川島 良彰『コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか』を読みました。
川島 良彰『コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか』(2015、ポプラ新書)を読みました。
これは掘り出し物でした。
「コーヒーハンター」による半生記・ビジネスエッセイで、NHKの「プロフェッショナル」のような内容・クォリティです。
安っぽい書名をつけられてしまった点のみが残念です。
この手の書名に対しては「書名に対応する内容が本文にほとんどなく、スカスカだ」という突っ込みを入れざるを得ないことが多いです。
本書の場合も、書名の内容を直接扱った部分は多くありません。
しかし、本書の場合は「非常に充実した内容なのに、書名がそれに見合っておらずスカスカだ」というのが私の心証です。
ある意味、コメダ珈琲のフードメニューのような「逆詐欺」的な書名です。
印象深いエピソードが山盛りですが、その中から2点だけ紹介します。
ブルーマウンテンが日本市場でたどった悲劇
ブルーマウンテン神話が生きていた頃、日本人バイヤーは頻繁にジャマイカを訪問し競って購入していた。
そうした中、一部の欲深い生産者が低級品との抱き合わせ販売を行ったり、手付金を受け取っておきながらコーヒー豆の引き渡し不履行をおこなったり、計画倒産してしまったりすることもあった。
しかし、2008年のリーマンショックで経済が冷え込むと日本人バイヤーはジャマイカから姿を消した。
日本での需要が大幅に減少してしまったため、ジャマイカの精選・輸出業者は農家からの買い上げ量を減らし、取引価格は下がった。そして小農家のコーヒー離れがすすんだ。
一方で、日本の輸入商社・焙煎会社は倉庫に山積みされたブルーマウンテンの在庫を売り切ろうと躍起になっていた。
そして、温度も湿度も管理されていない倉庫で劣化したブルーマウンテンが高い価格のまま、平然と販売され続けた。
その結果、愛好家のブルーマウンテン離れが起こった。
また、新しく参入した自家焙煎の人たちからは、ブルーマウンテンは最初からたいしたコーヒーではなく、ただの神話だとまで言われるようになった。
ブランドに胡坐をかいていたジャマイカの一部の生産者と、品質は二の次で金儲けに狂騒した日本のコーヒー会社がブルーマウンテン・コーヒーの神話を崩壊させてしまったのだ。
(p149-)
サードウェーブが日本でもてはやされることの不思議さ
「ブルーボトルコーヒー」に代表されるサードウェーブが日本で注目を浴びているというニュースを耳にすると、米国の関係者は怪訝な顔をするという。
なぜなら、日本人がハンドドリップやサイフォンで一杯ずつ丁寧に抽出する様子に衝撃を受けた米国人が自国にその技術を持ち帰ったものがサードウェーブだからだ。
(p3-)