見出し画像

【フォレスト出版チャンネル#148】出版の裏側|出版業界の専門用語(後編)

このnoteは2021年6月9日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

一般的に呼ぶ「表紙」は、厳密には「表紙」ではない!?

今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める今井佐和です。本日も昨日に引き続き、森上さんと寺崎さんに「出版業界の専門用語」というテーマで、本文以外のいろいろな専門用語についてお聞きしていきたいと思います。森上さん、寺崎さん、よろしくお願いします。

▼「出版業界の専門用語」(前編)は、こちらから読めます。

森上・寺崎:よろしくお願いします。

今井:さっそくなんですけども、「カバー」「ジャケット」「帯」「表紙」とありますが、これはどんなものでしょうか。

寺崎:カバーは本に巻いてあるやつですね。

今井:取れる部分ですね。

寺崎:そうそうそう。

今井:カラーでテカテカしていて。テカテカしていないこともありますけど。

寺崎:そうですね。その上に帯が巻かれている、っていうね。

森上:帯っていうのは、下のところの腰巻きみたいな。

今井:だから帯なんですね。

森上:そうです。語源はそうだよね。腰巻きみたいだから。

寺崎:そうだと思う。で、欧米ではカバーのことをジャケットって言うらしいね。

今井:ジャケ買いっていうのは、そのジャケットのことですかね?

森上:そうかもしれないですね。で、表紙っていうのは、中の厚紙みたいなところ。あれが表紙で、書店では表紙にカバーが付いたものが置いてあるって感じですね。

今井:表紙って、書店で並んでいるときに、一番最初に見える顔の部分だと思っていたんですけど、あれはカバーの表紙ってことなんですか?

森上:それはね、後で説明しようと思ったんですが話が出たので言っちゃうと、あれを「表
1」(ヒョウイチ)って言うんですよ。一番表(おもて)のところを。

今井:表1。はい。

森上:タイトルとか、著者名が入っているところね。で、「表2」(ヒョウニ)っていうところがカバーをめくったところ。表1の裏ページを表2って言います。で、先に「表4」(ヒョウヨン)を説明すると、表4は真裏。一番裏のバーコードとか入っているところ。で、その表4の裏面が「表3」(ヒョウサン)っていう感じですかね。

今井:ちなみにカバーを外すと、また厚紙の表紙があるじゃないですか。ここのデザインがまた変わっていたりすることもあると思うんですけど、ここの名前と、カバーの表紙の名前と違いってあったりしますか?

森上:カバーの表1、表紙の表1。

今井:あ! そういう言い方をするんですね!

寺崎:厳密に言うとね。ただ、俗的には書店で見る表1を「表紙」と言っていいと思います。言葉としてはそういう使い方もします。

森上:だから、印刷所と話す場合は、どっちに赤字が入っているかわからない場合があるじゃないですか。カバーの表1に入っていなくて、表紙の表1に赤字が入った場合は、やっぱり言い方を変えないと伝わらないですよね。「表紙に赤字が入った」って言われても、「本当の表紙のほうですか? カバーの表1ですか?」ってわからなくなっちゃうので、そこは専門用語としては使い分けています。

今井:時々コミックスとかのカバーの表紙をめくると、4コマ漫画があったりとかして楽しみだったりしますよね。

森上:そこにこだわっている本もありますよね。

今井:ありがとうございます。続いて、読み方が間違えているかもしれないんですけど、「付物(つきもの)」。付録の「付」という字に物事の「物」ですね。これは「つきもの」で読み方は合っていますか?

森上: 読み方は合っていますね。付物は「カバー」「帯」と、昔だったら「スリップ」っていうのが入っていたんですけど。

今井:スリップ。

森上:それ、全部を付物って言いますね。

今井:付属品みたいなイメージですか?

森上:まあ、そうですね。

寺崎:付き物として「本扉」が入る場合もあるよね。

森上:昨日話した「本扉」って、こだわって本文と違う用紙でつくる場合があるんですよ。

今井:ちょっと分厚い、いい紙だったりするときがありますよね。

森上:そうそう。そういうときは、それが付物になるんですよ。

寺崎:「別丁扉」。印刷が違ったり。

今井:一気に印刷できないんですね。別物ですもんね。

森上:それを総称して付物と言います。

今井:はい。続いての用語が「ソフトカバー・並製」「ハードカバー・上製」とありますが、これはなんのことでしょう?

森上:これは言い方の問題ですよね。一般的には「ソフトカバー」って柔らかいカバーですよね。で、ハードカバーは硬い紙のカバーですよね。それを印刷所とか業界内では、ソフトカバーのことを「並製」と言うんですよ。製は製本の製。「上製」は上下の上に製本の製で上製。上製はハードカバーのことっていう感じですよね。

寺崎:上製のほうが上等なんですよ。

今井:上等だから上製なんですね。

寺崎:わからないけど……。まあ、上製は金がかかるよね。

今井:硬いですもんね。

森上:立派ですよ。ビジネス書はほとんど並製か。

寺崎:9割方の本は並製ですね。もっと、かな。

森上:そうですね。

今井:確かにビジネス書では見ないですよね。

森上:文芸書では逆にほとんど上製じゃないかな。

寺崎:経営書とかね。ピーター・ドラッカーとか、そういうのは上製で結構ありますよね。

今井:あと、なんとか事典みたいな。分厚くなってくると、表紙は硬めだったりとかするイメージがあります。続いて「束幅(つかはば)」でしょうか? 束という字に幅という字を書いて。

寺崎:これは本の厚み。本文の用紙の厚み。

今井:カバーを除く厚みですか?

寺崎:除く。

森上:背表紙の幅ですね。ざっくり言うと。

寺崎:そうだね。

森上:あそこの背があるじゃないですか。背表紙の幅のことを「束幅」と言うよね。だから、薄い本だと細くなるし、本文の用紙の紙の厚さもいろいろと種類があるので厚いものだと、どんどん束幅は大きくなる、っていう感じですかね。

寺崎:以前のどこかの回でも言ったのですが、ページ数は少ないんだけど、束幅を出したいっていうときは、軽くて厚い紙で束幅を出す。

今井:そして、読むとたくさん読んだ気になって、ハッピーっていうことですね。

寺崎:そうですね。

森上:定価もある程度ちゃんと付けれるし。

今井:はい(笑)。束幅でした。続いて「判型、四六判、A5判など」とありますが。読み方違うかもしれませんが、これは?

森上:これは一言で言うと、サイズですね。本のサイズ。

今井:本のサイズは、決まりがあるんですか?

森上:一般の本はだいたい、四六(しろく)判って言って。

寺崎:「よんろくばん」ではなくて、「しろくばん」って言うんです。

今井:「しろくばん」なんですね!

森上:そうですね。で、判という字は、たまに業界の人でも間違えている人がいるんですけど、判子の「判」ですよね。

寺崎:評判の「判」。

森上:そう。それで四六判なんですけど。四六判って言うのは、横が128ミリ、縦が188ミリっていうのが基本のサイズです。

寺崎:四六判が一番紙の無駄がないんですよ。

今井:そうなんですか!

寺崎:そう。だから、業界で一番多いんですよ。

今井:エコなんですね。四六判は。フォレストで出している本も四六判が多いんですか?

森上:そうですね。四六判と、あとはA5判って言うのがありますね。

今井:A5判。四六判より大き目なのが、A5判ですか?

森上:そうですね。やっぱり図版とか写真とか多く入るものは、結構A5判で(つくります)。

寺崎:あと横組みの本とかね。A5判で出したり。

今井:横組み?

寺崎:縦組みじゃなくて横で。

今井:あー! 左から読んでいく。

寺崎:そうそうそうそう。横書きでアルファベットがいっぱい出てくるとか、数字がいっぱい出てくるとかって言う場合には、横組みにしてA5判っていうパターン。

今井:確かに、縦書きでアルファベットは読みづらすぎますもんね。

森上:そうですね。あと判型で言うと、もう1つうちで出しているものが「新書判」って言うものがありますね。

今井:小さめの細長いやつですよね。

森上:そうですね。

今井:それは数字を使わず、新書判と言うんですね。

森上:そうですね。これもサイズが基本的に決まっているはずですね。

「重版出来(じゅうはんしゅったい)」はみんなをハッピーにする

今井:はい。ありがとうございます。そして、さっき私は読み方を完全に間違えてしまったんですけど、最初に皆さんに間違えた読み方で伝えてしまうと、その印象が強くなってしまうと思うので、正しい読み方で紹介したいんですけど、「重版出来(じゅうはんしゅったい)」。重い軽いの「重」に、出版の「版」、出来る出来ないの「出来」と書いて重版出来。ちなみに、私はこれを「ちょうはんでき」と読んでいました(笑)。

寺崎:丁半賭博みたいだね(笑)。

森上:丁か半か(笑)。

今井:はい(笑)。この重版出来とは、なんでしょうか?

寺崎:これは、すごくいい響きだよね。

森上:もうみんながハッピーになる言葉です。

寺崎:「じゅうはんでき」とも読むらしいんですけど、あえて重々しく「じゅうはんしゅったいです!」って言うみたい。

森上:言ってるの、聞いたことないけどね(笑)。

寺崎:あんまり聞いたことないね(笑)。

森上:「重版決まった」ってだいたい言っちゃうんですけど。

寺崎:でも、メールで使ったりしない? メールであえて著者に「重版出来しました」って。

今井:「しゅったい」ってちょっと言ってみたいですね。

森上:(笑)。

寺崎:ドラマとか映画になったマンガありますよね。

今井:はい! あれもずっと心の中で「ちょうはんでき」って呼んでましたね。

寺崎:それ、誰かに指摘されませんでした?

今井:心の中で言うだけだから、誰にも指摘されないんですよ。

寺崎:(笑)。

今井:ドラマとか本を見るたびに「ちょうはんでき」って、心の中で間違えたまま読んでいたので(笑)。じゅうはんしゅったい!

森上:これはもう、本当に関係者全員が皆ハッピーですね。印刷所の方まで全員ハッピーだよね。いい言葉ですね。

今井:いい言葉。そして、「初版(しょはん)」「2刷」「3刷」とありますが。

寺崎:これもいい言葉ですね。うれしい響き。2刷(にずり)、3刷(さんずり)、4刷(よんずり)、5刷(ごずり)……。

今井:ベストセラーな感じですね。

森上:最高ですね。で、だいたい「1刷」とは言わないですね。「初版」って言いますね。初めての「初」に活版の「版」ですね。

今井:確かに1刷って言わないですね。

森上:そうですね。初版って言いますね。まあ、2刷、3刷、4刷、それを目指すのが我々の仕事っていう感じですよね。

寺崎:それを「2さつ、3さつ」って呼んでいる著者さんの間違えが何回かあって。

森上:指摘しにくいんだよなー(笑)。

寺崎:これ「2刷(にずり)って読むんですけど……」って言いたいんだけど、間違えを正せないでいる(笑)。

森上:(笑)。そこはね、言ってあげてもいいかなって思うんだけど、言えないんだよね。

寺崎:ウイスキーの「白州」を「しらすストレートで」って(笑)。

今井:魚になっちゃう(笑)。

寺崎:それも間違えを指摘できないんだよね。「ろんごとさんばん」とかね。

森上:「ろんごとさんばん」って読む人いるんだ!

寺崎:たまにそういう間違えがあります。

今井:「ろんごとさんばん」がわからないです……。

森上:「論語と算盤(そろばん)」。渋沢栄一のね。

今井:あー!

寺崎:「さんばん」で覚えちゃう人っているんですよね。自分もそういう間違え、たぶんあると思うんだけど。

森上:あるよね。

今井:でも、自信を持って「さんばん」って言われちゃうと、それを「そろばんだよ」とは突っ込みづらいところがありますよね。

森上:そうですよね。ちょっと人に何か間違えを伝えるっていう違うテーマになってきちゃってるけど(笑)。でも、これは「2刷(にずり)、3刷(さんずり)」って読みますよね。「さつ」とは読まないですよね。

今井:はい。重版出来に続き、うれしい用語、「2刷、3刷、4刷、5刷」ということでした。ありがとうございました。

こんなマニアックな放送、聴いてくれる人がいるのか問題

寺崎:いやー。昨日、今日とこんな話をしてきたんですけども、森上さん、これってタメになったんですか?

森上:(笑)。いやー、これを最後までお聞きいただいている方って相当ありがたいですよね。

寺崎:業界用語なんてそんなに皆知りたくないでしょ。知りたいのかな?

森上:何の役にも立たない可能性ありますからね。

寺崎:申し訳ないですね。一応、(このチャンネルのコンセプトは)「1放送で1学び」っていうコンセプトなんですけど。

今井:個人的には重版出来っていうので、いつかどこかで「ちょうはんでき」って言っちゃって、「違うよ」っていう突っ込みを避けられたというメリットがありました。

寺崎:「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」みたいな。

今井:そんな感じです。

森上:いやー、役に立つのか、不安な2回の放送でしたね。

今井:個人的にはマニアックなお話は好きなので、すごく印象的でした。

寺崎:それは、ありがとうございます。

森上:ありがとうございます。

今井:皆さんももし何か知りたい用語とかありましたら、どんどんコメントしていただけたらなと思います。本日は、編集部の森上さん、寺崎さんにお越しいただきました。どうもありがとうございました。

森上・寺崎:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?