夜更けのfuzkue 人生のうねり
夜更けのfuzkue。読書をするためのお店。ソファ席の正面に岸政彦さんと柴崎友香さんの「大阪」と、稲田俊輔さんの「おいしいものでできている」があったので読んだ。カツカレーに異議があるのはタモリさんと林先生だけではなく、稲田さんも文句があるのだな。。
家で飲むウィスキーよりバーで飲むウィスキーが美味しいのと同じで、出先で読む岸政彦と沢木耕太郎は家より断然美味しくて、頭の中は半分は本の世界、半分は80年代の自分の思い出を彷徨うような、そんな感じで、たまらなく懐かしくて、切ない。
帰り際、作家が推薦する本をタイトルを伏せて購入して、読後にエッセイを読めるフヅクエ文庫があり、先頭に先日個展を見てきた近藤聡乃さんの推薦本があったので、嬉しくて買って帰る。電車の中で開いたら、彼女のファンとしてあまりにグッとくる選書で泣きそうになった。
近藤さんの本も、岸さんの本も、人の生をめぐる意図を超えた必然的なうねりのようなものを、近藤さんは絵画的に(絵もすごいのに構成が優れたドラマの脚本のようで本当にすごすぎる。実写でもアニメでも再現できない生々しさ)、岸さんはあらゆる人の生活史の集積を使って、描いてくれる。
A子さんの恋人で描かれていく水のような巡りや、鏡の向こう側の世界と、岸先生が淀川べりで夜中にビールと花火を買って騒いだあの時間は、いま宇宙のどこを彷徨っているのだろうか、という感覚はとても似ている。
もう決して取り戻せないけど、いまも確かに流れて現在に結びついている愛しい過去、めぐりあう時間たち。そんな余韻に浸れるのも、家ではなく、読書のための夜中のfuzkueだったからかもしれない。素晴らしい時間でした。