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<なつみの本紹介>#3 夏美のホタル/森沢明夫

あらすじ

 写真家を夢見る美大生の相羽慎吾は、保育園の先生である彼女の河合夏美と、小さな商店に入る。そこである親子に出会い、この4人を中心に、大きな花火の如く、ひと夏に花が咲く。読んだら田舎に行きたくなる、心温まる作品です。

感想

 今回は感想というよりも、僕とこの本の出会い、森沢明夫先生との出会いについて、書かせていただきます。
 僕がこの本と出会ったのは、中学3年の春、今から5年前です。たしかコナンの映画だったと思いますが、始まる前の映画予告で、夏美のホタルが流れました。自然、いのち、という言葉を見て、僕にぴったりの作品だと直感しました。さらに、公開日が、6月11日。運命だと思いました。なぜなら6月11日は、僕の祖母の命日だったからです。
 中学2年の6月11日に、僕は祖母を亡くしました。膵臓がんでした。がんと聞いた時はショックでしたが、今になって思うと、時間をかけてじっくりとさよならの準備ができたのは本当によかったと感じます。最後の時間を噛み締めながら、密度の濃い半年を過ごせたと思います。この時に、僕は初めて、大切な人の死を経験しました。亡くなった時は本当に辛かったけど、後悔はないです。できることは全部できました。
 という話があり、夏美のホタルのことが頭の片隅に残りました。だいたい映画の広告なんてものは、映画が始まって、終わったら、忘れているものです。だから僕も映画が終わったあとは、夏美のホタルのことは忘れていました。が、その数日後に本屋で、森沢明夫作の夏美のホタルを見つけました。僕は迷わず買って、学校の読書の時間で、少しずつ読みました。その時のことはよく覚えていて、窓際の1番後ろの主人公席に座っていました。
 僕は初めて、小説で泣きました。いろんなことが自分と重なり合って、衝撃を受けました。今までの人生で読んだ本の中で、1番好きな本でした。中学生でそんなことを言って、まだ全然たくさんの本を読んでないだろと思うかもしれませんが、夏美のホタルよりいい作品に出会える気が全くしません。たぶん僕が死ぬまで、それは変わらないと思います。毎年、6月11日にこの本を読んで、最期に祖母が書いてくれた手紙を読んでいます。もう6回読みましたが、何回でも読みたい本です。

 これが、僕と夏美のホタルの出会いです。これをきっかけに森沢明夫先生の他の本を読むようになり、森沢ワールドにどっぷりとハマってしまいました。もう一生抜け出せないです。笑
間違いなく、森沢先生の作品は、僕の人生の考え方を変えました。変えたというよりは、人生の土台を作ってくれたという方が正しいかもしれません。あとは、下の記事を読んでください。森沢先生のことが書いてあります。

グッとワード

 人間ってのは、何かと何かを比べたときに、いつも錯覚を起こすんだって。だから、自分と他人をあまりくらべない方がいいって。他人と比べちゃうとさ、自分に足りないものばかりに目がいっちゃって、満ち足りているもののことを忘れちゃうんだってさ。

 これは地蔵さんの言葉です。
 人は生きていると、必ずと言っていいほど他人と比べ、競争します。それがいいことなのか、悪いことなのか、僕にはわかりません。ただ、一つ言えるのは、他人を見る前に、自分を見ればいいのになということです。まずは、自分が満ち足りてるのかを探すべきだと思います。
 先日、知人に「今、幸せ?」と聞かれました。僕は迷わず、「幸せ」と答えました。僕は、生きてるだけで幸せだと思っています。毎日、目にうつる景色全てにわくわくしながら生きています。自分で言うのもなんですが、こういう考え方って素敵だなと思います。笑

 そもそも、完璧な正解など無いのかもしれない。人はきっと、その人生におけるすべての分岐点において、少しでも良さそうな選択肢を選び続けていくしかないのだ。そして、それだけが唯一の誠実な生き方なのではないだろうか。

 「正解を選ぶのではなく、選んだ道を正解にする努力をする」という言葉を大事にしています。上の言葉も、これと似たところがあると思い、紹介させていただきました。
 この世に、正解はないのです。選んだ道を正解にする努力をし続けることが、人間の使命、いや、人間の生きる意味なんだと思います。


2021/6/11 読了

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