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社員が誇りを持てる会社に!経営層〜現場まで膝を突き合せてビジョンを描いた話

効果が良くない方の施策に投資する…?


今回のA社は主に広告集客をメインに営業活動をされていました。

まず最初に、広告の効果状況を確認していきました。
A社では様々な広告をされていましたが、メインの媒体は2つで、
ポータルサイトBHPでした。

ポータルBとHPを比較すると、問い合わせ単価ポータルBの方が2倍高くなっていたのですが
受注単価はポータルBの方が1/3で獲得できていることが分かりました。

要するにポータルBの方が問い合わせは少ないですが、質が高く受注まで結びつきやすい、という状況です。

一般的なセオリーで言うと、広告費用を変えないのであれば
HPの広告費を削減し、受注単価の安いポータルBに追加で投資することが定石です。

A社は4店舗あり、広告費は店長決裁のため4店舗全てに広告費の内訳を変えませんか?と提案します。

しかし、全店舗で却下されました。

「ポータルBは問い合わせ単価が高いからねぇ」
「HP問い合わせ数は多いから削減できないんです」
「HPで売上を作ることは社長の意向なので」

このような反発でした。

A社としてもデータは集計しているので、ポータルBの効果が良いことは分かっているはず。
なぜ効果の良くないHP集客に拘るのだろうか…理解できないまま約3ヶ月が経過しました。

そんな時、A社の2代目社長であるD社長と会うことができました。

D社長からはこんな発言がありました。

「社員にはA社で働くことを誇りに感じて欲しいんです。」
「スポーツのスポンサーとか、街中を走るバスのラッピング広告を検討しているんだよ。」

私は「企業広告を出せば、本当に社員はA社を誇りに感じるのだろうか?」と思いました。

それと同時に
「企業広告で何を打ち出すのだろう…?」と疑問に感じました。

その場で聞いてみます。
「御社が企業広告で打ち出したい強みってなんですか?」

D社長はしばらく沈黙し、低い声色で
「何なんだろうね…?」
と呟くように答えられました。

自分たちの強みを理解できていない状況でした。

私もA社ならではの強みを理解できていない状況でしたが
これが言語化できることが、A社の成長に繋がると感じました。

とりあえずD社長に1週間後、もう1回アポイントのお時間をいただくようお願いしました。

「社員が誇りを持つ」


人材会社を経営する知人に知見を借りながら、次回アポイントに向けて準備します。

まず、自分が在籍する会社に誇りを持つ状態とは?を定義しなおします。

それは、自社の強みを理解しビジョンに共感している状態
いわゆるインナーブランディングできている状態です。

A社に求められることは、自社の強みを言語化し、ビジョンを作成し
社内外に向けてメッセージすること
でした。

1週間後のD社長とのアポイントでこのことをお伝えします。
D社長は納得いただきPJ化する事で合意。

「人員はいくらでも使っていいよ」と仰っていただきました。

A社内のPJ体制を組織します。

営業部のみならずマーケティング部や経営企画室などからも人選も行います。
また、マネージャー層だけで作成しては将来的に全社的に浸透しづらいと考え
現場で活躍しているプレイヤーの営業も数名アサインしていただきました。

会社の魅力とは?


A社の社員、A社のお客様にインタビューを行っていただきました。

【社員インタビュー】
「仕事を楽しんでいる」「内勤も営業も仲が良い」など…

【お客様インタビュー】
「親近感があってストレスなく検討できた」「楽しみながら商品選定できた」

また、創業者社長である前社長のM様にもインタビューの機会を頂きました。
「自分が営業時代、問い合わせがなく本当に苦労した。そんな会社にしたくない。」
「広告で問い合わせを獲得し営業にバトンタッチすることは経営者の仕事だと思ってやってきた。」

一方で現社長のD社長。
「HPの立ち上げ責任者は自分だった。
 今のA社があるのはHP集客にシフトし問い合わせを獲得し続けることができたから。」

お二人の話を聞いて、ようやく冒頭の広告費の会話が腑に落ちました

歴史を辿ると、先にHPで集客を始め、その7年後にポータルBで集客を開始されていました。
HP集客がA社の原点であり、問い合わせ対応という機会を営業にあげたい、という思想でした。

この経営者の思想を理解できれば、広告について目線が合った状態で会話できると思いました。

「ポータルBに投資すること自体がNGというわけではありませんよね?」
とお聞きすると

「もちろんです。問い合わせも大事だけど売上も作らないといけないですから」と店長の方々の反応。

要は問い合わせ数も売上金額も、両輪を回していきたいということでした。

「HP集客の予算を削減しにくる奴」から「一緒に目標達成を目指す奴」に
私の立ち位置が変わった瞬間でした。

少し話が逸れてしまいましたが、再び強みの言語化についてテーマを戻します。
インタビューを重ねた結果見えてきたA社の強みは
お客様と友達のような距離感で購入体験を提供できること、でした。

強みを武器に、会社のビジョンを描く


インタビューした内容や抽出した強みをもとにビジョンを作成します。

複数案考え、その中でA社によりマッチしそうな案をひとつ提示することにしました。

当日、作成した複数案をお持ちすると同時に、その中でこれが良いと思います、という自分の意見も含めた上で提案します。

「○○(A社商材の購入体験)をもっと楽しくする」

D社長の反応は…

「悪くはないんだけど

  …しっくりこない。強み"は"分かるんだけどな…」

イマイチでした。

しかしビジョンは納得していただかなければ意味がありません。
持ち帰ります。

改めて振り返ると、このビジョンには強みは組み込まれていますが
今後どうなりたいか?が盛り込まれていませんでした。

もともとの強みと、目指したい姿を取り入れてビジョン案を複数作り
再度機会を頂き提案します。

D社長は一通り案に目を通していただいた後、長く迷うことなく決断いただきました。

「○○(A社の商材の購入体験)から、お客様の明日に寄り添う」

これに決まりました。

決め手は「明日に」という将来を連想するキーワードを含めながら
「寄り添う」というA社の強みであるお客様との距離感の近さを取り入れたことでした。

このビジョンを会社のロゴやパンフレットに組み込んでいただくなど
より社員に浸透するように施策を遂行中です。

なかなかこの取り組みによって定量的な結果は計測しづらいですが

「社員から意見が出やすくなったような気がします。」
「自分の仕事の価値を再認識できるようになりました。」

など、嬉しいお声をいただくことができました。

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