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せめて、自分自身には嘘をつかずに生きていたい。『夜明けのはざま』 町田そのこ

「ミレニアル世代」とは、1980年代前半から1990年代半ばまでに生まれた人々を指します。

町田そのこ 1980/03/09〜

現在では、これらの世代の人は社会人の若手〜中堅に該当し、すでに結婚し家庭を持つ人も少なくありません。

ミレニアル世代は、リーマンショックや経済不況、働き方改革や副業解禁など、日本社会のさまざまな変化を経験している世代です。

そのため、仕事への価値観も、一つ手前のY世代やミレニアル世代の親世代とは異なる価値観を有しています。

「夜明けのはざま」町田その子著
ポプラ社

葬儀社「芥子実庵」に纏(まつ)わる5つのエピソード (1〜5章)

"芥子の実" 仏教の逸話

『キサーゴータミーという母親がいました。

ようやくよちよち歩きができるようになったばかりの一人息子を失い、悲しみに打ちひしがれます。
彼女は、息子を生き返らせ、治す薬を求めて釈尊のもとを尋ねます。


釈尊は一人も死人が出たことのない家から白いケシの実をもらってくるようにと言いいます。

町中の家々を尋ねたキサーゴータミーは「ああ、なんと恐ろしいこと。私は今まで、自分の子供だけが死んだのだと思っていたのだわ。でもどうでしょう。

町中を歩いてみると、死者のほうが生きている人よりずっと多い。」と死はどこの家にもあることに気づかされました。

そこで釈尊が彼女に、子供や家畜、財産に気を奪われてとらわれる人を死王はさらいゆく眠りに沈む村々を大洪水がのむようにと詩をうたいました。

死が、生きる者の逃れられない定めであることを教えられたキサーゴータミーは、出家して生死輪廻の苦しみの世界を超えた、仏の悟りの世界を求めていきました。

こうして尼僧となった彼女に、釈尊は不死の境地を見ることなしに百年間も生きるよりたとえ刹那の生であれ死の境地を見られればこれより勝ることはないと詩をおくりました。』

 作家町田その子氏は現在44歳。男の大厄に当たる年齢です。社会に出てそろそろ頭が出てくる歳。

この度の都知事選で名が出た方が丁度この世代です。バブル時代が終わり就職氷河期を超えて意外にクールです。利権のみで生きた昭和の"おじさん達"には理解し難い。

バブル世代が出来なかった後の世代に贈るメッセージが根底に敷き詰められている。


「先を行け」と言える女になる。
フレーズですが、私も長々と生きて一番悩ましく解決出来てない。

 日本の古風な親に教育され「人に迷惑をかけない!嘘はつかない!自由に生きなさい」と言われても…多様な選択肢はなく試行錯誤でした。

仕事は勿論、結婚も子育て、家事…昔はなかったマシーンに頼って何でも出来ると若い日は思った。

しかしながら、育った環境の違う人間と暮らすことやその周辺に一生悩まされている。断ち切れない。

両者が傷付く。なるべく傷付かない解決法はない。
私の望んだ最大公約数的な生き方には最後に割り切れない諸々が残った。

 "その子"さんの世代はそのあたりには長けて練れていた。
あくまでも"歯噛み"しても耐えぬける洞察力を持っている。
解決策は白か黒、グレーゾーンはない。

一章終わると死は完結するかと思えば自死、病死、事故死…死はむしろ転がって「芥子実庵」にいつでも不意にやってくる。


「森の墓地」スクーグシュルコゴーデン【スウェーデンの世界遺産】

国民性でしょうか?何年もかけて設計され、人は自然(森)にかえる発想で作られた墓地です。
丘を歩いている人が消えて行く坂道にも建物のカーブにも細心の神経を使っています。日本人にはない感性です。

スウェーデン人のデザインに憧れて家族でバルト海の小さな島(中央駅から遠くない)に住んだ事があります。

 長い日本列島おへその辺りから始まり"その子"さんの住む福岡から「の」の字を描くように日本海側南から北に北海道に至らず太平洋側を回って転地した者。

地域性(県民性)と言うか四季絡みのはっきりした特質を持っていることを肌身に感じました。漬物にも文化あり!

お餅の形、お味噌の種類…楽しみでもありますが、結婚しても育ちの違いをしみじみお互いが頑固であるほど折り合いの難しさを感じます。

子どもは"白"を染める育児者にかかります。この幸せは何事も変えられない。私は織物作家です。複雑な色、素材、組織で創った作品です。

 五つのストーリーにも必ず家族がいます。芥子の実は胡麻より小さな種で時々アンパンに乗っています。

死者のいない家はない。なるほどなるほど…と本を閉じた。

 猛暑の最中、今年取り付けたエアコンルーム(シェルター)で読んだ yasuo-range 装画の「夜明けのはざま」

「先を行く」人々に読んでヒントにして、もらいたい一冊。

 町田その子氏は当用漢字にない漢字を敢えて使っている。読めなくてiPhone漢和辞典で正確に見て読んだ。

また、「その子」と「そのこ」との使い分けがあるのかコレはわざわざ調べなかった。



#猛暑の過ごし方

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