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「D2Cって、これまでの通販と何が違うの?」に答える。

こんにちは。
フォレスト出版編集部の寺崎です。

内閣府が今週月曜日(2月15日)に発表した2020年の日本の国内総生産(GDP)は、前年比4.8%減となり、リーマン・ショックの2009年以来、じつに11年ぶりのマイナス成長となりました。

GDPの統計がある1955年以降では、2009年に次ぐ2番目の落ち込み幅だそうです。

すでに昨年9月の段階では、全産業の売上高が17.7%減 11年ぶりの落ち込みとなっています。

原因はいうまでもなく「新型コロナ」。

旅行業界、飲食業の倒産が目立ちますが、身近にひいきにしていた飲食店が閉店したニュースを耳にして心を痛めた人も多いのではないでしょうか。

以前ご紹介した下記リンクのランチ店も1店舗は閉店、もうひとつは「しばらく営業休止」の張り紙が貼られたままになっています・・・涙

ところが一方ではこんな景気のいいニュースもあります。

「そりゃ、Netflixみたいなグローバル企業だからできることでしょ」
「中小企業はどこもみんなヤバいよ」

そう思うでしょうか。しかし、そう決めつけるのは早計かもしれません。

じつはコロナ禍でも猛烈に業績を伸ばしている国内業種、小さな会社がたくさんあります。

年が明けて2ヵ月弱が経ちましたが、最近、2020年を総括して、コロナ禍で明暗をわけた業種、企業を分析する記事を多く目にするようになりました。

そんななか、業績を伸ばした会社の代表例が「D2C企業」です。

最近よく聞く「D2C」とは?

D2Cとはコロナ以前に数年前から海外からやって来ていた新しい潮流で、Direct to Consumerの略。つまり、文字通り、Consumer(消費者・顧客)にダイレクトに商品を売るというビジネスモデルです。

アパレルを例に取ると、下記のような違いがあります。

【従来の売り方】
メーカー・ブランド
↓      ↓
卸業者 公式ECサイト

百貨店やセレクトショップ

お客さん
【D2Cの売り方】
メーカー・ブランド

公式ECサイト

お客さん

D2Cの場合はSNSによる交流が欠かせないので、正確に表すと下のような感じでしょうか。

【SNSを用いたD2Cの売り方】
メーカー・ブランド
↓       ↓
公式ECサイト  SNS
↓       ↓
お客さん   お客さん

ここ数年どんどん伸びてきているのがEC(電子商取引)の取引額です。2020年7月に発表された経済産業省のデータによると、市場規模は19.4兆円に達します。

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今後、この数字は伸び続けるでしょう。この流れを一気に加速させたのがコロナでした。そして、この流れに乗って驚異的に売上を伸ばしていったのがD2C企業だったというわけです。

売上が1年で19倍になったD2Cブランドも!

「D2Cはいままでの通販と何が違うの?」
「これまでの製造直販と同じでしょ?」

D2Cを巡って必ず生じるこの疑問。

たしかに、よくよく考えてみると、どこが違うのかよくわからないんですよね。そこで、そんな素朴な疑問にも答えつつ、日本国内のD2C事例をふんだんに取材して盛り込んだ解説書が昨日Amazonより発売開始となりました。

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ひとまず、本書まえがきをご覧ください。

『D2Cの教科書』まえがき

「最近、D2Cって言葉をよく聞くけど、これまでの通販と何が違うの?」
「D2Cってブランディングとかの難しい話でしょ」
「製造直販という言葉を英語で言い換えただけ」

 本書はこのように考えるあなたに「D2Cとは誰にでもできる〝新しい売り方〞だ」とご理解いただくための本です。
 話題のD2C(Direct to Consumer)という新しい売り方は今も変化をし続けています。D2Cモデルで語られる「ネット通販への応用」は第一波にすぎません。D2Cはすべての経済活動のモデルになると言われています。
 本書はネット通販を主題としていますが、ぜひご自身の業界の話として読んでみてください。
 ところで、近年オープンするネットストアに、ある傾向が顕著になってきました。それは「売れるストアは、オープン前から売り切れている」ことです。
 これらのストアも表面だけ見ると、「あらかじめインフルエンサーが紹介したから」「ネットで話題になったから」と考えられがちですが、ネットで非常に大きく話題になった商品でも、全く売れないケースは数多く存在します。
 そんななか、成功する企業群に名前が付きました。
 それが「D2C」です。
 ところが、D2Cは英単語での認知が確定したため、「自分たちでもすぐできる簡単な方法」ではなく、「どこか小難しいブランディング方法」「(一部では)そもそも意味がないバズワード」として考えられてきました。
 そこで第1章では、多くのD2C企業を一歩抜け、新たな体験や価値を創出し続ける話題のブランド4社にロングインタビューを行い、成功のポイントはどこにあったのか、非常に濃い内容の取材を行いました。
 彼らが培った生々しい現場の経験と知恵の数々は、本書の目玉といえます。
 第2章以降では、そんなD2Cをひも解き、これまでの売り方と何が違うのかという点から始まり、強いD2Cブランドの具体的な作り方まで解説をしていきます。
 D2Cは新しい売り方ですが、全てが目新しいものではありません。多くの施策は昔からあるものの改善や、それをインターネット上で実現したものが多いです。
 ところが、なぜいま改めてD2C的な売り方が浸透しているのでしょうか。
 それは「消費者の動向・志向」が変わったからです。
 新しい売り方が浸透すると同時に、アパレル業界など、これまでと同じ売り方をしている企業が苦境に立たされる時代が到来しました。
 筆者は以前からD2C企業と触れ合う機会が多かったのですが、どうしても「通販に限った話ではないか」という固定概念が抜けませんでした。
 ところが、本書の執筆や取材を通してわかってきたことがあります。
 それは「世の中のすべてのビジネスモデルのD2C化が進む」ということです。
 本書を手に取っていただき、一人でも多くの方がD2Cの全貌を捉え、ご自身のビジネスに役立てていただければ幸いです。

これまでの通販とD2Cはどこが違うの?

記事タイトルにも掲げたこの問題について、本書からひもといてみましょう。

■「通販の言い方が変わっただけ」と思っていませんか?
 2020年、全世界に影響を与えたコロナ禍により、多くの人が直接店舗に買い物に行きづらくなりました。インターネットを使い、パソコンやスマートフォンで商品を購入するネット通販が世界的にふたたび注目を集めています。
 その中でも特に、新規のアパレル企業やコスメ、健康食品など、ネット販売に強い商品で、この本のタイトルでもある〝D2C〞という言葉を冠にしたブランドが注目を浴びています。
 D2Cとは、直訳すると「製造直販」を意味します。
「製造直販」というと、商店街のパン屋さんから、テレビCMで販売している通販も製造直販です。では、なぜいまさら英語に言い換えただけのキーワードが流行っているのでしょうか?

 私はある調査をしました。
 D2Cブランドの経営者が集まる会合で、改めて「D2Cって何ですか?」と質問をしました。
 するとこんな答えが返ってきました。

「『通販』の言い換えでしょ?」
「ブランディングやマーケティング用語ですよね」
「海外で流行ってる売り方かな」
「直販以上の意味はなく、響きがカッコいいから使ってます」

このように、さまざまな回答が返ってきました。

■D2Cは単なるバズワードか?
 こうした専門用語っぽい、あまり深い意味はなく、定義も用法も曖昧な言葉を「バズワード」といいます。
「D2Cは単なるバズワードである」といえば、うなずく人もいるでしょう。
 バズワードは半年もすれば消えていきます。
 しかし、D2Cという言葉は生き続けています。
 そこには明確な理由があります。
「既存の製造直販とは違うビジネスを実行する会社があり、彼らが稼ぎ続けている」からです。
 言い換えると、こういうことではないでしょうか。
「ものすごいチャンスと儲け方があるのに、カタカナ言葉が先行していて、やるべきことが多くの人の腹に落ちない」
 これが 日本国内のD2Cにおける現状といえるでしょう。
 さて、「ただの直販」と違うこのビジネスモデルの本質とは何でしょう。
 世界を変えていくとまでいわれるD2Cの正体、それをみなさんと共有することが本書を解き明かす最大のポイントとなります。

■D 2 C と既存のビジネスの違いを明らかにする
 D2Cを「製造直販」と直訳したり、意味がわからないまま使っている限り、理解がずれ続けます。社内のECチームが同じ認識で動かなければ、正しい結果は出るはずもないです。
 しかし、残念なことにD2Cという言葉は「独り歩き」をしている部分も多く見受けられます。この答えを出すために、既存の物販およびネット通販サービスと、D2C型サービスを比較してみました。
 消費者の立場で考えると、どの商品が欲しくなりますか?
 丁寧な接客で上質なトレンドの商品を買いたいなら確かに百貨店かもしれません。

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 とにかく買ってみたいならネット通販も便利です。
 ところが、購入をゴールとはせず、顧客が商品を使うことで生活が豊かになることをゴールとし、徹底的に顧客のことを考えて作られた商品であればどうでしょうか。
 D2Cブランドには、百貨店の冠やネット通販サイトほどのネームバリューはありませんが、それだけで信頼が足りないとしてしまうのはあまりにもったいない判断です。
 D2Cブランドは国内生産であることも多く、継続的に購入したくなる魅力的な商品が多いのです。

なるほど。でも、いまいちまだ違いが明確ではない気がします。もう少し読み進んでみましょう。

■D 2 C の正体とは?
 さて、では、「D2Cの正体」を明かしましょう。
 D2Cの柱は、次の3つの要素です。

①デジタル主体な製造直販
②PR・ブランディング・コミュニティ重視
③体験を押し上げる製品


 この3つに共通しているのが、「直接」という点です。①デジタルを活用して直接訴求する、②直接PRしブランディングすることでコミュニティを築く、③直接のコミュニケーションで得たデータやフィードバックを製品に反映することで価値を高める。
 つまり、D2Cと既存の販売方法の大きな違いは「〝直接の施策〞で消費者の体験(User experience=UX)を押し上げること」。ここにD2Cとこれまでの製造直販の違いがあります。
 売り手にとって最も大事なのは、卸問屋でも、マーケッターでも、広告代理店でも、ショッピングモールでもなく、「お客様の心地よい体験」が最優先なのであり、それがすべてと考えるのがD2Cです。
 つまり、消費者の体感できる品質・サービスの向上に徹底的に注力してモノを売るのがD2Cなのです。

■あなたは「クルマ」を売るのか、「幸せ」を売るのか
 商品の所有を価値とする消費を「モノ消費」、商品を購入したことで得られる体験を価値とする消費を「コト消費」といいます。
 たとえば、自動車を例に挙げてみます。
 自動車はハードウエアの機能が重要です。
 一部のマニアにとっては、機能がすべてかもしれません。
 しかし、日常的に使う人にとっては、ハードウエアの機能ばかりが最優先されることはありません。デザイン、乗り心地、体感、すべてがトータルに顧客満足につながります。

「このワゴンを買えば、家族5人でキャンプに出かけられて、夜にはルーフから星空をみんなで眺めることができる」


 このような「体験そのもの」が提案できるかどうかが、今後の消費のトレンドです。
 近年「コト消費」が着目されている理由は消費の成熟化にあります。
「モノはすべて揃っており、市場にもあふれている」が現状です。
 その中で「うちの商品のほうが安い」「うちの商品性能のほうがよい」では、競争優位性は下がる一方となるでしょう。
「コト」を最重要視して展開するD2Cブランドは「これからの世代のスタンダード」といえます。

■「直販×デジタル×体験」の幸福な関係
 ただし、矛盾するようですが、D2Cは「これをやればD2C」という明確な答えがある言葉ではありません。「D2C的」「D2Cの文脈」「D2Cなやり方で」といった使われ方をすることが多いです。
 というのも、取り扱う商品によって、消費者に提供する「体験」の種類が異なるからです。しかしながら、前述のようにD2Cには大きく次の3つの要素が関連します。

①デジタル主体の製造直販
②PR・ブランディング・コミュニティ重視
③体験を押し上げる商品

 これら3つに該当する企業がD2C企業と呼ばれます。

■すべての消費活動は「D2C化」していく
 さて、ここまでお読みいただいて、まだ「自分には関係がない」「自社の商品はD2Cになりえない」とお考えでしょうか?
 しかし、みなさんも薄々感じていることでしょう。D2C (体験至上主義)はバズワードではなく、もはや世の中のすべてを取り込もうとしています。
 広義のD2C企業といえるスターバックスやユニクロなしの暮らしには、私たちはもう戻れません。
 たとえば、企業の人材採用においても、以前は「給料」「福利厚生」などがビッグキーワードでしたが、今は「入社後のあなた」などの文言を前面に打ち出す企業が増えてきています。
 中古市場では、以前はリサイクルショップを経由していましたが、最近はアプリを使い、ユーザー同士がコミュニケーションを取りながら直接売買するのが当たり前になりました。
 すべては「体験」「コト売り」の時代なのです。
 消費活動を中心に、現在では世の中の全てのジャンルでD2C化が進んでいます。
 現在、まだまだこの変革のスタート地点です。
 本書では、顧客をつかんで離さない「D2C」の正体を明らかにした上で、この新しいビジネスモデルを自身のビジネスにどう腹落ちさせていくか、そのノウハウをお伝えします。

国内事例から明らかにするD2Cの実際

これまでのD2Cの解説書は、D2Cという概念そのものが海外発だったこともあって、海外(とくに米国)の事例を取り上げていることが多く、いまいち実践的ではなく、自分のビジネスに活かすことができませんでした。

「そんなジレンマを解決したい!」と思い、企画して出版するのが、このたびの新刊『顧客をつかんで離さないD2Cの教科書』です。

本書の目玉は「第1章【ロングインタビュー】躍進するD2Cブランドの舞台裏」。ここだけの話、いますぐ「盗めるノウハウ」が満載です。

今回、数あるD2Cの国内成功事例のなかから、話題の4つのブランドを選び、徹底取材しました。

小柄女子の救世主「COHINA」
台湾発のライフスタイル提案「Daylily」
ファンの熱狂が支える筋トレ界のブランド「VALX」
菌に着目した急成長ブランド「KINS」

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多忙な本業の合間にご対応いただき、取材をしてみた感想は「百聞は一見にしかず!」でした。

D2Cについての本を読んだり、関連記事で得た知識を頭に入れて、わかったつもりになっていましたが、4社の取材を通してようやく「なるほど、D2Cって、こういうことか!」と腹落ちしたのです。

わたしたちのライフスタイルはどう変わったか?

コロナで「消費スタイル」「モノの売り方」が変わった。

このことはよく言われているし、じゃあ出版社の人間としては今後どうしたらいいんだろう?と、そんなことばかりを考えていたのが2020年でした。

コロナ前からあった大きな傾向がコロナで加速したのが今の世界です。

翻って、自分の消費スタイルがどう変わったか。

でかける回数が減ったので、これまでは値段が高くて手が出しにくかったブランド品を厳選して買う傾向が顕著になりました。昨夏はFR2とヨージヤマモトのTシャツの交互ローテーションでした。

逆に大量生産&大量消費を前提したモノ全般をあまり買わなくなったのも事実です。「無駄を嫌う傾向」が生活全般に強く根づいたような気がします。

最近流行りの定期的なライブ配信による商品の売り方なんかもまさにD2Cです。テレビに出ていた芸能人がYouTubeを始めて、直接視聴者とコミュニケーションを取り始めたのも、すごくD2C的です。

それこそ、われわれのような出版社もこれまでのコンテンツの届け方ではなく、読者と直接コミュニケーションを取りながら、コンテンツをダイレクトに届けるべき時代なのかもしれません。

このように「これってまさにD2Cじゃん」というものがこれからはどんどん増えていくのではないでしょうか。いままさに進化の途中にある「D2C=Direct to Consumer」は今後とも要チェックです。


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