーを撮影する自分が聞くと「白バイと白バイの間を抜け」になるということ。
同じ言葉でも受ける側の取り方で、全く違う意味になるわけです。
SNS上には、ファンが撮影したロードレースの写真が沢山上がっていますが、先頭ランナーの正面がちな写真が少ないのは、車列が通り過ぎるのを待ったからです。
2年連続三冠に向けて、ひとつひとつ実績を積み上げチーム力のブラッシュアップを図っている駒大。
駒大を撮る自分もブラッシュアップしていかないと失礼と感じ続けています。
沿道からの撮影で「白バイを抜く」カットを撮るファンは少ない。ならば自分が挑戦しよう!という訳です。
第34回 出雲駅伝 (2022.10.10)
強烈な右横風に髪をなびかせながらやってきた田澤さん。
白バイのミラー根元部分にうっすらと映るのは、2位中野翔太さん(中大)、3位近藤幸太郎さん(青山学院大)
田澤さんがレースを支配しているなって感じました。
白バイを抜くのに加えて、駒大のゲートフラッグを写したくてこの構図。
同級生のご家族さんの応援は、本人に届いたのだろうか?
第54回 全日本大学駅伝(2022.11.6)
500㎜レンズで白バイを抜きました。
安原さんの視線にパッと目が行ったんじゃないでしょうか?
足元が切れたこと、テレビカメラが安原さんに向いているのが功を奏しました。
このポイント、長い直線が続きます。右端のボケは沿道の観客。
道路にはみ出る観客が多く、ランナーとの接触が起こるのではと毎年ヒヤヒヤしています。
(第55回大会は、残念ながら道路上にはみ出したファンの背中が被って、超望遠は失敗しています。)
上りの左カーブから下りの右カーブに差し掛かる頂上付近。
右側の赤が白バイのパトランプです。
コース取りが見事で、最短距離で駆け抜けていきました。
マジで拍手喝采です。
第99回 箱根駅伝 (2023.1.2~1.3)
連続カーブを上り、いよいよへアピンに差し掛かる直前で給水。
ランナーは最短距離を駆け上がってくるけれど、白バイはセンターラインにそって左右にぶれるので、なかなかにしんどかったです。
本投稿のトップ画像の2秒後。
白バイ隊員の視線はミラーにありますから、山野さんの走りを確認しているのでしょう。
トップ画像には大八木監督(当時)の姿もあります。
ガードパイプの隙間からモニター視認でのレンズワークとシャッター押下。
白バイとガードパイプの僅かな画角に収まっていたのは、同級生マネージャーとのコミュニケーション。
白バイのパトランプが複数のLEDライトになっていて、車両の進化も実感。
BMWの電動スクーター「BMW C evolution」とのこと。
第35回 出雲駅伝 (2023.10.9)
出雲駅伝では斐伊川を2度渡ります。2区の神立橋と3区の西代橋。
2区も3区も橋上に中間点があるんですね。
弓なりになった西代橋の頂点付近からゆるゆると下ってくる様。
前には誰もいない。
「視線の行く先」
ライダーはランナーに、ランナーは先輩に
タイムを取っていた先輩がいました。ここから一気に右カーブで駆け下ります。
山川さん、縁石側を走りがちなんだろうか?コース取りでもっとタイムが縮められるはず。
地元出身の伊藤さんを大応援団と一緒に撮りました。腕の間から覗く白バイを目視しながらピントを合わせ続けた渾身の1枚。(自分基準)
第55回 全日本大学駅伝 (2023.11.5)
右カーブを利用して、正面から撮れる場所に陣取りました。
白バイとバイクカメラの間からチラッと見えた力強い視線。
去年と同じ場所で、同じランナーで。
もっと奥の位置めがけて500mmで撮りたかったですが、おじいちゃんとカメラ女子が道路上に座り込んじゃって、近づいてからの抜きカット。
距離がちかい分、白バイと観察車をボカしきれなかったのは技術不足。
痛恨の1枚になってしまいました。
(安原さんはほぼほぼセンターラインよりを走るので、はみ出しファンの影響は無かったと思います。)
松阪牛有名店「まるよし」の看板と交通整理員(赤ジャンバー)の対応に悩みました。白バイの前のボンヤリ緑は、生い茂った雑草。
こんなボケ具合で白バイを撮るのが目標でしたが、ほぼほぼ6区安原さんと同じ結果。リベンジしたい。
第100回 箱根駅伝に向けて
いかがでしたでしょうか?
写真から駒大の圧倒的強さが少しでも感じられたのなら、嬉しいし。
「いや、伝わらないよ!」と思われたら、教えて欲しいし。
この文を書いているのは11/12。
箱根まであと1か月半。
アスリートたちに「撮られて良かった!」 と言ってもらえるよう、知力、体力、運と感性に磨きをかけていきたい。
引き続き、叱咤激励よろしくお願いいたします。