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【小噺】すみません。失念しておりました

インスタグラムには不安を煽るような投稿が多く、見たくなくても表示されてしまうものだ。特に、大学3年生だと就活系の投稿をよく目にするようになる。
僕が大学3年生で就職活動をしていた時、「この言葉を使えない社会人はNG」みたいな投稿があった。
「忘れてしまいました」ではなく「失念しておりました」を使えと。めんどくさっ。「失念してしまいました」を使えないとダメな社会人認定される世界なのか、生きづらくなるなと頭を抱えた。
そこから謎のプライドが表れて、失念など絶対に使わんわ!と心に決めた。

かなり上位で志望していた会社の第三次面接でラジオの話になり、「今はオールナイトニッポンは誰がパーソナリティなんだ」と聞かれた。
火曜、水曜、木曜、金曜、土曜のパーソナリティーはスラスラと言えたのだがどうしても月曜日のパーソナリティが思い出せなかった。ちょうどその頃、菅田将暉さんからCreepy Nutsさんに変わったばかりで、0のイメージの強かった後者の名前を出すことができなかった。
ここで「失念」チャンス。
しかし、俺は失念なんて使わなくても上までいけることをこの身をもって証明してやる!と思いこう言った。

「すみません、月曜日のパーソナリティを忘れてしまいました」

そんな懐かしい一年前の話を思い出して書いている。
失念チャンスを逃した三日後には「残念ながら」と無感情の悲哀を受けていた。

大学生活が終わって、部活も引退して本当にやることがない。僕はアルバイト以外でもう20日以上も家から出ていない。平和なもんだ。外の天気もほとんど把握せず、誰とも会話をしていない。それでも課題の提出期限に追われることも、単位も落とす心配も、部活の仕事に追われることもない。なんと贅沢な時間だ。
こんなだらしない生活を自分自身でなんとか肯定していても、周りの人間はそんなことは思わない。久しぶりに電話が来て、そんなだらしない生活の一端説明していると

「お前さ、大学1年の時に立てた大学生活の目標覚えてないのか?コミュニケーション能力を上げて、いっぱい遊んで、友達作ることだろ?」
と言われてしまった。

「すみません。そんな目標は失念しておりました」

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