これさえ読めばまるわかり!今話題のプラントベースト食品とは?①基礎編
(2020.5.19:一部誤表現を訂正致しました)
2018年ぐらいから、
日本国内でも急激に増え始めましたね。
「大豆ミート」
大豆、エンドウ豆、ひよこ豆など植物性たんぱく質を多く含む原料をメインに使用した食品の総称を「プラントベースト食品」(Plant-based foods)と呼びます。今回は、この記事を読むだけで「プラントベースト食品とはなんぞや?」といった事がわかるように「基礎編」、「応用編」に分けて紹介したいと思います。
今回の基礎編では・・・
・プラントベーストって何?
・なんで最近注目されているの?
次回の応用編では私の食品開発経験を活かし・・・
・どんな会社が作っているの?
・どんな原料で、どうやって作られているの?
これらの疑問を、一挙に解決してみたいと思います。全く知らない方でも分かるように書いておりますが、応用編ではより専門的な内容を盛り込んでいきますので、食品業界の方や新しい食トレンドに詳しい「もう知ってるよ!」って方も、復習がてらこの「基礎編」を見て頂ければ嬉しいです。
1. プラントベースト食品って何?
米国のPlant-Based Foods Association(PBFA: 米国の民間認証機関)によってプラントベースト食品(以下、PB食品)が定義がされております(出典:プラントベースト食品の定義(英文))。厳密な定義はちょっと長いので、本記事ではわかりやすく下記の様にまとめさせて頂きます!
PB食品とは・・・
・植物性たんぱく質を多く含む植物 (豆・ナッツ・アーモンド等)を主原料とした食品・飲料の総称
日本の例で言えば、大豆ハンバーグ・豆乳はPB食品と言えます。例えば、大豆ハンバーグのソースに牛骨エキスが使用されていたとしても、「PB食品」と呼ばれる場合があるので、ビーガンやベジタリアンの方は注意が必要です。
さて、PB食品の中で近年注目されているのが、「代替肉」ですね。ここで少し用語の整理をさせて頂きます。
● 代替肉、擬似肉、フェイクミート(肉そっくりの食品)
● 培養肉、セルミート、クリーンミート(人工的に培養された肉の総称)
があります。簡単に言えば、
・代替肉/擬似肉は「肉ではない、肉に似た食品」
・培養肉は「細胞培養で作られた本物の肉」
なので、全くの別物と認識ください。
ちなみに、なぜ培養された肉がクリーンミートと呼ばれるかというと、畜産物を育てたり屠殺したりして得る「動物肉」より、研究室で培養された肉の方がよっぽど環境に優しい、透明性が高い=クリーンだよね、という考えからそのように呼ばれているようです。
代替肉以外のPB食品として、下記のような物も含まれます。
・植物性ミルク(豆乳、アーモンドミルクなど)
・デイリーフリー食品(植物性チーズ、植物性ヨーグルトなど)
・エッグフリー食品(植物性卵など)
植物性ミルクは、欧米でも最もポピュラーかつ最大級の市場規模を持つPB食品として多くの人々に愛されております。日本でも豆乳ラテは既にポピュラーですね。北米だと豆乳よりもアーモンドミルク、オーツミルクなどがポピュラーです。
2. プラントベースト食品(PB食品)ってなんで注目されているの?
PB食品って名前の通り植物原料が主体で構成されているものです (※前述したとおり、乳製品や卵が配合されている事もあります)。もともとはベジタリアンの方々が好んで食べていた食品です。欧州にある老舗のベジタリアン食品ブランド「Morningstar Farms」は1975年から販売されており、PB加工食品の中では比較的長い歴史があります。
そして現在、イギリス、ドイツ、フランス等の西ヨーロッパや北米で、ベジタリアンやビーガン以外の人々の間で確かに流行しております。今なぜ、ベジタリアンでもない人々の間で流行っているのか?主な理由は3つあります。
①地球環境の為
②将来訪れるたんぱく質危機へ対抗する為
③健康の為
①地球環境の為
なぜPB食品を食べる事が環境の為になるのか。
それは、牛を育てる事の「環境コスパ」の悪さが関係しております。ビヨンド社によれば、ビーフパテ1個とビヨンド社のPBパテ1個を作るための労力(牛の飼育や植物の収穫も含む)を比較したところ、ビヨンド社のパテは、99%水使用量が少ない、93%土地使用面積が少ない、90%排出する温室効果ガスが少ない、46%エネルギー消費が少ない、との事。ミシガン大学のお墨付きなようです(出典:BEYOND MEAT'S BEYOND BURGER LIFE CYCLE ASSESSMENT)。また、国際食糧農業機構(FAO)も、人為的に排出される温室効果ガスの14.5%が畜産産業が原因と述べており警鐘を鳴らしております。
このような事実は、有名投資家(ビルゲイツ、レオナルド・ディカプリオ)の協力もあり、とりわけ西海岸では多くの層に浸透。私たちが普段食べているビーフよりもよっぽどエコフレンドリー(環境に優しい)だよね、という事に人々(特に30代前後のミレニアル世代)が共感し始めた事が、米国での流行の要因の一つです。
さらに、欧州の場合は環境問題に加え、動物愛護の観点も強い傾向です。英国では40年以上前から動物愛護教育に熱心に取り組んでいた為、現在のミレニアル世代の動物愛護精神は日本と比べて遥かに高い傾向にあります。
②将来訪れるたんぱく質危機へ対抗する為
タンパク質クライシスと気候変動問題を“おいしく”解消する植物性代替肉(SMBC)によれば、2050年の世界人口は97億人を突破予定で、今の延長線上にある食肉供給量では、人類は必要なたんぱく源を補えないとの事。通常、体重50 kgの人は50 gのたんぱく質を日々摂取するのが理想であるが、このまま人口が増え続けると、2050年頃にはたんぱく質の需要と供給のバランスが崩壊してしまうのでは?という議論が起こっているようです。
これらの解決策の1つとして、家畜よりも単位面積当たりの生産量が遥かに多く、環境負荷も小さい「大豆」や「エンドウ豆」が未来のたんぱく源として槍玉に上がったわけです。近年では途上国の発展による肉食増加や、宗教的な理由で菜食主義者が多いインドでもハレの日は肉を食べる、などの文化が広まっている為、今まで肉食を享受してきた先進国が進んで代替品を消費しようというマインドもあるかも知れません。
③健康の為
健康の為に食べる。
というのはイメージしやすいと思いますが、コレがやっかいな部分で、食品で「これを食べれば絶対に体に良い!!」という物は恐らく無いんですね。ただ、近年の論文の総括として、「赤身肉、特に加工肉(ハム・ソーセージ等)を食べ過ぎると大腸ガンのリスクが向上する」というのが専門家の間では定説なようです。
ただし、注意しなくてはならないのは摂取量です。米国人と日本人では年間肉摂取量は倍以上違いますので、論文の結果よりも文脈を読み取る必要があります。米国がん研究協会によれば、赤身肉(牛・豚・羊肉の総称)は週500g以内、加工肉はできる限り避けましょう、との勧告を行なっています。ハンバーグ 1個 (100g)とステーキ1枚 (200g)生姜焼き5枚 (120g)を週に各1食ずつ食べても大丈夫なレベルなので、日本人の多くはそこまで意識しなくても問題ないレベルなのかな?と個人的には思います(ただし、一部専門家の意見では気にした方が良い、というものもあります)。
以上の結果は、狩猟時代より肉食文化が根強い、欧州・米国にとっては由々しき事態なのです。故に、欧米では「健康のために少し肉食を減らして、植物からたんぱくを補おう!」という発想に繋がった訳ですね。
まとめ
長い文章にお付き合い頂きありがとうございました・・・
まとめますと、
● プラントベースト食品とは
・植物性たんぱく質を多く含む植物(豆・ナッツ・アーモンド等)を主原料とした食品・飲料の総称(大豆ミート、豆乳等)
・プラントベースト食品は完全にアニマルフリーではない場合がある
(乳製品・卵などが配合されている場合がある)
● なぜ注目されているか?
① 環境負荷が動物肉と比べて少ない為
→将来の地球環境保全の為、肉食を少し減らそうよ、という考え方
② 次世代のたんぱく質資源として期待されている為
→人口増加、途上国での肉食頻度増加により、将来のたんぱく源不足に対する解決策の1つとして期待されている
③ 健康の為
→肉の摂取量が多い欧米各国にとって、赤身肉の摂取量を減らす事は健康維持に直結する可能性がある
PB食品を愛するほとんどの米国人は、肉も食べます。彼らは自らの健康や地球環境のために、少しばっかり努力しているだけなのです。まあ、週1の休肝日に炭酸水を飲む感覚に近いんではないでしょうか?長続きの秘訣ですね。
以上、ここまで長い記事をお読み頂きありがとうございました!次回の応用編では、PB食品の原料や作り方など食品開発にも関わる少し詳しいお話も書いてみますので、ぜひご覧いただければ嬉しいです!
※2020.5.27: 応用編1も追加いたしましたので、ご興味あるお方はぜひご覧ください。
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