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8月新刊のタイトル、決まりました。
最近、著者とやりとりして進めていた企画とほぼ丸被りの新刊が他社から先んじて出されて、ちょっと落ち込んでいるフォレスト出版編集部の寺崎です。
気を取り直して、がんがります!
というわけで、今日は営業部交えたタイトル会議がありました。対象は8月の新刊。私が担当するのはトレイシー・クーパー博士『Thrill: The High Sensation Seeking Highly Sensitive Person』の日本語訳です。私自身、翻訳ものはあまり手を付けないのですが(あまり得意ではないので…)、本案件は退職した前任者の引継ぎのため、責任をもって進めることに。
「繊細さん」という呼称でいちやく有名になった(?)「HSP(Highly Sensitive Person)=繊細すぎる人たち」ですが、HSPには「HSS型HSP」というタイプがあります。「一見してHSPには見えないが、実はHSPである人」というのがざっくりした区分で、「かくれ繊細さん」と言える存在です。
英語で正確に表記すると「High Sensation Seeking Highly Sensitive Person」。HSS型HSPと呼ばれます。
本書はこのHSS型HSP研究の第一人者であるトレイシー・クーパー博士の代表作であり、満を持しての刊行というもの。
日本語版刊行にあたっては『その生きづらさ、「かくれ繊細さん」かもしれません』(フォレスト出版)の著者・時田ひさこさん監訳、十勝むつみのクリニック院長の長沼睦雄先生を監修に迎えました。
日本語に翻訳して400ページほどある『Thrill: The High Sensation Seeking Highly Sensitive Person』ですが、いわば「HSS型HSPの取扱説明書」といった内容です。もっともキモとなるのは、HSS型HSPの特徴として挙げられる「刺激追求性」という点です。
かくれ繊細さんは、繊細なのに、刺激やスリルを求めるのです。
ここが不思議なものですね。
かくれ繊細さん(HSS型HSP)が持つ、この「刺激追求性」というパーソナリティ特性は、アメリカの心理学者マーヴィン・ザッカーマンの研究により確立されました。
原題の「Thrill」はここからきています。
「1章 パーソナリティ特性とは」から始まり、「2章 HSS型HSPの子ども時代」「3章 仕事」「4章 対人関係」「5章 セルフケア」「6章 危険行動とHSS型HSP」「7章 HSS型HSPが持つ内なる創造力」「8章 コミュニティに生きる方法」と、かくれ繊細さんに関することが、ほぼほぼ全網羅されています。
相当に盛りだくさんなコンテンツゆえに、ズバッと言い当てるタイトルを探す作業が困難なように思いきや、本書の本丸である「刺激追求性」という点を伝えることができればよいので、実はそんなに難しくないかもしれません。
で、考えました。原題が「Thrill」というわかりやすいタイトルだったのも功を奏しました。
あれこれ考えたタイトル案からいくつか絞ったのがこちら。
『HSS型HSPの教科書』
『かくれ繊細さんの取扱教科書』
『刺激に敏感なのに どうして刺激を求めるのか?』
『傷つきやすいけど 刺激を求める人たち』
『社交的なのに いつも傷つく人たち』
『外交的なのに いちいち傷つくあなたへ』
ちょうど、大学4年生のインターン・Mさんにゲラを素読みしてもらっている最中だったので、「あ、そうだ。Mさんに振ってみよう」と思い、「明日タイトル会議だから、朝の9時までにタイトルを4案考えてきて!」と無茶ぶりしてみました。
翌朝、出てきたのがこれ。
【Mさんのタイトル案】
『繊細な冒険家の「取り扱い説明書」』
『刺激を求めるHSPたち――矛盾を抱える人をどう支えるか』
『心配性なのにスリルが欲しい人が読む本』
『傷つきやすいのに刺激が欲しいのはなぜ?』
なかなかイイですね!とくに何も伝えてなかったのに、ちゃんと方向性の異なる4案を出してくるあたり、優等生ですね。
そして、営業部交えたタイトル会議開幕・・・。
まず、真っ先に方針として決まったのが「取扱説明書の方向性は違うのではないか」という点です。HSS型HSP当事者もしくは周囲の方が読者として想定されるからです。
「かくれ繊細さん」というワードもやめようとなりました。理由としては、ハードコアな翻訳書にフィットしないこと、さらには日本語としてそこまでポピュラーではないからです。
【絞ったタイトル案】
『刺激に敏感なのに どうして刺激を求めるのか?』
『傷つきやすいけど 刺激を求める人たち』
『社交的なのに いつも傷つく人たち』
『外交的なのに いちいち傷つくあなたへ』
『刺激を求めるHSPたち――矛盾を抱える人をどう支えるか』
『心配性なのにスリルが欲しい人が読む本』
『傷つきやすいのに刺激が欲しいのはなぜ?』
「たしかに原題はスリルだけど、日本語になった場合、ニュアンスが違うよね」ということで『心配性なのにスリルが欲しい人が読む本』も脱落。
「やっぱり、このなかでは『傷つきやすい』のワードに引っかかる人が多いのではないか」ということで『傷つきやすい~』のタイトルに絞られていきました。
ちなみに『繊細さんの本』というベストセラーはタイトル勝ちだと思いますが、おそらく誰もが「もしかしたら、わたしって繊細さんかも……」と思わせることができた点に勝負があったと思うんですよね。
そういう意味で「あたし、傷つきやすいけど、たしかに刺激求めちゃうかも……」は万人に刺さるだろうと予測しました。
という次第で、最終的にこのタイトルに着地。
『傷つきやすいけど 刺激を求める人たち』
じつはゲラを読んでいるうちに、私自身も「もしかして俺、かくれ繊細さんかも?」と思うことが多々ありました。それぐらい「刺激を求める」には万人性がある。
さてさて、タイトルが決まった。次にデザインをどうするかです。
「イラストを入れるか、写真で表現するか」「傷つきやすいけど刺激を求める人をイラストで表現するのは難しいかな?」「いや、写真でもむずいか」「デザイナーさんは誰にしよう?」・・・などと考えてる時間がけっこう好きです。マンダム。
トレイシー・クーパー著、時田ひさこ監訳、長沼睦雄監修『傷つきやすいけど刺激を求める人たち』は8月刊行予定です。乞うご期待。