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TRAIN VERT vol.440 トランヴェール

 『トランヴェール』(JR東日本)
1988年4月1日創刊。

JR東日本の東北・山形・秋田・上越・北陸の各新幹線とJR北海道の北海道新幹線に搭載。
北陸新幹線ではJR西日本の一部車両(W7系)、北海道新幹線ではJR北海道の車両(H5系)にも搭載されている「トランヴェール」はフランス語で「緑の列車」を意味する。

 かなり以前から新幹線に乗る度、座る席の前のシートの座席後に差し込まれている『トランヴェール』を楽しみにしている。
A4の32Pの薄い冊子です。

 一頁目のEKIBEN(駅弁)ギャラリーはやっぱり嬉しくページを捲る。(今回は263回)

 次のエッセイは作家が変わりつつもやっぱり文章に吸い込まれる。

 エッセイストで画家と紹介されていますが、肩書は手に余る程の玉村豊男氏の否定も肯定もしないそのままの文章が長く楽しみだった。

簡単に聞こえますが真似しようとしても出来ない。笑顔で相手の言葉の先の先までよめる。頭が良い!

書道の筆を持ち上げる時の力の抜き方に似た爽やかさがある。
自身の旅の目的を忘れるほど引き込まれた。

その後作家が変わりましたが現在は柚月裕子(ゆづき ゆうこ)イラストは網中いづる

 何時もはシートに戻して下車しますが、今日は持ち帰ってきた。(ご自由にお持ち帰りくださいの指示)
余韻を楽しみたい『歌』があった。

 歌に染まる神の山 筑波山、万葉の恋の話

 上野教授の"万葉恋バナ教室"
「万葉集」には筑波山の歌が25首あり都から常陸国へ赴任した役人たちが数多く残していて、山を詠んだ歌では富士山より多い…そうです。役人は教養が必須だった。

注:恋バナ「relationship talk」や「dating talk」
恋愛に関する会話やトーク

 筑波山は二つの峰から成り立っていて背(男)の山、妹(女)の山と男女二神が守り神になる…と言うわけです。

 現代歌人、常陸の名峰に登る
筑波嶺 恋愛相聞

12P〜21P道中の写真を添えて現代歌人鈴木晴香さんと木下龍也さんが恋の山の吟行( 1.声をあげて詩歌をうたいながら歩くこと。2.詩歌をつくるために景色のよい所や名所旧跡に出かけてゆくこと。)に臨む。

登山の経験がないお二人が、筑波山神社を訪れた。
いわば「筑波山メリーゴーランド」と題する相聞歌を紡ぐ旅。

SNSでしか対応できない世代、なんと風流な企画でしょう。

登山しながら樹木や昆虫、岩、川などなど自然と出会いながら互いの歌のキャッチボール。まさにメリーゴーランド!が続きます。

この歌に宇宙観を観た…のです。

木下
死後にまた落ち合わないか女でも男でもない御幸ヶ原で

・木下龍也 1988 山口県生まれ 歌集『つむじ風、ここにあります』代表歌は<詩の神に所在を問えばねむそうに答えるAll around you>

プロフィールあるいは経歴は何もない潔さ!

相方の鈴木さんの評:この歌、すごく好きです。男性と女性だけじゃない、恋愛の可能性が描写されている。あらゆる恋の背中を押してくれる歌ですね。

 デザイン教育を受けた恩師の方々、知人は晩年俳句を詠んだ。句は言葉のデザインである。と言いつつ単語にもやっぱりデザイン用語が入る。

傘さして 霰の的と なりにけり 
          平 不二夫

ふと思い出した家人の恩師の俳句。確か句の中に"放物線"が入っていたと…勘違い!
頭の中に描いた風景で霰(あられ)が傘に跳ね返すさまが幾つもの放物線に重なっていた。
それも蝙蝠傘。

歌なり句なり…多くの言葉で語り尽したつもりでもさらに多くのシーンや言葉が連なる…日本の大切な文化だと思う。

 この度の自身の意志による新幹線での移動は思いがけない気持ちの昂まりがあった。

新幹線の窓に僅かに降りかかった雨の水滴!
雨?と思い窓の外を見ると虹です。

ブナの紅葉と針葉樹の補色のコントラストをバックに一切れのケーキのように…窓を流れた。

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