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【フォレスト出版チャンネル #78】ゲスト/EC|「D2C」という新しいモノの売り方

このnoteは2021年3月3日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

そもそも「D2C」とは何か?

渡部:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティ渡部洋平です。今回は昨日に引き続き角間さんに来ていただいておりますが、「D2Cという新しいモノの売り方」をテーマに、お話していただきたいと思います。改めてご紹介させていただきます。Shopify公認エキスパート、デザインエンジニア、そして株式会社フルバランス代表の角間実さんです。よろしくお願いします。

角間:よろしくお願いいたします。

渡部:編集部の寺崎さんも引き続きよろしくお願いいたします。

寺崎:よろしくお願いします。

渡部:昨日は角間さんにShopifyの凄さについて解説していただきました。気になる方がいましたら是非昨日の放送を聞いて頂ければと思います。書籍商品売るならShopifyの帯にも「D2C時代の主役となるShopifyを完全攻略」とあるんですけれども、そもそもこのD2 Cとは何かというのを最初にお話を伺いしたいと思います。

角間:はい。D2Cっていう言葉はDirect to Consumerの頭文字をとったものです。toを数字の2で書いているんですね。一言で言ってしまうと製造直販を指すと言われています。

渡部:なるほど。今までも製造直販っていうのはあったんじゃないかと思うんですけど、この今言われているD2Cとは何が違う概念なんでしょう?

角間:まさにそこが答えと言いますか、この本でまず解説させていただいたところになるんですけども、皆さんの中でもキーワードを聞かれたことがある方はいらっしゃると思うんですが、先月出版しました『顧客をつかんで離さないD2Cの教科書』を書くにあたって、ちょっと調査をしたんですよ。例えばD2Cのいわゆるブランドをやってらっしゃる経営者の方もいらっしゃる様な場で、「D2Cってなんですか?」って聞いて回って質問したんです。その時の回答というのも実はあやふやで、「製造直販」とか「通販の言いかえですよね」とか、「ブランディングとかマーケティングの言葉とか用語じゃないの?」とかですね。あとは「海外の売り方よね?」とか。製造直販とか直販をただ言いかえているだけで「響きがかっこいいから使っています」みたいな方も結構いらっしゃいました。

渡部:そんなもんなんですか?(笑)

角間:現場の方でも意味は深くはあるかもしれないけど、基本的には直販として使おうみたいなことが多くて。こういうあんまり深い意味がなくて、使い方の定義とか用法とかが曖昧で、すぐになくなっちゃう言葉のことをバズワードといいます。D2C自体もバズワードって言われることも結構ありました。バズワードって言われるものは一回流行ってすぐ消えていくものが多いんですけども、D2Cに関して言うと、元々直販という意味があるって言う部分もあるんですけれども、長く残っていまして、しっかり定義が出来て、しっかり理由が付いちゃえば、もっと価値があるものだと考えました。
じゃあ何が違うかと言いますと、D2Cがこれまでのバズワードと違ったのは、今までみんなが直販と同じじゃんって思っているぐらいのところと同じようなやり方をしながら、極端に稼ぎ続けている、すごく売り上げが伸び続けている会社がありまして、結局それがD2Cだ、と。いわゆる通販で儲かっているイコールD2Cみたいな言い方もされていたんですね。今までのやり方と同じような事をしながら、すごく儲かっている会社がD2Cと呼ばれている様な一面もあって、D2Cという馴染みが少ない文字が先行したせいで、日本の中でしっかり溶け込まなかったんですよね。意味が完全に掘り下げられないまま、いわゆるブランディング用語の一つみたいなところで終わっちゃっているところがありました。本の中でもまとめたんですけれども、新しい売り方と言っている通りものすごいチャンス、儲け方があるのに、そのカタカナ3文字のD2Cというのが先行しちゃったせいで、色んな人の腹に落ちてないし、新しい売り方にみんな対応出来てないなと考えたんです。売り方として新しい製造直販のやり方をD2Cとまず捉えていただければと思います。

D2Cがこれまでの直販と異なる点

渡部:ありがとうございます。では、今D2Cという言葉についてお話しいただきましたが、より具体的にここからお伺いしていきたいと思います。もうちょっとD2Cを具体的に教えていただけないでしょうか?

角間:まさにこういう感じになっちゃうのが、D2Cのポイントでして、例えばAはBだって言っちゃえばわかりやすいんですが、D2C自体はお話した通り製造直販、特にインターネットでの製造直販の新しい形です。もうちょっと深堀りをすると、D2C自体は3つの要素で成り立っています。逆に言うと、この3つが揃えばある種D2Cだと言っていいと思っているんですけども。
1つ目が「デジタル主体の製造直販」。まあ、当然ですね。製造直販をデジタルでも強くやっていきましょう。2つ目が「PR、ブランディング、コミュニティを重視する」というところです。逆を言うと、広告であったり、マーケティングを重視しましょうということの対比にこちらがあります。3つ目が、本の中では「体験を押し上げる製品」とまとめています。
この3つ、どれも聞いたことがあるような言葉ややり方で、大枠は皆さんもそういうことやっているよっていう物販の方もいらっしゃると思うんですけれども、この3つに“直接”っていう言葉が付くのがD2Cになります。例えば、デジタルを活用して直接訴求しましょう、直接PRして直接コミュニケーションをしましょう、直接コミュニケーションして得られたデータやお客様の声を製品に反映しましょう。つまりD2Cの一番大きい違いは、いわゆる直接の施策という言い方をしていますが、直接消費者の声を聞いたり、直接やり取りすることでお客様の体験を押し上げるユーザーエクスペリエンス顧客体験っていう言葉がありますが、それを最重要視するというのが、D2Cのやり方と言えます。考え方の原点に顧客体験を持っていきましょうというのがD2Cの原点と言いますか違いですね。ユーザー体験を中心に考えることがD2Cのポイントです。

渡部:なるほど。今まではマーケッターの視点からモノを売るっていうところでしたけど、お客様の体験重視、最近よく言われますけど、モノ消費ではなくコト消費みたいな流れにも合致してきているわけですね?

角間:まさにそうです。モノとコトの話は、完全にユーザー体験の話ですので合致していると言えます。

成功しているD2Cブランドの具体的事例

渡部:何か具体的な事例みたいなものを紹介していただけると、リスナーの皆さんも分かりやすいと思うんですが、なにかいい事例というのはありますか?

角間:そうですね。ECのD2C企業の事例を1つすると、完全な受注販売をして、販売を絞って希少性がある「幻のチーズケーキ」と言われているミスターチーズケーキというブランドが有名です。元々料理だけではなく、体験を提供するフレンチシェフ出身の創業者の方がされていて、気付きがあってされたと伺っています。チーズケーキは冷凍で届くので、ただ冷凍だから解凍してというだけじゃなくて、半解凍で食べてみたり、全解凍で食べてみたり、ただ提供して解凍して食べるんではなくて、そこで溶かすこと自体も体験として、いわゆるチーズケーキを食べる時間といいますか、食べることを提供する、ただ売るんじゃなくて時間を商品として提供する設計で作られています。

渡部:面白いですね。買えるか買えないかみたいなワクワク感もそうですし、届いてからただ味わうだけではなくて待つところも楽しめるようにしたということなんですね?

角間:そうですね。

渡部:コロナ禍で直接店に行きにくくなっていると思うので、やはりD2C企業は業績が伸びているところが多いんでしょうか?

角間:もうそれは間違いないですね。例えばアパレルの例で言いますと、コロナ禍でおうち時間が増えたというところで断捨離をされたりとか、サステナビリティ、エコの観点というものが注目されることが多くなりまして、元々既存のアパレルは大量生産、大量消費というところがあったと思うんですが、お客様、利用者の思考がこれまでのモデルではなくて、D2Cで提供するようなものに対して注目が集まっています。
あと、お客様の動向だけではなくて、外出自粛をされている状況がありますので、当然その中ではお金を旅行やレストランなど、いわゆるラグジュアリー体験みたいなものに使っていた分を、これまでにないちょっといい服や、ちょっといいものに使うといったように変わった方が増えております。もっと言うと、そこそこいい服が欲しいなあと思っていた方が、ちゃんと選んでちゃんとこだわりのあるお気に入りの服を探したいと転換したっていうのが大きいと思います。あとは巣篭りをしている状況で買い物に行けなくなったので、いいものをちゃんとネットで買うっていう習慣がついた方が増えたのもポイントと言えると思います。

寺崎:渡部さん、D2Cが儲かっているかどうかって話なんですけど、この『顧客をつかんで離さないD2Cの教科書』の中には元気のいいブランド4社に取材しているんですよ。その成功の秘訣はどこにあったのかということを探るロングインタビューなんですけど、その1つのブランドが2020年初めと2020年末の売り上げが19倍になった事例もありましたよね。

渡部:19倍ですか!すごいですね。

角間:そうですね。書籍で取り上げさせていただいた4社以外も、成功しているD2Cの企業はたくさんありますが、その4社はコロナを迎える前後含めて、しっかりお客さんとコミュニケーションをとっていらっしゃったっていうのもそこまでの売上増に繋がった要因の1つと言えると思います。

寺崎:しかも、顧客とのコミュニケーションもすごく濃いですよね。

角間:確かにそうですね。今、そういう状況になった時に、例えばインスタグラムで直接発信するだけではなくて、しっかりそこでお客様とコミュニケーションを取られて、それでどういうことが起こっているのか、お客さんがどういうことで困っている、どういうものが欲しいんだろうみたいなものをしっかり次の商品であったりとか、次の体験に取り込んでいらっしゃる企業がやはり強いと思います。

売り手と買い手のフラットな関係性

渡部:なるほど。ちなみに、本の中でロングインタビュー掲載ということなんですけども、その4社っていうのはどういったブランドなんですか?

寺崎:はい。まず、身長155cm以下の女性向けアパレルCOHINAさん。誠品生活日本橋にも出店されているんですけど、台湾初のライフスタイルブランドDAYLILYさん。 3つ目が筋トレ界ではかなり有名なVALXさん。最後は、体の菌を整える商品をサブスクで展開しているKINSさん。この4社です。皆さん共通しているのが、お客さんとの関係性のフラットさ、あと先ほど角間さんがおっしゃられたコミュニケーションの密度なんですよね。

渡部:売り手とお客さんの関係が近いということなんですね?

角間:まさしく文字通りのD2C、Direct to Consumer、顧客のみなさんへもしっかり色々なかたちで実践されていました。例えばインスタライブで商品開発への意見を募るとか、代表が直接SNSのお客様のクレームに対応するとか、冒頭で出てきたこれまでの製造直販とはもうレベルが違うところでお客様とコミュニケーションをされていて、シンプルにSNSがあるかないかという時代差もあるかもしれませんが、単に使っているというよりも、しっかり活用しているというのが大きな差と言えると思います。あとはSNSの話をすると、ツイッターとかインスタグラム、LINEも含めてもいいかもしれないですが、SNSなどを使って直接売り手と買い手で繋がる、やり取りをする、コミュニケーションをとる、やはりそれは本当にデカイと思います。

渡部:なるほど。SNS時代あってのD2Cっていう部分もあるんですね。では最後にこれからD2Cブランドをつくる、もしくは今ある既存のブランドをD2C化していくということを考えているリスナーさんもいると思います。そういった方にアドバイスをお願いします。

角間:D2Cの隠れたメリットや長期的なメリットはもっとあるんですが、まず短期的なメリットをいくつか挙げるとすると、デジタル完結なので利益率が高いですね。例えばモールとか含めて直販なので中間の手数料が抑えられます。あとはお客様の声やデータに関してもモールや百貨店を通すとストックできなかった部分がしっかりストックできるという点が挙げられます。
あとはお客様の声みたいなものをしっかり商品に反映できるっていうところもメリットと言えると思います。あとはどこまでっていうところではあるのですが、例えば自社でECストアを持つと自分のブランドの魅力を自分が伝えたいかたちで直接消費者の方に伝えられるのがメリットと言えると思います。
ここで大事なポイントなんですけれども、基本的にD2Cはここまで全て、いわゆる通販も含めて物販とかモノを売る、商品を売るというところだけのお話としてきましたが、D2Cという言葉、もっと言うと、顧客体験中心で商品であったりモノを売っていこうというところというのは、今のところまずは物販からきてるし、D2Cの言葉自体も物販の言葉かも知れないですが、本の中でも申し上げているんですけれども、いわゆるその流れって言いますか、大きくそういうふうに世の中がなっていく中の最初にまずD2Cという言葉で物販できたと考えていて、D2Cの波自体がこれからもほとんどの業種に来ると私は考えています。
メリットもそうですけれども、具体的にD2C企業というのはこういうことやらなきゃいけないねっていうのをまとめるために今回の本の中でメソッド、こういうことをやりましょうっていうのを8つにまとめました。「最強なD2C企業をつくるための8つのメソッド」という名前をつけています。是非こちらもご参考にいただければと思います。

渡部:ありがとうございます。今回ご紹介ありました4つのD2Cの活躍企業がありましたけれども、是非角間さんの本を読んで、そんな将来のD2C企業が生まれるといいなと思っています。是非参考にしていただきたいと思います。編集担当の寺崎さんから何かありますか?

寺崎:はい。これまで出ているD2Cの本って意外と海外事例だったり、概念的な話が多かったので、この本では企画段階から徹底して国内の事例にこだわっています。冒頭のロングインタビューほんとお勧めなんで、すぐに真似できるやり方がたくさん詰まっていますので、是非見ていただければと思います。

渡部:はい。気になった方は是非今回出版されました『顧客をつかんで離さないD2Cの教科書』をお読みいただければと思います。では、今日は角間さん、寺崎さんありがとうございました。

角間・寺崎:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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