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【第1話】失意の底で出会ったカフェほど感動がでかいんだぜ。〜ゼロから始める異性交友生活〜

仕事もプライベートも散々だった。

嫌われる勇気で散々思い知ったことがある。

馬を水辺に連れていくことはできるが、馬に水を飲ませることはできない。


人生で散々それは思い知った。
だから、唯一信じられる自分だけは失わないようにした。
自分なりにはたくさん努力してきた。

特に、15年以上続けてきた、テニスだけは誰にも負けたくなかった。

しかし、

「第二シードなのに、1回戦で負けた。」


もちろん、雨天延期のせいか二回不戦勝があったが、プライドの高い俺はこの事実を許してくれない。俺は確かに負けたのだから。


しかも同じ相手に。
始めて対戦して勝った日は、調子に乗ってアドバイスまでしていたのに。
そんな過去の自分の軽率さにも嫌気がさす。

そして、かつてしのぎを削ったライバルは優勝し、負けたことない格下だと思っていた人がベスト4に入っていた事実も自分を打ちのめした。

努力も気持ちも何もかも足りていなかった。

そして、過去の栄光に執着していた。こんなはずじゃないのにと。成長していないのは自分だけだった。

自分は特に才能がなかったのだと思い知る。

恋愛も負けて、テニスも負けて、寝不足も相まって、もう自分はなんで生きてんだろうとか思いながら適当に自転車を走らせていた。

まだ残っているもの。

やり残したもの。

ああ・・・。どうせ、死ぬならバケットリストやってからだなあ。

ふと、変わったカフェを見つけた。

(まるで、魔女のお茶会みたいだ。)

エキドナ、いや、店主はどこだろう。

奥から顔を出した白髪の魔女は優しそうな眼をしていた。

目を引いたのが、

シンプルな抹茶ラテ650円、
ソフトクリームトッピング750円。

写真には、シャインマスカットや、小豆が写っているがこれはいくらだろう。
もう今日はいくらぶんどられてもいいや。自暴自棄だった。

あ、じゃあ写真の感じでトッピングしてください。

椅子に座ると落ち着いてきた。不思議な空間だ。

源「実は初めてこのカフェきたんですよ。」

魔女「へー。んそのバッグ。何してたの?」

源「あ、大会です。」

魔女「なんの?」

源「テニスです!」

魔女「あー!あの公園でやってるやつね!」

源「はい...」

声色を察してか、その先は何も聞かれなかった。

(え、おいしい。)

いままでのんだ抹茶ラテで、1番美味いかも。

魔女「ごめんね、こぼれちゃって笑」

もうそんぐらいがいいのよ。むしろその入れてくれる気持ちがうれしい。

一口飲むたびに、感情が流れていく。まるで魔法の飲み物だ。
店主はもしかしたらほんとうに魔女なのかもしれない。

良かったらこれ食べて。

栗の渋皮煮だった気がする。

源「おお・・・。ほのかな甘みがおいしいです。」

魔女「でしょ~。」

源「あの、庭をもう少し散策してもいいですか?」

魔女「もちろんよ。」


魔女「この席が一番人気なのよ。いつかここにきてね。」

源「ははは・・・。」

作り笑いが引き笑いになっていないだろうか。

魔女「夜になるとね、ここはほんとにきれいな場所になるのよ。だから、夜にも来てほしいわね。頑張って作ったのよー」

源「・・・はい。必ず来ます。絶対きれいですね。」


そう、いつかここに戻ってこよう。
それは、誰かとかもしれないし、一人かもしれない。
でも、必ずまた来よう。

光が閉じるように 会えない人がまた増えても
大人になれなかった それを誰にも言えないでいる

backnumber「新しい恋人たちに」

別れは突然何度も来た。

連絡先が消えて会えない人も、価値観の違いから会えない人も。この世界にいなくて会えない人も。

でも、今まで出会った人がどこかで生きていると思えば、少しは楽になる。

俺は旅が好きだ。旅の出会いも好きだ。

パリピ禁制の、静岡の癖強おでん屋のばあちゃんに会いに行ってもいい。

宿がなくて途方に暮れていた俺を受けて入れてくれた、淡路島の宿の家族に会いに行ってもいい。

現場で気が合ってツーリングした、しまなみ海道のチャリのおっちゃんに偶然会えるかもしれない。

一期一会が再会になったらエモすぎるじゃん。

そして、俺には仲間がいる。

みんな色々抱えながらも、頑張って生きている。

会えなくなる人が増えても、その分、会える人を大切にしていこうと感じたアラサーの夜。


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