100円からはじめる現代アート投資
フォレスト出版編集部の寺崎です。
日本は美術館も多く、アート好きな人が多いことで世界的にも知られていますが、そんななか、いま「アート投資」の世界が盛り上がり始めているそうです。
NFTの世界でも盛り上がりをみせている「現代アート」。
海外の富裕層の間では、株式や債券、不動産に加えて、「資産の20%はアートへの投資」という考えがあるとのこと。
アート投資の成功事例として有名なのが奈良美智さんの作品です。1996 年ごろは1 点わずか5000 円くらいだったものが、いまでは標準価格30 万円~70 万円。上昇率は12 年間で60 倍から140 倍です。
銀行員の黒河内俊さんが20 年以上かけて収集してきた奈良美智の作品が2013 年にサザビーズの香港のオークションにかけられ、35 点の作品が合わせて5億円以上で競り落とされたのがニュースになりました。
【大きく値上がりした作品例】
◎奈良美智「ドローイング(水彩画)」
10万円(2001年)
→1500万円(2016年)
◎村上隆「マイ・ロンサム・カウボーイ」
500万円(1998年)
→16億円(2008年)
◎ジャン・ミシェル・バスキア「無題」
1万9000ドル(1984年)
→1億1050万ドル(2017年)
ZOZO創業者の前澤友作さんがバスキアの作品を、米国作家の作品としては競売史上最高額の1億1050万ドル(約123億円)で落札したのも記憶に新しいですね。
とはいえ、まだまだ多くの日本人にとって、資産形成を考える上で、アートに投資をすること自体に抵抗があるのではないでしょうか。
ましてや「現代アート」というジャンルへの投資となると、素人にとってはわけがわからない世界。作品の良しあしもわからないため、さらにハードルが高く見えます。
ところが、ワンコインから始められる投資だったらどうでしょうか?
このたびじつは「100円からアート投資ができる」をテーマにした電子書籍をリリースしました。
もっと気軽にアート投資に参加してみたいと思う方に向けて、本書では「100円から始められる現代アート投資」の世界とその魅力について、ご紹介しています。
『100円からはじめる現代アート投資』プロローグ一部公開
「アート投資がいま、熱くなっている」
そもそもアートとは人類の美意識の更新を試みる行為であり、私たちはアート作品に触れることで、新しい視点や世界の見方に触れることができます。
近年「アート思考」という言葉がアート界隈だけでなくビジネスの世界でも聞かれるようになりましたが、アートは視覚体験だけでなく、思考的にも、さらには投資対象としても魅力的で注目すべき一つのマーケットになってきました。
実際、日本のアートマーケット (現代アートを含む) は近年盛り上がりを見せており、「日本のアート市場に関する市場調査」(共同調査:一般社団法人 アート東京、一般社団法人 芸術と創造 )によると、2017年2,437億円、2018年2,460億円、2019年2,580億円と少しずつではあるものの着実に拡大していることがわかります。
とはいえ、まだまだ多くの日本人にとって資産形成を考える上で、投資をすること自体に抵抗があるのではないでしょうか。ましてや「現代アート」というジャンルへの投資となると、よりハードルが高く見えるのかもしれません。
では、ワンコインから始められる投資だったらどうでしょう?
もっと気軽にアートに参加してみたいと思う方も多いのではないでしょうか。
本書では”100円から始められる現代アート投資”の世界とその魅力について、ご紹介していきます。
(中略)
日本人は世界一展覧会に足を運ぶと言われるほど美術ファンが多くいる国と言われています。コロナ以前の2019年のフェルメール展では68万人、ムンク展は66万人、現代美術の塩田千春展は66万人もの人々が鑑賞に訪れています。2020年、世界で最も来場者数が多かった展覧会10位までの中に4つ、日本の展覧会が入っていました。
トリエンナーレ、ビエンナーレといった国際芸術祭が地域活性化も含め、国内で年々定着してきています。また、コロナ以後、2021年においても予約制チケットで美術館に訪れる観客によって来場者数が持ち直しを見せています。2022年は規制が改善され、徐々にではありますが更に持ち直すと想定されます。
日本人はアートに対しての尊敬の念がとても強く、教養としてのアートにも関心が高く、展覧会に出かけてはグッズや図録も買って帰ります。ところが、アート作品そのものを手に入れることは、今ひとつ積極的ではありません。
一体なぜでしょうか?
絵画をはじめとする有名・著名なアート作品は高額で売買されており、中には数億から数十億、数百億円という価値が付く作品もあります。つまりアートに興味があっても大金持ちでもなければ、一般の人が気に入った作品を購入することは考えにくいというのが、今の日本の現状と捉えられているのです。
実際、アート作品を購入するアートコレクターは一部の富裕層、コレクターに限られてしまっています。もっと言えば、アートを購入する文化を育てなければ、アートマーケットが縮小し、日本で活動するアーティストがさらに厳しい環境になることを意味しています。
もっと気軽に誰もがアートに投資できる環境を作りだすことが今後の日本のアートシーンに必要なことではないでしょうか。
■コレクターや富裕層だけのアートマーケットに風穴をあける
例えば、みなさんもよく目にする草間彌生さんの「カボチャ」。
ネットオークションで手に入れることもできますが、値段も1点ずつ異なるため、ある程度の知識と経験がなければ相場がわかりません。また作品が贋作ではなく本物なのか不安を覚える方もいるでしょう。ギャラリーが出展している百貨店の展示会などは、安心ではありますが、価格が数十万〜数百万単位で、高額な印象があります。
画廊、ギャラリーに至っては足を踏み入れるのも勇気が入ります。実際、私も今でこそギャラリーの方々にいろいろと教えてもらっていますが、最初は「見るだけでお金を払わずに入っていいのか?」と思っていました。
また、ゴッホやバスキアなど、数十億円で落札されてニュースになるのは、世界有数のオークションハウスであるサザビーズ、フィリップス、クリスティーズなど、ごく一部のコレクターやステータスとして購入する富裕層だけに開かれたマーケットであることも事実です。
そもそも世界の現代アート市場は約8兆円規模と大きいのですが、国別で見ると、米国、イギリス、中国の3カ国で全体の80%以上を占めています。では日本はどうかというと、日本の現代アート市場は約400〜500億円程度であり、これは世界全体の0.5%程度にしか過ぎません。とはいえ日本は1億円以上の金融資産を持つ富裕層が約130万世帯以上存在し、国内のGDPは世界シェアの5%程度の規模があることから、極端にアートを購入、投資する金額が低いことが数値からも見えてくるのです。
また日本が人口減少社会を迎えており、世界と比べて経済成長が鈍化することが間違いない状況であることから、日本のアートマーケットを拡大していくには富裕層だけでなく、さまざまな世代が気軽にアートを購入する土壌を作ることから始める必要があると言えるのではないでしょうか。
■ストリートカルチャーから生まれるアートが注目を集めている
これから注目されるアーティストの作品は、アートマーケットだけではなく、かつての日本の「裏原(裏原宿)」のファッションのように、ストリートカルチャーから生まれてくるという現象もあります。
例えば、イースト・ロンドンからバンクシーが、またストリートファッションからKAWS (カウズ/1974年生/アメリカ)が生まれてきたように、アートマーケットからスタートするのではなく、カルチャーやファッションとして一定の評価を得てから登場し、いきなり高値が付くといった展開です。
福岡を拠点とするアーティスト、KYNE (キネ/日本) 。1988年生まれのKYNEは、最初はスプレー缶で写実的な人物画を描いていたのですが、日本画を学んだ後、福岡を拠点に2006年頃からグラフィティアーティストとして活動を開始します。モノクロのポートレート画をステッカーにして、あらゆる場所に貼っていく中で徐々に認知度が上がっていきました。活動拠点である福岡のストリートから頭角を現し、そしてファインアートの世界でも評価が高まるようになりました。
2018年11月に開催された国内最大のSBIアートオークションでは、予想落札価格40〜60万円に対し、500万円超えで落札されるというエポックメイキングな事態を引き起こしました。現在、国内アートマーケットでは最も注目されるアーティストの一人とも言えるでしょう。
このように日本には海外の都市にはない独自のカルチャーがあることも、アートマーケットが発展する上で大きな強みだと言えます。
今まではアーティストがアート作品を発表するためには基本的にギャラリーと契約する必要がありました。しかし、ギャラリーに認められて契約に至るまでの道のりは簡単ではなく、契約できたとしても頻繁に個展を開いてもらえるとは限りません。さらに自費で個展を開くとなれば多額の資金が必要になります。なかなか一般的にアーティスト活動だけでは生活ができないことがほとんどでした。
KAWSやバンクシーのような売れ方を見ると、ここ20〜30年でアートマーケットの仕組みやプレイヤーが変わりつつあることを示しています。
つまり、既存のオークションで高い値段が付く前に、私たちが発掘するスキームができたならば、アーティストが育っていく過程を一緒に体験しながら支えることができたならば、アートマーケットはもっと裾野が広がるのではないかと私たちは考えたのです。地下アイドルからメジャーのアイドルになっていくのを見守る「推し」に近い感覚かもしれません。もっと刺激のあるマーケットができたならば、この時代、日本発のオリジナル性が高くて面白いマーケットが生まれるかもしれないのです。
■オンラインのアートマーケットがメインストリームに
パンデミックを経て、アートマーケットは活気を取り戻していると言ってもいいと思います。2020年はさすがに売り上げが減少しましたが、2021年には再び売り上げも上昇を示しています。
サザビーズと並ぶ世界的なオークションハウスのクリスティーズでは、2021年上半期の売り上げが過去6年間で2番目だったとか。
注目すべきなのは、2021年3月にBeeple(ビープル/1981年生/アメリカ)のNFT作品「Everydays-The First 5000 Days」が約75億円という価格でオンラインセールで落札されたことです。オークションに立ち会う訳でもなく、デジタル上で判断して、その場で落札していくので、物理的な距離が解消されますから、世界中どこからでもオークションに参加できるわけです。老舗のオークションハウスも年々オンラインに力を入れてきているので、今後はオンラインマーケットがメインストリームになるでしょう。それこそメタバース上で作品を売買することも当たり前になるはずです。
■NFT技術でデジタルアートが高額で落札される!!
そもそも「NFT」とは、インターネット上にあるコンテンツの所有者であることを宣言する権利、証明書のことです。つまり作品の所有者であるものの、法律上の権利者ではありません。これがNFTの面白い仕組みなのです。またNFTは購入するだけでなく売却することでキャピタルゲインを得ることも当然可能です。このNFTによってデジタルアーティストは新たな収入源を得る機会が生まれ、2021年はNFT元年と呼ばれる年になりました。なぜならデジタルアートとNFTを紐付けて売ることで、アーティストはギャラリーやレーベルを通さずに自分の作品であることを証明した上で直接顧客に作品を売ることが可能になったからです。
前述した米国人アーティスト、Beepleの5,000枚のデジタル画像をコラージュしたNFT作品が約75億円で落札されたのと同じ頃、Twitter共同創業者ジャック・ドーシーの世界初となる自身のツイートをNFT化してオークションに出したところ、3億円超の値が付きました。
NFTには金融取引などの記録をインターネット上の複数のコンピューターで互いに監視しながら蓄積する技術「ブロックチェーン」が使われています。このため、コピーがハードルとなっていたデジタル作品を唯一無二のものとして流通させることができるようになりました。つまりこれまで贋作などに悩まされていたデジタルアートは、きちんとした資産として、世界で認められるようになったのです。
2021年9月にはパラリンピックのために香取慎吾さんが描いた壁画がデジタルアート作品としてNFTアートチャリティプロジェクトで販売され、3900円を1万点、シリアルナンバー付きで販売し、1日で売り切れたと言われています。坂本龍一さんはご自身の楽曲を小節単位で販売、堀江貴文さんはNFTアバターを発表、続々とNFT作品を販売し出しました。デジタルアート界においても、コレクターのみなさんにとっても、2021年が大きな節目になったことは間違いありません。
■「共同保有」でアートマーケットの再構築を目指す
様々な環境を背景に我々はもっと多様性のあるアートマーケットを構築出来ないかと考えて誕生したのが、「共同保有」というアイデアです。アートの購入に立ちはだかるハードルを取り払い、何を選んでいいかわからないために買いづらいアートを共同保有という形で購入するのです。一つのアートに対してone to oneではなく、one to themという考え方ですね。一つのアートに関わる人たちを増やしていくことによって、アーティストの創作活動を支え、アートに関与する人がみんな幸せになる仕組みを作れるのではないか。そんな思いを元に、アートマーケットを再構築し「アートで楽しくなる世界」の実現を目指して、STRAYMは作られました。
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