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ビジネス書編集者目線で気になったニュースをピックアップ

フォレスト出版編集部の寺崎です。

先週は丸一週間リフレッシュ休暇をもらい、家族で沖縄へ行ってきました。日中はプールや海でさんざん遊んで、ホテルに戻ったらオリオンビールと泡盛を毎日だらだら飲んでいたので、健康的なのか不健康なのか、正直よくわからないです。

最終日に那覇市内を1泊したので、ジュンク堂那覇店を訪れてみたのですが、だだっ広い店内に人影がちらほら。

お客さんがぜんぜんいません!
あまりの閑散ぶりにちょっとショックを受けました。

日本全体でみると、インバウンド需要として3000万人が毎年訪日していた観光客が、今年はたったの8000人だそうです。

なんと、コロナ前に比べて3000分の1以下に!

那覇空港の出発ロビーにある宮脇書店さんも覗いてみましたが、ここにもお客さんはほとんどいませんでした。それもそのはず。飛行機のなかでみんな何をしているかというと、爆睡してるか、スマホみてるか、タブレット眺めてるかのどれか。ダウンロードしたネットフリックスを観ているのでしょうか(って、自分もそれやってましたが……)。

これって、ピンチです。出版業界いよいよピンチです。

でも、この「ピンチ」を「チャンス」にしないとアカン。
どげんかせんといかん。

というわけで、今日はビジネス書編集者目線で、出版業界での気になる動き、ニュースをピックアップしてみました。

有害図書指定は公権力による暴力か?

三才ブックスから出版された書籍『アリエナイ医学事典』『アリエナイ工作事典』『裏グッズカタログ2022』の3冊が鳥取県で有害図書指定を受け、それに連動する形でAmazonで販売停止したことが話題となっています。

事の是非は措いておいて、いろいろな意見があるかと思いますが、最近はこうした規制が以前より強まっているように感じます。

世のオタク層の支持を集めて、先の参院選で当選した参議院議員の山田太郎氏は「表現の自由を守る」を政策に掲げていました。

もちろんこうした規制は愉快なものではありませんが、逆に話題となって発禁処分の3冊が売れている・・・なんて状況も裏にはあるかもしれません。

ドリル業界で異例のヒットとなった「ひまつぶし本」

ドリル業界には疎いので、知らなかったのですが、「ドリルは1万部で上出来」といわれるジャンルだそうです。そんななか、2022年4月の発売から約3カ月で5万部超えを達成したドリルがあります。

それが学研プラスから出ている『天才!!ヒマつぶしドリル』

この記事を読んで、ワタクシ、娘にやらせるために秒でポチりました。

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キャラクターはイラストレーターの伊豆見香苗氏が担当。子供に親近感を持ってもらえるように脱力感を意識した。またキャラには「あと少しだよ」「頑張ろう」と言った、従来のドリルで見られるような親や教育者側からの目線でのコメントは避けた。

これ、スゲーわかります。

子どもがタブレット学習をやっているのを横目で見て思ったのが、「音声キャラクターが明らかにユーザーを子どもにみている点」でした。

「よーし、よくがんばったね!」
「〇〇〇ちゃん、あと少しだよ!」

こんな感じで、言い方もそうですが、声色も赤ちゃんを相手にしているようなニュアンスなのが、気になりました。相手は小学生ですぜ。

今回、問題を提供した著者の田邉亨氏は、全国で40教室以上を展開する「りんご塾」の代表も務める。同塾は滋賀県で始まった算数特化型の専門塾。通う児童の大半は、中学受験を視野に入れていない、公立の小学校の小学生。そんななか毎年のように算数オリンピックで金メダリストを輩出している。

ひょえー。地方にこんなすごい塾があったりするんですね。

こんな著者を発掘した時点で企画の勝利かもしれません。

ハードルが低い雰囲気を前面に出すことで、新規層の獲得にもつながった。公立の小学校に通っている子どもたちや、受験を意識していない親にも手に取られるようになったのだ。以前からパズルで思考力を鍛える類のドリルはあったものの、どれも「IQが上がる」「中学受験に役立つ」といった謳い文句で,勉強への意識の高い親子向けであった。「天才!!ヒマつぶしドリル」は、思考力を問うような面白い問題に、いままでより多くの子どもたちが触れるようになった。

たしかに子どもにとっては「ひまつぶしだったらやってみよう」と思うし、親からしたら「ひまつぶしのつもりでやったら国語力や算数力が身につくなんて、最高じゃん!」となるわけだ。

勉強になります。

コンビニ販売を8倍に増やした秘策とは?

これまた日経xtrendの記事ですが、なるほどなるほどと参考しきりな記事だったので、ご紹介します。

今回の主役は宝島社さんです。

売り上げを伸ばした要因は3つ。

①男性客が手に取りやすいようにした

「書店では、女性誌コーナーなどの近くにマルチメディア商品が並ぶケースが多い。一方コンビニでは、男性向けと女性向けの商品が一緒になって置かれている。そのためコンビニでは書店よりも男性購入者の割合が高い傾向になる。一例として、『moz(モズ)』という北欧ブランドと共同開発したバックパックは、男女購入比率が書店だと女性8割、男性2割ほどだが、コンビニだと女性6割、男性4割になった」(皆川編集長)

②商品のパッケージや陳列方法を変えた

「パッケージのリニューアルを模索している際、コンビニや大手雑貨屋など、各所で透明なパッケージに入ったものをよく見た。アパレルショップでも、ファスナー付きの透明なパックに入った商品がはやった時期もあった。透明なパッケージはコストが低く、冊子が封入できて、中身も見える。そのうえ開けられる心配もなくいいことずくめ」(皆川編集長)。18年7月に、初めて透明なパッケージで売り出したmozのバッグはすぐに完売。コンビニの雑誌コーナーが入り口付近にあったことも奏功し、好調な出だしとなった。

③コンビニに感度の高いユーザーが多かったこと
これが実はけっこう意外でした。「コンビニユーザーは感度が高い」という分析です。

 一見、100円台のおにぎりや飲み物をメインで販売するコンビニで、2000円台のマルチメディア商品は敬遠されそうに思うだろう。しかし皆川編集長は「コンビニはスーパーに比べて、富裕層や感度の高い人が比較的多い。予想以上に抵抗感なく購入してもらえた」と分析する。
 「コンビニを訪れるユーザーは、値段よりも、欲しいか欲しくないかを重視して購入する人が多い。本当に安さだけを重視するなら、スーパーで見切り品のコーナーを見たり、100円ショップでより手ごろな商品を探したりするはず。コンビニは基本的に値下げをせず、プレミアムな商品も散見される。シュークリームならスーパーでは80円程度で買えるが、コンビニだと200円ほどする商品もある。わざわざそうした品質の高いものを求めて来店するユーザーが集まりやすい」(皆川編集長)

たしかに、超節約生活でFIREを達成している厚切りジェイソンさんが「コンビニは一切利用しない」と言ってたのを思い出しました。ちなみに厚切りジェイソンさんは業務用スーパーで買った水にインスタントコーヒーを混ぜたアイスコーヒーを毎日飲んでいるそうです(『ジェイソン流お金の増やし方』より)。

脱線しました。

コンビニ向け商品でミリオンセラーを生み出した皆川編集長は、さらにこんな「定点観測」をしているそうです。

 街角での定点観測とは、通行人のコーディネートを日々インプットし続けること。どれくらいの人数が、どんなアイテムやブランドを選び、どのような色味や形のものを身に着けているか――。毎日同じ場所を行き交う無数の人々を追うことにより、ネットでは知り得ない独自の情報をストックできる。

 「スマホで売れ筋のランキングをチェックするのは誰でもできる。そうしたすぐ入る情報は価値が高くない。一方、街角での定点観測で自分が感じたことや経験則はオリジナルの情報で貴重。世間での肌感覚を日々体感することで、企画を出す際の裏付けも確実になる」(皆川編集長)

 例えば、コンビニ用に男性に寄せた商品を企画する際、皆川編集長はサラリーマンが多い地下鉄の永田町駅で定点観察を行っていたそうだ。宝島社がある半蔵門駅からもほど近い、会社員が密集する駅のエスカレーターやホームで、毎日数百人のサラリーマンをチェック。すると意外にもアウトドアブランドのバッグを愛用する割合が高いと実感。価格も比較的手ごろで、使いやすいものが好まれると確信したそうだ。
 トレンドを知りたいときは、渋谷のスクランブル交差点周辺や新宿駅の付近など、人の流れが激しいエリアにも出向く。「立っているだけで『今はカーキ色を身に着けている人が多い』など、自然と視界に入ってくる情報の蓄積が自信につながり、ヒットに結び付きやすくなる」と語る。

いやー、勉強になります!

私も書店の定点観測はやっていますが、街中の定点観測はやっていないので、カバーデザインの色に迷ったときなど、テーマに沿った読者がいそうな街角で定点観測をしてみたいと思います。

最後におまけ。

こちらの取り組みもなかなか新鮮で、ぜひ応援したいと思いました。


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