水戸芸術館「佐藤雅晴 尾行-存在の不在/不在の存在」展(2)
何度も訪れた水戸芸術館の「佐藤雅晴展」が、まもなく閉幕する。
震災後に福島県の工場を取材して描いた「ダテマキ」、最後の勇気を振り絞って描いた「死神先生」が印象的だった。
「ダテマキ」
佐藤さんは2010年に癌が見つかり手術、快方に向かった2011年に東日本大震災。
行けなかった被災地に行きたいと、2013年にいわき市の丸又蒲鉾を取材し、伊達巻を作る8行程中7行程をトレースした。ベルトコンベアでの流れ作業を、水戸芸術館では第6室に一直線に並べて展示している。
最後の1行程を描かず伊達巻が仕上がらないせいか、何度もループして見てしまう。
人物は、映像の中に全く映っていない。が、震災の津波で工場も社屋も従業員も失い、そこから再建を遂げた人々が、映ってはいないが確かに存在する。
「死神先生」
2019年、KEN NAKAHASHIでの個展「死神先生」のステイトメント。
死神先生からの余命宣告は罠です。
彼が言ったタイムリミットを信じて、ただ死に向かって時を過ごすのは自殺行為です。
3ヶ月という時間をどう過ごすかは、ぼくの自由です。
抗癌治療の効果が全くなく、緩和ケアに移行した。
最後の作品は、第9室に10点(時計1点を含む)。パソコンではなく、養生テープを用いて、アクリル絵の具で描かれた。
水戸芸術館の「佐藤雅晴展」の会期は、2022年1月30日(日)まで。
まん延防止措置などで会期や開館時間が変更になる可能性もあるので、随時公式ホームページでご確認ください。
水戸や大分、KEN NAKAHASHIで作品をご覧になった方、感想等をコメント欄にお寄せください。