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危険なパーソナリティ「ダークトライアド」を知ることのメリットとは?

先月発売した喜入暁『心の中の悪魔』は、ほとんど研究者の間でしか共有されていなかった危険なパーソナリティ「ダークトライアド」という専門的知識を一般向けに噛み砕いて解説している本です。おかげさまで好評を得ています。

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「ダークトライアド」とはナルシシズム、マキャベリズム、サイコパシーの3つのパーソナリティの総称で、しばしば三角形で表現され、自己中心的で他者操作的、かつ共感性の欠如などが共通した特徴です。
この概念を知ることによって、私たちにどのようなメリットがあるのでしょうか? もちろん、何かしらメリットがあるから本にしたわけです。この新しい概念を知ることで、他人の言動へ対する捉え方が変わることはもちろん、自分自身をより正確に見つめ直すきっかけを得られるはずです。
本書の中から関連箇所を一部抜粋、本記事用に改編して、以下に掲載します。


ダークトライアドという概念を知ることのメリット

「サイコパスはあなたの身近にいる」と言われても、ピンとこない人は多いのではないでしょうか。ニュースに取り上げられるような(あるいは報道規制がかかるような)残酷な殺人事件や映画や漫画の中に登場するシリアルキラーのように、自分の日常との距離を感じる人もいるはずです。
 しかし、ここまで簡単に説明したダークトライアドの特性を読んで、すべてが当てはまるわけではないけれど、あるいは3つのパーソナリティのうち1つだけだけど、自分の身近に似た特性のある人が思い浮かんだり、自分の中にもそうした特性があると感じた人もいることでしょう。
 本章の冒頭で、「ダークトライアド」という言葉には、中2心をくすぐる響きがあると書きましたが、そうした好奇心以外にも、あるいは研究者以外にも、本書を読んでいる読者個人として、ダークトライアドという概念を知ることのメリットを身近に感じていただけばと考えています。
 たとえば、次のような2つです。

自分や他人のダークトライアドの特性を知ることができる―メリット1

 まずは、「ダークトライアド」の概念を知ることで、自分自身のことについて自覚的になれる、あるいは他者の行動パターンについての理由付けができる、というメリットが挙げられます。
 たとえば、日常的に人ともめごとを起こしがちだったり、後先考えずに行動して悪い結果を招いてしまったりといったことがある人もいるでしょう。そして、このような人たちは、そうなってしまう理由を漠然としかつかんでいないものです。したがって、自分の何をどうすればいいのかわからず、結果的に同じ過ちを繰り返してしまいます。
 しかし、ダークトライアドという概念を知り、かつ自分のダークトライアド傾向が高いことを自覚できれば、なぜ今までそんなことになってしまっていたのかの答えの1つが得られます。とすれば、それを踏まえて自分の行動パターンや心理メカニズムの特徴を客観的にとらえることができるでしょう。少なくともこれまでの行動パターンを、意識して制御できる可能性が生まれます。
 私も、なんでこういう失敗をするんだろうということがよくありましたが、ダークトライアドという概念を知ったことで、その原因をとらえることができています。ダークトライアドが高めであるということがわかれば、どのようなときにどんな失敗が発生するのか、ある程度予想がつきますので、少なくとも今までよりも気をつけて行動できるようになった気がします。
 ちなみに、知らなかった心理的な概念を知ることで、自分の行動を省みることができるのは、ダークトライアドの例に限りません。
 たとえば、ビッグ・ファイブ・パーソナリティモデル(人間の性格を5つの因子で説明する心理学の理論。5つの因子は外向性、誠実性、調和性、開放性、神経症傾向)の1つである神経症傾向が高い人は、不安になりがちだったり心配しがちな傾向があります。日常的にこのような状態が継続するとどんどんエネルギーを消耗しますし、それに伴い精神的・身体的に不健康な結果に至ります。
 神経症傾向という概念を知らなければ、やはり原因が漠然としていて、「自分はダメなやつなんだ」というような負の思考のスパイラルに取り込まれて余計ネガティブな結果を生んでしまうでしょう。
 一方で、神経症傾向という概念を知っていて、自分がその傾向が高いことを知っていたらどうでしょうか。少なくとも原因の1つははっきりしますし、それに基づいた意識的な制御にもつながります。

ダークトライアド傾向が強い人を認識できる―メリット2

 ダークトライアドという概念を知っていることのメリットの2つめとして、他者とうまく付き合えたり、危険から身を遠ざけたりできます。
 ダークトライアドが高い人は、他者の目にはしばしばカリスマ的で魅力的に映りがちです。実際は本書で述べるように、さまざまな対人関係の問題や社会的な問題など、他者に不利益を生じさせがちなのですが、初対面ではそのようなことに気づきにくいものです。
 しかし、ダークトライアドが高い人は初対面だけ対応を変えているわけではありません。つまり、そういう人と対峙したとき、ダークトライアドの特徴を知っていれば最初からダークな要素が見えることもあります。
 もちろん、初対面だけでその人を判断することは困難ですし、実際、ダークトライアドが高いまま円滑な人間関係を築き、友人に慕われているケースは普通にあります。そのため、当然、警戒を啓発するものではありませんし、むしろそのような過度な警戒は良い人間関係をこちら側から放棄することに他なりません。
 あくまで、相手がどういう人物であるかの手がかりを得られ、それを活用できる可能性があるということです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 い しく ろ )

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