誰だって退化する! 「衰え、弱くなることを受け止める品格」 ''fede out"する
78歳。忍ハナ(oshi hana) 曰く「人は中身よりまず外見を磨かねば」と。
*「すぐ死ぬんだから」2018/08/21 初版1刷
定年って生前葬だな。これからどうする?で始まる「終わった人」2015/09/17発行からほぼ3年で「すぐ死ぬんだから」です。主人公が60代の男性から変わって70代後半の女性です。
本の帯に記されている方々の感想を読むと40代から80代です。
お一人お一人が違った人生です。団塊の世代が70歳を超え皆が共感するところのベストセラーとなりました。
作家自身の「あとがき」にも明記しているように本書は80歳を間近の女性主人公をめぐる、外見に関する物語です。何度か外見に拘っています。
「終わった人」のあとがきでは国際政治学者の坂本義和さんが国家を論じた言葉(秋田魁sakigake 新報を引用した)
「重要なのは品格のある衰退だと私は思います」英国は植民地のインドを早々と手放した。「衰え、弱くなることを受け止める品格を持つことで、その後もインドと良好な関係を結んでいます」
内館氏は坂本さんの言葉に「美しく老いる考え方」のヒントを得たようです。俗に言われるアンチエイジングとあがくことは「品格のある衰退」ではないように思った。品格ある衰退がキーワードになっています。
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引用が長くなりました。
70歳を超えた作家が、自戒を含めて胸に刻んでおこうと。求め考えた生き方ではなかろうかと”あとがきを”何度も読み返した。
**「フェードアウト」fede out 映像や音が徐々に消えていくこと」転じて姿を消すこと」
主人公「ハナ」の孫に教えてもらった単語を使っています。「老退」老衰を意識して前向きなこと。あがいてもがいて身をよじるようにギラギラ輝いて夕陽になる。そういう人間が「老退」にたどりつくことが出来る。と・・・
世代によって日常に使うワードが違ってくる。これは私も納得している。
(例えば・・・主人公はジーパン→ジーンズ→デニム 世代順)
精一杯小走り(息せき切って)で共通の会話(メディア)が出来るよう心掛けているのは、子を見て我が歳を知らされるからです。
前出の「外見」も思うところがあります。
表画を描かれた太田郁子さんは、若いイラストレーターですが今時の高齢者独特の雰囲気を美しく描かれています。
しかし、リュックサック・帽子・ゆったりした服装は何度も書かれている通り「使い古した安っぽいものばかり・・」確かです。使いやすいモノ、着やすいモノ、履きやすいモノは決まってくたびれて仕舞います。
言わば見られているという「緊張感」がなくなっている。
人生に於ける「スポットライト」が既に当たっていない。
唐突ですが、岡本太郎のパートナー「敏子さん」は高齢になってお見掛けしてもピッタリしたタイトスカートに高いヒールの靴を履いてカッカッと歩いていらっしゃった記憶があります。
"ナチュラルでは無い" あれは今思うと凄いことでした。
文中に使われたキーワードから幾つもシーンが浮かぶのも特徴です。スキンケアは”癒し”をもたらし、メーキャップは”励み”をもたらす。これも名言です。
鏡で自分の顔をゆっくり見るゆとりもない日を過ごす日もありました。クリームを手に付けて顔の隅々にそれをのばしながら他人の顔のように眺めて愛おしくなることがあります。偶に・・・
確かに労わってあげようとその時は思います。
あとがきに添って思う事を書きました。
***何故、新「終活」小説なのか・・・です。
「終わった人」~「すぐ死ぬんだから」職場から墓ではなくなってしまった。
個人差はありますが、定年退職後、さらに就職して働いていた時間を持つことになりました。20+40+40=100歳
死んでしまって、遺族に迷惑が掛からないよういわゆる「しまつ」を文字に残すことが「終活」。
この主人公の夫は遺言書を遺すことによって遺族に混乱を招いてしまったのです。40年以上隠し続けた秘密でした。
一生の間に誰でも秘密はあります。
お墓にもっていく人、もっていかない人、残された遺族の問題になります。
死に逝くときは教養も大切な要素と心得ます。
爽やかに笑顔でまたね!と「玉手箱」を遺していきたいものです。希望です。
人は正面を向いて対面している時、側面・背面・真上・真下から自分も相手も見ることが出来ません。あまりに私は真剣過ぎた・・・きっと相手も窮屈であっただろうと思うようになりました。
内館氏は78歳の主人公の年齢には達してはいません。
息子・嫁・娘・孫等の人間関係において年嵩のハナはいつも距離を保ち相手を尊重しています。
一発「かます」と言い放ちながら相手の口から出る言葉をゆっくり待っています。
ここが勝負!の「言葉が出るまで待つ」私にはこの懐がこれまでありませんでした。
ハナさんは阿弥陀の世界だといって除けますが、これも心軽くなり助かりました。気に入らなかった嫁も夫の隠し子も嫌いではなくなる・・・
言葉に出せるハナさん!ここが好きです。
またも唐突です。「梅原猛の日本文化論」読み返しながら梅原氏の母親はいつも阿弥陀経を唱えていらっしゃったことを心に留めておりました。
これもいわば終活です。
自分も含めてみなみな実は愛おしいものです。
刻一刻変わる空模様・・・明日は○○しましょ。
****「すぐ死ぬんだから」「すぐ死ぬのだから」「ん」と「の」の助詞を間違えて覚えていました。
内館牧子氏は独特の言い回しがあります。「終わった人」を読んだあとには主人公よりその「妻」の生き方に興味を覚えました。女が自由を持つことの意味は経済・心身、共に自立することです。
内館氏の理想とした「妻」像がここにあるのだろうと想像していました。
他人同士が親より長く暮らすのですから、まさに「忍」oshi の一字です。
彼女の略歴を見ると東北で生まれ、東京で育っています。日本の脚本家、作家。美術大学(造形学士)東北大学修士(宗教学)
2017年授賞式に車いすで出席して、周囲は骨折していたことを知った!「すぐ死ぬんだから」の発行前です。
「下敷」あっての「終活」思考努力と想像します。
我が身、まだまだ未熟・・・