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【フォレスト出版チャンネル#213】ゲスト/漢方|江戸時代の超ベストセラーがリバイバル

このnoteは2021年9月7日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

漢方スクールに通うなかで生まれた企画

今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティーを務める今井佐和です。今日と、明日は「人生100年時代を体からアプローチする 300年のベストセラー健康本 養生訓の知恵」をテーマにお届けしたいと思います。そこで本日はスペシャルゲストをお呼びしています。 『わがまま養生訓』の著者の鈴木養平さんと編集者の水原さんです。どうぞよろしくお願いいたします。

鈴木・水原:よろしくお願いします。

今井:鈴木養平さんは薬剤師であり、薬日本堂漢方スクールの講師でいらっしゃいます。そして、日本漢方養生学協会・理事長でいらっしゃいます。東北医科薬科大学を卒業後、薬日本堂株式会社に入社。以来、漢方専門相談員として店舗運営、臨床を経験した後、社員教育や広報、販促、そして調剤などに携わっておられます。「漢方養生生活をより身近に」という理念を掲げ、漢方スクールの講師として、セミナーや講演活動する一方で、雑誌や本の監修、また皆さんもお飲みになったことがあるかもしれませんが、日本コカ・コーラ社の「からだ巡茶」の商品の開発協力などで、ご活躍されていらっしゃいます。また、漢方養生指導師を育成して、漢方養生を広めて浸透させていく活動もなさっています。そんな鈴木さんのご本をつくられた編集者の水原さんにまずお伺いしたいんですけれども、こちらの著書、『わがまま養生訓』が生まれるきっかけは何だったんですか?

水原:はい。私は自然療法の専門誌で取材・執筆を長くやっていたんですけれども、鈴木先生がいらっしゃる薬日本堂さんにも何度か取材する機会があったんですね。ただ私自身、自然療法の取材をしているにも関わらず、30代から40代の前半までは、自分の健康にかなり無頓着だったんです。しかし、40代後半になると慢性疲労と老化が深刻化し始めて、このままではいけないと真剣に考えるようになりました。そこで思い出したのが取材でお世話になった薬日本堂さんなんですね。ちょうど仕事でも専門的な知識が必要になって、薬日本堂漢方スクールで学ぶことにしたんですね。

今井:生徒さんとして実際に学ばれたっていうことですか?

水原:そうなんです。ちゃんと資格をいただくまで、試験を受けて勉強しました。で、その時に講師だったのが、鈴木先生なんですね。漢方や養生というと、一見地味なジャンルに見えるんですけれども、非常にエキサイティングな講義ですっかりハマってしまったんですね。そこで先生が時々触れていらっしゃったのが、江戸時代に書かれた『養生訓』だったんです。古色蒼然とした古い本という印象だったんですが、鈴木先生によって何か生き生きとした知恵に感じられたんですね。そして講義で勧められていた『養生訓』の解説本を購入したんですが、ちょっと難しいと。それでいつか、鈴木先生を著者に立てて『養生訓』の本をつくったら面白いんじゃないかなと企画を温めていた数年後、機会を得て今年書籍化の運びとなったわけです。

今井:そうなんですね!そうすると、水原さんの経験と血肉と、受けたエキサイティングな気持ちとか、そういったものが全て詰まっているというようなかたちなんですね。

水原:そうですね。すべてを込めました。

今井:ありがとうございます。ところで、鈴木さんは漢方養生指導師育成コースの初級、中級、上級で講師をされていらっしゃるんですよね?

鈴木:そうです。漢方の理論を学んで、養生を実践して指導できる人を育てているような感じです。

人生100年時代を見据えて『養生訓』をリバイバル

今井:ありがとうございます。実は私は今、初めて『養生訓』という本について知ったんですけれども、今回の『わがまま養生訓』というのはどんな本になりますか?

鈴木:はい。これは、江戸時代のベストセラー本の『養生訓』という本に知恵を借りた本になります。食生活から気持ちの持ちようまで現代人に伝わりやすいように、そこに漢方の考え方の視点も加えて、私なりに解説した本になります。40代50代で、仕事に最高に脂がのって、しかも家族だ、子供だ、色んなものにお金がかかる時期、気合を入れて働かなきゃっていう時期だと思うんですけども、体調がどんどん下り坂になっていくっていうのが、皆さんの体感だと思います。こういった人生の最高値を迎えた時期だからこそ、これからの後半戦に向けて生活習慣を見直しましょうと提案する本になります。

今井:『養生訓』は、江戸時代のベストセラー本だったんですね。

鈴木:そうなんですよ。300年前に貝原益軒という人が書いた本になります。この貝原益軒が、なかなか読みづらい本を庶民に向けて「食べすぎちゃダメだよ」とか、「無理するとダメだよ」とか、「欲張っちゃダメだよ」とか、すごくわかりやすい言葉でまとめた本だったんで、たちまちベストセラーになったんです。これが令和になった今も、書店に置いてあるぐらい売れている本になりますね。江戸時代っていうのは、平均寿命が40~50歳という時代だったんですけども、この著書である貝原益軒っていうのは85歳まで現役だったというふうに言われています。ちなみに、この『養生訓』というのは、益軒が83歳の時に出版した本になっています。益軒が最後までボケずに、寝たきりもならずに、現役だったっていうことを考えると、人生100年時代って言われている今、非常に参考になるではないかと思っています。

今井:すごい!江戸時代の人の平均の倍以上生きた人が書いた本ということで、本当に実践的と言うか、そうなれるんだろうなっていう感じがしますね。

鈴木:そうですね。すごく説得力があると思います。

「気を浪費しないこと」が大事

今井:ちなみに“養生”というのはしっかり食べて、たっぷり睡眠をとるなんていうイメージがあるんですけれど、そんな感じでしょうか?

鈴木:そうですね。もちろんそういうことはとても重要なことなんですけども、しっかり休息をとるだけではなくて、しっかり仕事をして、体を動かすっていうことも大切なことなんです。しかも、食べ過ぎない。内臓に隙間を与えるっていうことは非常に重要なことになっていきます。益軒がしばしば言及していることっていうのは、「気を浪費しないこと」なんです。そのためにも何事もバランスよく行うことが非常に重要になります。

今井:ありがとうございます。そう言えば、ちょうど今、ファスティングとかで、12時間とか10時間空けて食べると、すごく調子が良くなるっていう健康法を聞いたり、やったことがあったりするんですけども、江戸時代からそんな最先端のことを益軒さんはおっしゃっていたんですね。

鈴木:そうですね。その通りで、本当にバランスをとって、当たり前のことを、当たり前に庶民にわかりやすくまとめた本なので、非常に生活の役に立つと思いますよ。

今井:先ほど、益軒さんがしばしば「気を浪費しないこと」とおっしゃっていたということだったんですけど、“気”っていう言葉はよく使うんですけど、実際にあるものなんですか?

鈴木:はい。実際使う言葉としては“気を使う“とか、”気が張る“とか、”気が散る“とか、”寒気“とか”雰囲気“とか、”気”に関する言葉っていうのは非常に多くて、昔の日本人はいつも気を意識していたのかもしれないですね。漢方では一言で気を表すと、私たちが普段使っている“元気”っていう言葉に集約されると思います。元気って漢方の用語なんですね。

今井:そうなんですか!?それは知らなかったです。

鈴木:はい。普通にもう使っているような感じなんですけれども、具体的には、両親からそもそももらった元気、「先天の気」、エネルギーですね。エネルギーと私たちが日々呼吸をすることと食べることでつくり出していく、「後天の気」っていうのがあって、その気が合算して私たちのパワーに変わっていくというふうに考えていきます。で、こういった目に見えない元気、エネルギーをとても大切に考えているのが、漢方の特徴であると考えることができると思います。

「漢方」の概念は意外と幅広い

今井:ありがとうございます。私の中で“漢方”と言うと、昔CMで見たからかもしれないでけど、こういうローラーみたいなので、ゴリゴリゴリゴリみたいな。そんなイメージがあるんですけど、そんな漢方薬のイメージで大丈夫でしょうか?

鈴木:そうですね。漢方=漢方薬っていうイメージの方は多いと思うんですけども、実はすごく広い概念でして、医学、薬学、養生学、これが中国の自然哲学に基づいているんですけども、それが日本に渡って独自に発展した、日本における伝統医療というふうに考えることが出来るんですね。で、中国古来の自然哲学っていうのは何かと言うと、聞いたことがあるかもしれませんが、陰陽五行の思想という、ちょっと難しく感じる方もいらっしゃると思いますけど、簡単に言ったら「自然に逆らわずに、日々の生活の知恵である養生というのをしっかりと学んで、自然のサイクルをうまく考えて生活しましょう」ということになっています。

今井:そうなんですね。実は私、算命学っていうものを勉強していて、そこで木火土金水(もっかどごんすい)っていう五行が出てきたりですとか、そこでも大事な考え方っていうのが「中庸」、何事もバランスよくっていうのが考え方としてベースであるので、中国古来の哲学が本当に詰まってるんだなと今感じました。

鈴木:まさにその通りで、東洋思想というのはすべての自然と共に生活する。これが陰陽であり、木火土金水の五行であるという考え方に集約されるかと思います。

現代人の健康ハウツーにも通じる『養生訓』

今井:ありがとうございます。あと、この『わがまま養生訓』には、コミック、マンガが入っていて、すごく読みやすいなというふうに思ったんですけれども、ご存じない皆様に少しかいつまんで説明しますと、江戸時代の貝原益軒さんが令和時代にタイムスリップして、主人公のひろこさんに色々とアドバイスをするというストーリーになっています。江戸時代の知識人と言うと、なんだか気難しそうなイメージなんですけれども、『わがまま養生訓』の貝原益軒さんはなんだかコミカルな感じですね。

鈴木:そうですね。確かにコミック上では、少しデフォルメしていますけども、実際の益軒も私の中で調べれば調べるほど、お酒も好きだし、美味しいものも大好きだし、温泉好きで、旅行好きで、ハメを外して後悔することもすごくあったんじゃないかなって。お茶目な面がすごく感じられる部分が非常にあります。なので、益軒が若い時代からずっと経験してきた反省と経験から、『養生訓』というのは書かれているのではないかなというふうに推測しています。江戸時代っていうのはすでに現在と似ているような感じで、食べすぎとか、夜更かしとかが、庶民の間では多かったようで、かなり今の現代人の参考になるかと思います。例えば、「江戸肥満」と言う言葉があるんですけれども、江戸時代では食生活がかなり変化したみたいで、一日二食だったのが一日三食になっていきました。多い人では朝、昼、夕、夜の四食を食べていたりしたそうです。江戸などの都市に住む人は、白米をたくさん食べていたということで脚気と言うビタミン不足の病気になったり、あとは砂糖もかなり国内生産が盛んになって、和菓子とかの文化も盛んになってきた時期なんですね。なので、江戸時代っていうのはあまり肉を食べずに、根菜類ばっかり食べていたんじゃないかなって思う方もいるかもしれませんけども、実は肉はかなり食べていたようで、益軒も「まずは米を中心に、肉を少し食べなさい」と、何度も繰り返し、書物では語っています。江戸時代は料亭の番付もあったそうで、現代で言う“食べログ”のようなものなんでしょうかね。庶民は食の楽しみを見出していたんですね。だから、益軒も「食べ過ぎちゃダメだよ。」「食べてすぐ寝ちゃダメだよ。」というような日々の生活の警告とかもいっぱい書いてあるような内容になっています。

水原:貝原益軒の書いた『養生訓』というのは、非常に素敵な内容が結構ありまして、朝から寝るまでの過ごし方ですとか、ストレッチ的な運動とか、お医者さんの選び方、温泉の選び方、気持ちの持ちようなんかも短い言葉でかなり細かく書かれていて、昔の人の興味関心と、 現代人のそれというのはあまり変わらないなあという気がします。本のつくり方としても、現代人の健康ハウツー本にかなり通じるものがあるんじゃないかなと思って、妙に感動するんですね。

今井:ありがとうございます。なんだか300年前の江戸時代と現代に共通するものがあるなんて、すごく面白いなと思いました。しかも、江戸時代の人がそんな「食べ過ぎ注意」とか「お砂糖大好き」とかっていうのは、身近な感じがしました。今日は素敵なお話をありがとうございます。さて、明日はですね、現代人の年代別お悩みを中心に漢方の視点から養生法を教えて頂きたいと思います。本日は鈴木先生、水原さん、どうもありがとうございました。

鈴木・水原:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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