#289【ゲスト/編集者】人気ネットメディア編集長が語る、雑誌とネットメディアの違い
このnoteは2021年12月21日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。
プレジデントオンライン編集長が語る、ビジネス誌のすみ分け
渡部:フォレスト出版チャンネル、パーソナリティの渡部洋平です。今日は編集部の森上さんと共にお届けしてまいります。森上さん、今日もよろしくお願いいたします。
森上:よろしくお願いします。
渡部:今日もまた素晴らしいスペシャルゲストをお招きして、お届けするんですけれども、今日は書籍の編集の方ではなく、皆さん、必ず聞いたことはあるであろう、人気ネット媒体の編集長の方がゲストに来てくださっていますね。
森上:そうなんですよね。リスナーの皆さんもヤフーニュースとかネットニュースのサイトを通じて絶対に一度は目にしたことがあると思われる、人気メディアの編集長さんでいらっしゃいます。弊社も新刊を含めて、いろいろと本をご紹介いただいたり、お世話になっている、非常にありがたいご関係の方でいらっしゃいます。本日は本当にお忙しい中、弊社のVoicyにご出演していただいて、ありがとうございます。よろしくお願いします。
渡部:では、私から、今日のゲストをご紹介させていただきます。本日のゲストは「プレジデントオンライン」編集長の星野貴彦さんです。星野さん、よろしくお願いいたします。
星野:よろしくお願いします。
森上:よろしくお願いします。
渡部:では、さっそくなんですけれども、星野さんから簡単に自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?
星野:はい。1981年までの40歳です。3年前からプレジデントオンラインの編集長をやっています。よろしくお願いします。
森上:よろしくお願いします。渡部さんと同じ年ですか?
渡部:いや、僕が1つ下ですね。ほぼほぼ同年代ですね。
星野:よろしくお願いします。
森上:よろしくお願いします。星野さんは、新卒ですぐプレジデントに入られたって感じですか?
星野:いや、新卒ではNHKで記者をやっていまして。2年でNHKはやめちゃったんですけど。NHKをやめて、プレジデント社に移ってきて、それからずっとっていう感じですね。
森上:そうなんですね。NHKの記者。東京ですか?
星野:職種別採用なんですよね。だから、アナウンサーとかディレクターとか編成とかって、分かれているんですけど、その中で僕は記者で。そうすると必ず地方に赴任することになるので、僕は山梨県の甲府放送局っていうところで、いろんな取材をして、すごく勉強になったんですけど、昔から本が好きで出版社で働きたいなと思っていたこともあって、移ったって感じですね。
森上:そうですか。NHK時代はサツ回りみたいなものをやったりとか。
星野:はい。1年はサツ回りで、もう1年は県庁の取材をしていました。
渡部:すみません、サツ回りってなんですか?
森上:サツ回りはね、警察……。
渡部:警察のサツなんですね。
森上:そうですよね? サツ回りってどんなものでしたっけ?
星野:そうです、そうです。警察官に取材して、要は事件、事故の取材をするっていうことで、新聞記者とか放送の記者って、だいたい新人の時は最初に事件、事故の取材をするんですよね。で、警察官の取材だけじゃなくて、何か事件、事故が起きたら、その近くで地取り(じどり)とか言いますけど、地域の方にお話伺って、被害者の方とか、加害者がどういう人柄だったのかっていうのを取材したりとか、そういうことをやりますね。
渡部:知識がなくて、サツ回りって何だろうって……。すみません。失礼しました。
星野:いえいえ。
森上:新聞記者と、テレビ局の記者はサツ回りっていうのをよく聞きますよね。プレジデントさんの話の前に、ちょっとNHKさんの話を聞きたいんですけど、結構いろんな事件はありましたか?
星野:ありました、ありました。僕がいたときには山梨だとオウム真理教の事件っていうのがすごく影響があって、その余波もまだありましたし、殺人事件もいろいろあって、台湾人の留学生が河口湖の近くで殺されちゃうとか、あとは消防団員が連続放火をしていたとか。あとは、ちょこちょこ小さな事件もいっぱいありましたね。
森上:そうですか。それを2年間やられて、やっぱり本をやりたいっていうことで、出版に興味あるっていうことで、プレジデントさんに。
星野:そうですね。うちの会社は記者じゃなくて、編集者っていうふうに言っているんですけど、記者として最前線で一番新しい情報を取ってくるっていうことよりも、編集者として一番面白い情報を幅広く取り上げるっていう方が、自分の性に合っているのかなと思って。それで、今はこういう仕事をしているっていう感じですね。
森上:そうなんですね。入られてすぐ、雑誌の方の編集部に配属されて、っていうことですか?
星野:そうですね。入ってからずっと、「プレジデント」っていう月に2回刊行のビジネス誌の編集者をやっていました。
森上:なるほど。今は本誌の方は何人ぐらいで作られているんですか?
星野:だいたい20人ぐらいじゃないですかね。
森上:そうなんですね。社員さんだけで20人?
星野:業務委託の方とか、フリーランスで編集を手伝ってくださっている方とかを含めて20人ぐらいですかね。社員だと12、3人かな。たぶんそれくらいだと思います。
森上:そうなんですね。雑誌の方は僕も興味深く読ませていただく機会が常々あるんですけど。
星野:ありがとうございます。
森上:実際に、特集を決めたりとかするのって、何か月前に決まったりとかあるんですか? 何週前とか?
星野:よく「雑誌は編集長の物」とかって言いますけど、編集長の方針で結構変わるんですよね。だから、人によっては半年前から仕込んだ特集をやるっていう人もいましたし、2週間に一度出るわけですけれども、準備期間としたら実質1週間とか、それぐらいで1つの特集を一気にやっちゃうなんていうこともありましたね。
森上:「週刊ダイヤモンド」さんと、「週刊東洋経済」さんがあって、やっぱり「プレジデント」さんとなると、私のイメージだとどっちかというと、少しビジネスマンでも上の方の、上層部の方が読むイメージがあるんですけど、そんなことはないですか?
星野:そうですね。まあ、雑誌の名前が「プレジデント」って、すごく偉そうなので、そういう意味もあると思いますし。よくビジネス誌って言われるカテゴリーの中では、「日経ビジネス」さん、「週刊ダイヤモンド」さん、「週刊東洋経済」さん、「プレジデント」っていうような並びになっていまして、他は全部週刊誌なんですけど、うちだけ月に2回刊なんですよね。で、他はみんな記者さんがいて、割とビジネスニュース、ビジネスの現場で起きている新しいことを紹介するっていうことが多いですし、あとは業界特集、「商社が今熱い!」とか、「電気業界がこうなっている!」とか。「プレジデント」ってそういう記事はあまりなくて、よく売れたのは「金持ち家族、貧乏家族」っていう、家計についての特集であったりとか、あとは「書き方、話し方」とか「時間の使い方」とか、そういういわゆる自己啓発と言われるようなジャンル、読んでいただくことで、より仕事が面白くなったり、前向きに次の仕事の一日を歩もうっていう、そういう本ですね。だから、そこまで読者層の年齢が上っていうことはないんですけど、誌名が偉そうなので、なんかそういう感じはするのかなと。あと、2000年に月2回刊になっているんですけど、それより以前っていうのは応接間で置いといて、社長が読むっていう。そういう中小企業の経営者向けの雑誌で、戦国武将が出てきて、「徳川家康に学ぶ、人心掌握術」とかをやっていたので、そういうイメージを持たれている方もいらっしゃいますかね。
森上:なるほど。そのイメージがあるのか。確かにビジネススキルとか、そういったものっていうのは、速報性っていうよりも、トピックっていうよりも、ワンテーマで深掘りしていく。ちょっと書籍に近いイメージになりますよね。
星野:そうですね。そうだと思います。
本誌とオンラインの関係性と違い/採用する記事の共通点/ネタの探し方
森上:なるほどね。雑誌とオンラインとの連動っていうのは、結構あったりするんですか?
星野:そうですね。適宜連動はしているんですけど、基本的にはオンラインで読めるものと、紙面で読めるものは別になっています。一部、紙面の記事をオンラインに転載したり、もしくは、こういう特集が出るんで、っていうかたちで、先にオンラインで出したりなんていうこともあるんですけど、基本的には別にしていまして、これもちょっと、これからまた考えていかないといけないなあなんて思っていますね。
森上:棲み分けっていうのは、あるわけですね?
星野:全然違うんですよ。雑誌に載る記事の作り方と、オンラインでウケるっていう、オンラインでよく読んでもらえる記事の作り方は全然違うので。
森上:そうなんですね。
星野:はい。「プレジデントオンライン」って一番最初は雑誌の記事をウェブに転載するっていうところから始まっているので、過去の「プレジデントオンライン」の記事を見ていただくと、雑誌発の記事ばっかりなんですけど。そのときもそこそこ存在感のあるサイトではあったんですけど、いまいちだったので、僕のほうから手をあげて移ってきたっていうことなんですけどね。
森上:星野さんが編集長になってから、今の「プレジデントオンライン」になったっていう感じなんですね。だいぶ変わったっていうか。
星野:まあ、そうですかね。2017年に副編っていうかたちで「プレジデントオンライン」に入って、いろんなやり方を変えていったというか。「プレジデントオンライン」のオリジナルの記事ってどうやって作っていけばいいのかっていうのを一から考えたっていう感じですかね。
森上:なるほどね。今、オンラインの方は何人で作られているんですか?
星野:16人って言っていますね
森上:結構いらっしゃいますね。雑誌と変わらない。
星野:います、います。フリーランスの方と業務委託の方も中にはいらっしゃるんですけど、それでも社員で12、3人はいるはずです。
森上:そうでしたか。企画会議っていうのはあるんでしょうか?
星野:毎週やっています。
森上:毎週! すごい。それは特集テーマ……でも、特集っていう感じじゃないのか。
星野:そうなんですよね。雑誌っていうのは特集で動くので、うちの雑誌だと仮目次って言っていますけど、60ページから80ページぐらいの特集っていうのは、上から下までだいたいはじめに決めちゃうんですよね。だから、まず最初に安倍晋三さんに出てもらおうと。でも難しいよねっていうのがだんだんと……、取材依頼しても出てくださらないこともあるし、安倍さんのタイミングもあると思うので。そうすると、違う人は誰だろうみたいなかたちで、そうやって特集って作っていくんですよね。だから上から下まで設計図があるんですけど、オンラインのサイトって表紙がないんですよね。
森上:そっかー。
星野:雑誌だと表紙があって、〇〇の特集だとか、「プレジデント」だと思って、上から下まで読んでくれるんですけど、オンラインの記事っていうのは、「プレジデントオンライン」のサイトからご覧いただく方もいますし、GoogleとかYahoo!とか、SmartNewsとか、そういうプラットフォームからポンッと「プレジデントオンライン」を開くっていうことも多いと思うんですよ。そうすると、さっきまで「東洋経済オンライン」の記事を読んでいたのに、次に「プレジデント」を読むとか、その前までは「週刊女性PRIME」を読んでいたのに、「プレジデント」を読むとかですね。人によって動きが予想できないんですよね。そうすると、一本一本の勝負になるので、企画会議っていうのも一本一本、プレゼンしてやろうとか、これはやめようとか話し合っていますね。
森上:そういうことなんですね。スタッフが16人いらっしゃいますけど、1人何本くらい持ち寄るものなんですか?
星野:一人5本は持ってきてっていうようにお願いしていますけど。
森上:おー。ということは、80本。
星野:でも、16人で集まって会議はしていないので、会議で集まるのは10人ぐらいですかね。班を2つに分けているので。それでも、50本くらいは出てきますかね。それを1時間ぐらいの会議で、バーッと決めちゃうっていう感じですよね。
森上:パパパッと。プレゼンをコンパクトにしながら。
星野:そうですね。もうスパッスパッと。タイトルが一番大事なので、タイトルを見ればもうだいたいやるか、やらないか、の判断がつくっていう感じなんですね。
森上:タイトル勝負っていうのは確かに。
星野:いい記事、中身のある記事はタイトルがすぐ決まるんですよね。で、タイトルを見た瞬間、みんな読みたいって思うものが多くて、逆にグズグズのものって、タイトルもグズグズなので、結局「これ何?」って聞くことになるし、わざわざ聞かないとわからない記事っていうのは、もう検討から外れることが多いですね。
森上:なるほど。タイトルが判断基準になっているっていうのは結構あるかもしれないっていうことですね。
星野:もうタイトルが一番。
森上:なるほど。それこそ先ほどの雑誌との違いで、もちろん雑誌の見出しも大事ですけど、それ以上に記事のタイトルって大事なんですね。
星野:雑誌もタイトルが一番重要だと思うんですけど、雑誌のタイトルは「プレジデント」だからこういうものだっていう前提があるので、多少短い言葉でも、例えば「金持ち家族、貧乏家族」っていう、そういうのでも特集タイトルになり得るんですよね。ウェブだとそれはダメですね。なんのことだかわからないっていうか。もっと詳しく言ってあげないといけないので、「年収300万でも、幸せな人がたった1つやる方法」みたいな。そういう、パターンですけど、そういうのに落とし込まないといけないんだろうなって思います。
森上:なるほどね。これは原稿は結構、編集者が書いちゃう感じですか?
星野:いや、我々は編集者なので基本的に記事は書きません。
森上:ライターさんがいらっしゃる?
星野:いらっしゃるっていうか、いろんな方に入っていただくっていうことですね。
森上:外部の専門家の方に寄稿いただくというかたちだったりとか。
星野:そうですね。フリーランスライターの方とか、ジャーナリストの方とか、大学教授の方とか、企業の方が直接書かれることもありますし、企業の方にインタビューをしに行くこともありますし、ただ、我々は編集者なので、ちょこっと書くことはありますけど、基本的には書かないっていうことで。
森上:そうなんですね。じゃあ、企画出しとネタ探しがメインのお仕事になってくるということで。ネタ探しはどう行っているのかなって。人それぞれだとは思うんですけど。週に5本ですもんね。
星野:まあ、人それぞれなんですけど、やっぱり他の新聞さんとか、雑誌さんとかを見て、企画のネタを考えるっていうのが多いと思いますね。全然被らないんですよね。要するに、新しいものをやろうとしていないので、新しいのが出ればよりいいですし、取材した結果、新しくなっちゃったりすることもあるんですけど、全然世の中に出ていない話をやるっていうよりかは、すでに世の中に出ているんだけれども、ちょっと詳しく知りたいなとか、もっとこういう考え方があるんじゃないのかなっていうかたちで膨らませるっていうことが多いので、「今すぐ5本考えろ」って言われたら、みんな考えられると思うんですけどね。
森上:なるほどね。そういう感じの企画ですか。ちまたにある話、それが大きなものから小さいものまで。それを、どう拾って料理をするかっていう、まさに編集の仕事っていうことに、注力されているっていう感じですね。
星野:編集者も一応書く力が重要なんですけど、もっとうまく書ける、もっと詳しいっていう人が必ずいるので、そういう方を見つけて、そういう方に執筆のお願いをするっていうのが一番重要なんですよね。例えば今日のニュースだったら、「外国人の入国禁止」っていうことをちょっと見直す。日本人の帰国に関しては、新規予約も認めるっていうように、話が二転三転していますけども、今まで日本人の帰国ってどういうふうにされていたのかなとか、その時の検査の体制ってどうだったのかなとか。そういうのって、知っているようで知らないので、そういうのを取り上げてみようとかですね。いろいろとそうやって話を膨らませてやるって感じですね。
印象に残っている記事/わかったふりをせずに深堀りすると見えてくるもの
森上:わかりやすいですね。なるほどね。今までの星野さんが携わった記事で印象に残っている記事とか、バズった記事とかは何かありますか? いっぱいあるでしょうけど。
星野:いっぱいあるんですけど、そういう新しいニュースを必ずしも追わないっていう話だと、オンラインじゃなくて紙面で掲載した記事で、その後にオンラインでも転載して、ヤフートピックスにも入れていただいたんですけど、ヤマハ発動機で以前社長をやられていた柳さんっていう方のインタビュー記事っていうのをやったことがありまして、ヤマハ発動機の社長っていうのは歴代、バイクの免許を持ってなかったんですよね。バイクとトレジャーボードの会社なんですけど、社長さんっていうのは、事務方っていうか、別にバイク乗りである必要はないだろうっていうことなんですよね。なんですけど、柳さんは、社長に就かれた時に、大方バイクの免許を初めて取ったんですよ。社長になってから取ったって言うか、社長になる前ぐらいかな。それぐらいから夜間の学校に通われて取られたんですけど、それで「ヤマハの社長がバイクの免許を取った理由」っていう記事にしたんですよね。
森上:それは面白い。タイトルだけで読みたくなる。
星野:これはでも、ヤマハを取材している記者さんって、いっぱいいるわけですけど、その人たちには常識なんですよ。ヤマハの社長っていうのはバイクの免許を持っていないっていうのは。いわゆるバイク周りの取材をしている人からすると、ヤマハっていうのは、お公家集団というか、そういう人たちなので、開発の現場と経営人というのは、ちょっとカラーが違うので、免許はどうせ持ってないっていう。そういう話だから、普通のニュース記事では特にそのことは取り上げないんですよね。でも、僕らの視点からすると、それめちゃくちゃ面白いじゃんって。ヤマハの会社がいかに変わろうとしているかっていうことを端的に示しているので。でも、ヤマハを担当している記者さんとかってそれを、あんまり書きたくないんですよね。ヤマハに対してネガティブな感じがするじゃないですか。社長なのに免許も持ってないのかっていう。でも、これまでの経緯としてことはそういうことがあったけれども、今回は免許を取ったわけだから。それってむしろポジティブに言ったほうがいいんじゃないのって、僕らだったら思うんですよね。その時に、取った理由とか、どうやって取ったのかとか、柳さんって、自分の名前の刺繍が裏に入ったつなぎとかも作って、めちゃくちゃバイクやる気満々で。そういうエピソードとかも含めて、長く紹介することができるんですよね。ストレートなニュースだと、ヤマハのバイクがどれくらい売れたとか、海外戦略がどうだとか、そういう話になるんですけど、我々はよく“人目線”って言っているんですけど、社長が何考えているのか、開発者がどういう飯を食ってんのかっていうところから、話をビジネスにつなげていくということをいつもやっていますね。
森上:いやー、面白い。今のお話を聞いて、記事を検索しちゃいましたけど。このお話とちょっと通じるかどうかわからないんですけど、我々にとって当たり前のことが意外とまだ一般化されてないことって、結構あったりするなって、本の企画を立てたりとか、作る時も、 感じたりする時があって。こっちの常識と読者の常識が対峙してる時、その当たり前が当たり前じゃないとか、まさにそのヤマハの記者さんとか、周りにいらっしゃる方にとっては当たり前のことが、一般にとってめちゃめちゃ新鮮ですよね。そのお話なんて。
星野:まあ、目線を落とすっていうことではないんですね。だから、みんなやっぱりわかった気になっちゃうし、外の人がわからないっていうことがわからなくなっているので、だから最近の流行りのワードで言うとDXとかも一緒だと思うんですよね。DXって、既にそういう商材を扱っている人たちからすると、すごく常識なんですけれども、未だにデジタル的なものの活用をされてない人からすると、何のことやらっていう曖昧模糊とした概念なんだと思うんですよ。何かチャットツールを一つ使うっていう話だって、DXだっていうふうに言えると思いますし。でも、本当のDXっていうところからすると、そのツールを使うっていうことじゃなくて、業務プロセス自体がデジタルを起点に変わっていないと、DXではないんだっていうような話にもなると思うんですよね。じゃあ、どこに面白いポイントを見つけるかっていうのが、ある種、編集者の仕事で、より多くの人にとって、今流行りのDXっていうキーワードが分かりやすくなるかたちで、どこから始めようかっていう。でも、そういうのは書籍なんかだと、「全然わからないんで、ゼロから教えてください」みたいな感じの本とか、最近多いと思うんですけど、そういうのは、ネットの記事だと、やっぱり3000字とか4000字で短いので、もっと5万字、10万字で、その一つのテーマについてじっくり知りたいよっていう人からすると、ウェブではなくて、本で読みたいっていうことなのかなって思いますよね。
森上:なるほどね。すごくいいお話を伺えました。編集者とはなんたるものかっていうのが、もしかしたら雑誌だろうとオンラインだろうと、書籍だろうと、共通点っていうかね。そこはすごく考えました。ありがとうございます。ちょっとまだいろいろとお話を伺いたいところなんですけど、お時間がね。渡部さん、今まで聞いていてどうでしたか?
渡部:そうですね。おそらく同じ編集という立場の仕事なんだと思うんですけども、結構違いがあったのかなと森上さんの反応見ていても思ったので、すごくためになるお話を伺えたなと。
星野:いや(笑)。そんなたいしたこと言ってないですけど(笑)。
渡部:それこそ僕らからすると今、星野さんには当然だったことが全く新しい視点で、本当に面白い発見だったなと。個人的には、「プレジデント」の本誌は、表紙を見てから内容を見てくれる。ただ、ウェブの方は検索だとか、別のプラットフォームから流れてくるから、そもそも違うものなんだっていうのが、僕はすごく……、言われてみると当たり前なんですけど、思ったことは一回もなかったので、学びになりました。
星野:まあ、でも書籍もそうですよね。だから本なんかは、まさに書店で買うものなので、書店で並んだときにどう見えるかとか、どう刺さるかっていうことが重要だと思うんですけど、ウェブのタイトル、ウェブで読む記事って、また全然違うシチュエーションなので、本屋に行く人は、お金を払って何か一つのことを勉強しようとか、学び取ろうという気持ちはすごくあるので。ウェブで例えば、英語の記事とかだめなんですよね。
森上・渡部:あー。
星野:英語を学ぼうとか、英語のコツとか。英語のコツなんて一本じゃ、どうにもならないので(笑)。一本だけ英語のコツを読みたい人って、やっぱりすごく少ないんですよね。でも、一冊本を買って英語をやってみようかなとか、もしくは学参のコーナーに行って、英語の本を買おうっていう人は一定量いて、そこがちょっと違うなっていうことで。
森上:いやー、 面白いですね。
渡部:そうですね。星野さんは、明日もまたゲストとして来てくださいますので、引き続きお伺いしてまいりたいと思います。では、今日は本当になかなか社外秘レベルと言いますか、中からしかわからないような情報をいろいろとお話いただきまして、本当に勉強になりました。「プレジデントオンライン」さんのリンクも貼ってありますので、ぜひチェックしてみてください。ヤマハの先ほどのお話とか、検索すると読めると思いますので、ぜひ読んでみてください。明日は「ネットメディアの未来」というテーマで、詳しくお伺いして参りたいと思います。星野さん、森上さん、今日は本当にありがとうございました。
星野:ありがとうございました。
森上:ありがとうございました。
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)
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