私たちが「フードカタリスト」 と名乗る理由
私たちFOODBOX(フードボックス)株式会社のメンバーは、その役職を「フードカタリスト」と名乗っています。
聞きなれないかと思いますが、この言葉はFOODBOXオリジナルの造語なんです!今回はCEO中村圭佑が、フードカタリストの役割と、この言葉に込めた想いをお伝えします。
4,817文字にわたる超大作。
お時間ある時にじっくり読んでいただければ嬉しいです!
フードカタリストとは"食・農業界と異業種の繋ぎ役"
フードカタリストとは、フード・Food(食)と、カタリスト・Catalyst (触媒、促進の働きをするもの、刺激させる人)を組み合わせて作ったオリジナルの言葉です。
触媒とは通常化学の世界で使われる言葉で、それ自体は変化しないけれど他の物質同士の化学反応を速める物質のこと。つまり、フードカタリストとは"食・農業界と異業種の繋ぎ役"です。
…と、ここまでは会社HPにも書いてあるので、noteではより深く、どうして私たちがフードカタリストと名乗っているかも含めてお話ししたいと思います。
私のバックグラウンドについてはこちらの記事にもある通り、実家は4代続く専業農家。その家でずっと、農家の仕事や暮らしとは何たるかを見て育ちました。
その時に思っていたことの一つが、農家の世界ってすごく狭くて、分断されているなあ、ということです。今、FOODBOXは「食・農業界」という枠組みで仕事をしていますが、当時は食と農家すら結びついていないケースも多かった。
農家とは農作物の作り手であり、あくまで農業だけに携わる人。しかも、地域ごと、農作物ごとにも分断されていました。例えば北海道と福岡県の農家さんが交わる機会は非常に少ないですし、梨農家が他の野菜農家さんと繋がることも限られている。完全な縦割り社会です。
ところが世の中、農作物が深くかかわっており、分野や業種の垣根を超えて解決すべき課題がたくさんあります。農家さんが、加工流通業、パティシェやシェフのような食の世界、百貨店や道の駅といった小売店などと、繋がらずにやってきたこと自体が不自然なのではないか、と思うほどです。
…少し話は逸れますが、実はこれまで、その接点の多くはJAが担ってきました。ひと昔前まで、農家をするということはその地域のJAの組合員となること。つまり生産した農作物はすべてJAに卸すことを意味しました。
しかしJAには独特の縛りがあります。例えば農作物の規格が決まっており、それに応じて包装形態も複数ある。また、サイズにより等級分けし、サイズ・等級に応じて買い取り価格が決まるという様なシステムです。これは一見合理的ですが問題もあります。
例えば同じ等級の中でも幅があり、とてもよい出来の農作物と等級ギリギリの農作物があったとしても、等級が同じならば金額は同じとなってしまう。平たく言うと、サイズ・等級が全てで、がんばって「いいもの=美味しいもの」を作っても収益に繋がらない仕組みなんです。そもそも美味しいという味が評価されない世界でもあり、美味しいを追求している方々は自然と離れてしまっているのが現実です。JAに卸すよりも自分で新しい繋がりを作り、味が評価される世界を目指して販路を開拓する様になってきています。
もちろんなかには、すばらしい改革をして地域の農家さんたちをリードしているJAもあります。しかし、そもそも農家さんがJAに生活のすべてを頼るという時代では最早ありません。つまり農家さんの側も、そうした受け身体質から脱却しなければならない。
これまで分断されてきた農家さんがどのようにして他の業界と繋がればよいのか?それを伴走支援するのが私たちフードカタリストの役割と考えています。あくまで農家ファーストですから、フードカタリストは裏方的存在。表舞台に立ってもらうのは農家さんです。触媒って、泥臭くて表に見えない。そういう意味でもフードカタリストという言葉は、まさに私がやりたかったことと合致したんです。
恩師のヒントで言語化できた
とは言え、フードカタリストという職名が最初から頭にあったわけではありません。こういった仕事がやりたいと思い描いていたころ、既にある職業で最も近かったのは「農業コンサルタント」でした。
ただ、コンサルと名乗るのには抵抗があった。父の世代の人たちにも、農業コンサルだけはやめておけと反対されました(笑)。というのも、その世代はインターネットのなかった時代で、農業コンサルタントと称する人たちが、情報格差を巧みに利用して、計画だけを作って膨大な頭金をとり、計画の実施は農家に丸投げ、という無責任なことをするケースが多かったからです。だから全く新しい言葉が欲しいなと思っていました。
そうして悩んでいたときに、お世話になっていたある農業系の先生から「カタリスト」という言葉をヒントとしていただきました。そこに、食・農業界にちなんで、わかりやすく「フード」を付けることにしました。
ちなみに「カタリスト」というと、時々「何か語ってくれるんですか?」と聞いてくださる方がいます。とある有名なコピーライターの方にも「語り手」を連想させる響きがよい、とほめていただきました。
食・農業界について、正しいことを語り伝えていくという意味でも、ベストな名前にたどり着いたなあと思っています。私にとって大切な存在だったこの先生は昨年逝去されましたので、今となっては、この言葉はその先生からもらった宝物のようになりました。
ちなみに、農業コンサルタントのイメージと、私が目指す農業コンサルタント(=フードカタリスト)像については、SMART AGRIさんでもコラムを書かせていただきました。ぜひそちらもご覧ください。
FOODBOXはフードカタリストを育てる場でもある
FOODBOXは私(中村)がCEOとして株式会社の形をとっています。これにも実は理由があって、自分一人がフードカタリストとしてやって食っていければいいや、というのは嫌だったんです。それでは食・農業界への貢献にならないので。
会社形態にしたのは、私が思い描いているフードカタリスト像、食・農業界の理想に共感する人を、フードカタリストとして育てて輩出したいという思いからです。まずは社員第一号として池田が入ってくれましたが、そういう人材をもっと増やしていきたい。そしてフードカタリストを食・農業界で当たり前の存在にしていきたい。例えば協会を作って、資格のようなものにするのもいいかもしれないと思っています。
インターン生の受け入れにも力を入れています。実はあるサイトでインターンを募集したところ、なんと300人もの学生さんが興味をもち応募してくれました。育成というとおこがましいですが、FOODBOXでの経験を元に、フードカタリストでもそれ以外でも、食・農業界を盛り上げる存在に成長していってくれたらと思っています。
大切にしているのはスピード感と、裏方としてのバランス感
フードカタリストとして、実際どのように農家さんのサポートをしているのかをお話しします。農家さんのお悩みは大体、人的リソースが足りない、知見経験がない、ネットワークがない、のどれかに当てはまるといって差し支えないでしょう。それを裏方から伴走支援するのが、フードカタリストの役割です。
FOODBOXがもっている知見やネットワークを活かし、相談開始からスピード感をもって進めています。10年かかることを1年でやるペースで、短期間でトライアンドエラーを繰り返す。やってみて、うちではこれは合わない、というのを確認できるのも良いことです。例えば新商品開発をするために、加工業者と組んでサンプルを作るとしても、作ってみないとわからないということはどうしてもある。
FOODBOXではその過程をお手伝いします。調査して、方向性を決めて、計画やスケジュールを作って終わり、という机上の空論ではなく、それを実行する方に力を注いでいます。農家さんの代理営業やメーカーとの交渉、農家さん名義の名刺をもらって、その農家の一員として動くケースなどもあります。
ただし、単に仕事を代行するのだと、それはそれでまた違うかなと…。人的なネットワークは農家さんに属するものですから、最初は代行しても次の交渉は農家さんに主体的に関わってもらうなど、難しいですがそのバランス感を大事にしています。
FOODBOXで一時的にやってみて、仕組化できてきたら、農家さん自身にやっていただく。そして私たちは次の経営課題を進めていく。あくまで裏方、触媒として農家さんの取り組みの一部分を担いつつ、形を整えて農家さんにバトンを渡していく役割だと思います。
オンラインサロン#FOODlab(フードラボ)について
FOODBOXとして走り始めて、2年が経とうとしています。この間、たくさんの農家さんの伴走支援をさせていただきましたが、私と池田の2名のフードカタリストだけでは、直接的な伴走支援には自ずと数に限界があるのも事実でした。
そこで、農家さんや食・農業界のエキスパート、関連企業様、学生さんなど、食・農業に興味のある方々が集い、新たな取り組みの実践や、ビジネスを生み出す場となることを目指して、2020年8月に私たちが立ち上げたのが「オンラインサロン#FOODlab(フードラボ)」です。
現在100名ほどの方が参加してくださっていますが、オンラインイベントをしたり、Facebookグループ内で交流をしたりと、活発な活動が行われています。
この場もまた、一つの触媒として、そして語り手の場として、食・農業界に新たな価値を生み出すコミュニティに育てていきたいと思いますし、ここを入り口にしてFOODBOXの取り組みや目指していることに興味をもってくださる方が増えてくれればうれしい限りですね。
さらにサロンメンバーにはそれぞれの地域や農作物でトップクラスの農家さんなどが入ってくださっています。そうしたプロ農家の知見をシェアしたり、コラボ企画に発展させたり、ご相談に応じたりとメンバー同士のコラボレーションについてもサポートしていきます。
フードカタリストとして、やらなければならないことが山積みですが、私自身も新たな仲間やサロンメンバーの皆さんから刺激をいただき、自分をアップデートさせながら、FOODBOXの成長を加速させていきたいと思います。
CEO、フードカタリスト
中村圭佑 / Keisuke Nakamura
福岡県の果樹農家出身で、大学卒業後は約7年間農薬メーカーに勤め、中国を中心に活躍してきました。農薬メーカー時代にMBAを取得&中国語をマスターし、その後コンサル業界に転職。2019年7月にこれまでのキャリアを生かしてFOODBOX(株)を起業しました。
農家さんと等身大でコミュニケーションをとり、本当に良いものを農家さんが本当に望む形で実現できるように、日本全国で東奔西走しています。農業の現場を知った上で、あえて枠に囚われず、新しい視点で農業界をもっとワクワクさせることを目指しています!困ったら何でも相談したくなる、そんな雰囲気の持ち主です!
聞き手・編集
FOODBOX広報部O
出版社の編集から現在フリーに。
FOODBOX広報部アシスタントをしています。
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