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【小噺】奥歯に剣

歯医者さん

に自ら進んで治療を受けにいきたい人なんてこの世の中にいるはずがありません。できれば、歯医者さんにお世話にならない人生を歩みたいものです。
歯と言えば、【心の中では敵意を持ちながらもその心を表には出さず隠している様子】をことわざで「奥歯に剣」と言いますが、皆様はそのような状況を経験したことがありますか?嫌な上司とか、怖い先生とか。

このお話は、お察しの通り、歯医者さんでの奥歯に剣に関する一幕です。よく咀嚼してお召し上がりください。

昔から

歯の健康には定評があり、虫歯一つもできたことがありません。学校で行われる歯科検診は斜線ばかりで、見応えのない歯でしゃーせんという感じです。(ここは皆様の白い歯を思い切り見せて笑う場面です)
ですから歯医者さんとは無縁の生活をしていました。

ことの発端は一年前でした。全面ガラス張りの施設の外にいて、扉から中に入ろうとした時、「ガツン!」と何かにぶつかりなぜか中に入ることができませんでした。
詳しくいうとそれは扉ではなくて、ただの透明なガラスだったのです。よく見ると扉は一つ隣のガラスに付けられていました。全面ガラス張りで目が混乱していたのでしょう。
痛みはなく、ただ何が起きたかわからずパニックになりました。と次の瞬間、前歯に違和感があるのです。そう、上の前歯の一つが横に真っ二つに割れていたのでした。

直ちに

歯医者さんに行って診てもらいました。幸い、欠けた歯をくっつけるだけで済みました。ただ、「神経スレスレまで割れているのでいきなり神経が傷ついて、最悪削ることになるかも」と注意を受けました。

一年後

の冬の朝、ズキズキという痛みで起きました。一年前に治療した歯の神経の痛みでした。しかし、寒さで神経が過敏になっているだけだと思い込むようにして、二度寝しました。次もズキズキで起きました。すると、上唇の感覚がなくなっていました。それから痛みは途絶えることなく、僕を身動きすら取らせてくれませんでした。
そのうち治るという一縷の希望で、三日間意識を失う程の痛みに耐えました。痛み止めが効いている時間だけは意識を正常に保つことができました。
四日目の朝、流石におかしいと思い死にそうになりながら歯医者に行くと、やはり神経が死んでいたのです。

直ちに

手術ということになりました。「少しチクっとします」の合図で麻酔の注射を患部に打たれました。おいおいおい。何もしなくても意識を失いそうになるくらい痛いのに、そこにぶっとい針を打ち込んでおいて、何がチクっとしますじゃーーーー!!!「チクっとで済むんだ、やったネ」と一瞬信じた僕が愚かしい。「チクっ」どころの話ではない。「ブサっ!!!!!グリグリグリグリーーーー!!!」じゃないか!泣いちゃった。痛すぎて。

こうして

僕は、歯医者さんに大きな敵意を抱くわけですが、「奥歯に剣」なんてできっこありませんでした。だって、手術中だからめちゃくちゃ口の中見られているんですもの。奥歯に剣を隠しても一瞬で見つかってしまいますもの。

「奥歯に剣」を隠そうとしていた僕は、歯医者さんによって「前歯にドリル」を突きつけられていました。

もう全く、歯医者さんには歯が立ちません。



(※誠に勝手ながら、あの瞬間だけは少しばかりの敵意を抱いていますが、もちろん歯医者さんは悪くありません。それどころか、親身に色々な相談に乗ってくれたり手術してくれて感謝しています。)


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