【台北ブックフェアに参戦!】文化が違えば出版業界のクセも違う
こんにちは。フォレスト出版・編集部の美馬です。
今ちょうど、5日ぶりに日本に帰ってきました。ドッと疲れが押し寄せてきていて、重いスーツケースを引いて帰宅する気力もないので、とりあえず空港でこの原稿を書いています。
さて、どこに行っていたのかと言うと、牛肉麺がとっても美味しかった台北に行ってきました!
もちろん観光ではありません。台北國際書展(台北国際ブックフェア)2024に、商談のために行ってきました! かんたんに言うと、自社の作品の版権を台湾の出版社さんに売り込みいくといったようなもの。その国の言わば本の祭典です。
▼会場(出展ブース)はこんなに盛り上がっていました。
そんなブックフェアの様子、台湾の出版事情などをお伝えしてきます。
【台湾で今アツい書籍テーマTOP3】
1.必要なのはペンだけ!——その手軽さがヒットの理由?
今回数十社と商談したなかで、ほぼすべての現地出版社が口をそろえて言っていた今ホットなテーマがありました。
そのテーマは、「書く」というもの。とうのも、弊社の『1日3分 願いが叶う超感謝ノート――「運」と「お金」を引き寄せるすごい習慣』(心理カウンセラーmasa)が、ありがたいことに現在台湾で好調に売れているようで、シンプルに「書く」という行動で人生が好転する、というのが台湾の読者に刺さったようです。
ヒットの理由はほかにもいろいろあるとは思いますが、本書を皮切りに今台湾では、書き込み式などのワークブックスタイルの書籍が広く求められているのだそう。
2.みんな心が疲れ気味——マインドやメンタルヘルスは超定番!
続いてこちらは定番ですが、自己啓発本や心理本は商談中もたくさんリクエストがありました。日本人もそうですが、やはり台湾人もみんなSNS疲れ、しているようです。とくに若い世代では「人間本来の生き方に立ち戻ってみる」といった考え方が求められているとのこと。
マインドフルネスやメンタルヘルスのジャンルでは、今回はこの2冊のリクエストがかなり多くありました。商談したほぼすべての出版社が興味を示してくれた、なかなか好感触の2冊です。
また似たようなところで、心理系の書籍の売れ行きも良さそうでしたが、メンタルヘルスのためだけでなく、ビジネスに関する内容が心理学的な見解から述べられている書籍にもかなり好印象を持ってくれているようでした。
たとえば、次の「心理学」×「営業」のような、ビジネス書ジャンルについて、現地では例年より興味関心が高まっているようです。
3.10代から投資に興味あり!——永遠のテーマ「お金」問題
最後に、こちらも定番ではありますが、お金(投資)ジャンルです。驚いたのは、台湾では10代の学生も投資に興味関心を持つことが多く、お金の問題を早々に自分事として捉えていると言うのです。したがって、こちらのテーマも良く売れるジャンルの一つ。
ただ、国境を超えればお金の増やし方も違うもの。なかなか海外に売り出せるような書籍がないのが残念なところです。万国共通で「お金」をテーマに訴求できる1冊があれば良いなと思った次第です。
人間関係では一切悩まない!——人付き合いはあっさりしている台湾人
余談ですが、今回商談用に持っていた4、50冊のなかで、わかりやすくウケなかったテーマがあります。
そのテーマはズバリ、「人間関係」です。
どの出版社さんにも、シブい顔をされました(笑)。というのも、「台湾人は人間関係では悩まない」、非常にシンプルな理由でした。それはビジネスの場でも同様で、上司、部下の関係性でも悩んだりしないと言うのです。そりが合わない嫌な上司がいたら、部下はすぐにその会社を辞めれば良いだけ、というとってもあっさり(スッパリ?)した考え方の台湾人。
そもそも、年齢に関係なくお互いに対等な関係性でコミュニケーションがとられていくことが多いと言います。日本の「敬語」のように、目上の人に対する明らかな言葉の表現方法もないからなのでしょう。会社の同僚と仕事帰りに飲みに行く、という文化もないようです。仕事とプライベートの人間関係はしっかり分けているようですね。
また、意地悪をしてくる嫌な上司がいたとします。その場合、自分が悩むよりも先に、そんな人を雇っている組織、会社が悪いという考え方に至ると言います。なるほど、そういう考え方もあったか、と納得しました(笑)。
台湾の書店事情がスゴイことになっていた!
最後に、台湾の書店事情についても触れたいと思います。今回の出張では2か所の誠品書店(台湾の大手書店)に行ってきました。
開放感のあるとても充実した書店です。日本のよくある書店と違うのは、棚差し(本を背表紙を見せるかたちで本棚に差し並べること)がほとんどないこと。広くスペースを使って、ほとんどの書籍を平積み展開しています。本を探しに来た人もこれなら目当てのモノを見つけやすいですね。なによりも、1冊1冊のカバーがしっかり目に入ります。印象に残りやすいですし、目に留まる、惹かれる書籍と出会いやすくなると思います。
本に張り付けてあったシール、「79折」って何?
書籍を見て回っていると、あることに気がつきました。書店に並んでいる書籍のほぼ全ての単行本に、こんなシールが貼ってありました。
この表示の意味を現地の人に尋ねてみたところ、このシールが貼られるのは、書店で売られている書籍だけだと言います。オンライン書店などのネットで購入する際には貼られていません。
そしてこの表示のとおり、その書籍はきっちり「79折」でまとめられているということ(1折何ページなのかは聞きそびれましたが)。つまり何が言いたいのかというと、出版社は通常よりもページ数を減らして書店に卸していて、書店は表示されている定価よりも2~3割引きしてお客さんに売っていると言うのです! びっくり!!
どうしてこのような仕組みになったのか、現地では詳しいことはわかりませんでしたが、単純に考えるとネットで本を買うよりも、リアル書店に行って本を買うほうが安く買える! ということです。
もちろんその分、出版社も書店も売り上げは通常よりも少なくなりますが、こうした仕掛けをつくることで、少しでも書店に足を運んでもらうきっかけを作っているのかもしれません。業界全体でいろいろと試行錯誤しているようです。とても面白い試みだと思いました。
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さて、5日間の台北出張で得た発見はいかがでしたでしょうか。もちろん一般のお客さんでもブックフェアに足を運ぶことができますので、ぜひ来年の台北ブックフェア2025に参戦してみてはいかがでしょうか? 日本でも出版業界が盛り上がっていきますように……。
最後までお読みいただきありがとうございました。