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料理人のスペシャリテは料理ではなく空間でもいいんじゃないか?

ぼくたち料理人は修行をしているうちに、教えてくれた先輩やシェフの方々の調理技術や調理理論などを吸収して成長します。

ぼく個人的な意見では、料理人はどこで働いたかが重要なのではなく、
どんな人とどのように働いたかがこの先の料理感や人生観に影響を与えるのだと思います。

そんな修行をしていく中で、自分の料理とは何かと考える時が必ずきます。

料理人は成長すると同時に、人から受け継いできた技術を皿に反映させる行為から、自分自身を皿に反映する行為へと進化するのです。

料理人として本当に苦しいのはここからで、自分を料理を通して表現するのはとても難しいです。

ただ、最近の飲食業界の大きな変化。
消費者のニーズの変化や嗜好、食に対する意識の変化を考えると

ぼくは将来的に料理人のスペシャリテは料理はもちろん料理以外に広がりを見せてもいいのではないかとも思います。

料理人の本懐は
お腹を空かせた人に食事を提供する人
だとぼくは思っています。

皿の上で芸術的な盛り付けをしても、それを眺めて食べずに帰る人なんていないし、最後はぺろっと胃袋に収められます。

料理人が一皿を作るというのは料理人の仕事の中でもかなり限定された活動で、

店を作る上でも必ず考えますが、店内の内装、BGM、食器、カトラリー、ファーニチャーなど店舗を構成する要素は様々です。

そういった環境作りは決して手の抜けない作業で、来ていただけるとお客さんの心を入店した一歩目で掴めるチャンスがあります。

これからの世の中は料理以外にも快適さやコミュニティー化が飲食店には求められます。

料理人の作る一皿のために足を運ぶ人もいれば、独自のアイディアや世界観で作る飲食店自体に興味を持ち足を運ぶお客さんも多くなるのではないのでしょうか。

そう考えると、料理人は

皿を仕上げる仕事
ではなく
食事そのもの(空間や雰囲気)をコーディネート,プロデュースする仕事

に視野を広げても面白いかもしれません。

料理は先人たちから教わってきた基本に忠実な料理を提供する。
美味しいことは当たり前だけども、これといって目新しい工夫はない。
だけど、料理を食べる場所のコーディネートや環境作りに「自分」を投影する。

メディアアーティストの落合陽一さんやキングコング西野さんのような独自の世界観を、今までの経験や感性といったフィルターを通して料理人が発信していけるのと面白いと思います。

これからは料理人も「料理だけ」では生きていけない時代です。

同時に、個性を「料理だけ」に投影して喜ばれるのももう終わりに近づいていると思います。

さまざまな食材を自身の感性をもとにつなぎ合わせ、新しい一品を作るように、

料理人とアーティストという両方の特質を持ち活かせる活動が今後の飲食業界を変えて引っ張っていくのではないでしょうか?

2020/1/30


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料理人のキムラ
働きたい飲食店を目指して目標に進んでいます。