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本棚の耐えられない重さ 一月
本棚を壊したことは、
二度ほど。
どちらもちゃちな材質で、
ふえゆく本の重みに、
耐えられなかった。
いまの本棚たちは、
2×4材を組み合わせて、
夫が作ってくれたやつなので、
たぶん壊れない。
端の本に、ときどき
松脂がついてて困るけど。
↓前回(きょねん)
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戦争と平和 3
トルストイ
*
「安曇野」(臼井吉見)のなかの、
トルストイに影響をうけた日本の
インテリゲンチャたちのこと、
おもいだす。
トルストイに辿り着いたってしかたない。
トルストイが語っている、
真理というひとを見つけ出さなきゃ
いけないのにね。
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トルストイ
*
真理を含有している。
つなげることだ、とピエールが言う。
わたしも似たようなことを、
このあいだ子どもに語った。
神さまのことと、ほかのことはふたつの
別の山ではなくて、
だんだん悟りがひらけてくると、
すべてのことがキリストに
つながってくるのだと。
写真ぶれてる。
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菅谷昭
*
松本の前市長の本。
共産党が母体になって当選した市長。
何期やったんだっけ?
けっこう長かったはず。
(四期、十六年)
甲状腺専門の外科医で、
ベラルーシで医者として働いた。
その徳が買われて、帰国後松本市長に。
*
なんだかかれが(松本に)残した精神みたいなのが、
本のなかからも感じられるようなきがした。
まあ、わたし松本市民じゃないから、わかんないけど。
しかし読みながら、井上百貨店やパルコが撤退する
松本の問題をおもう。
カタクラモールの跡地に、
イオンを建てさせてしまったのが、
すべての始まり?
そんな単純なはなしではないだろう。
でも須坂にもイオン出来るし……
信毎読めたらいいのになあ…
*
ベラルーシ、たいへんな国だ。
奈倉さんが訳した小説や、
アレクセーヴィチ、それですこしだけ。
ルカチェンコ……
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トルストイ
*
復活といえば、
「カチューシャ可愛や、別れの辛さ」で
松井須磨子だと思ってたから、
いままで読もうとしてなかったのね。
これは、超古典的「クリスチャン」小説だったのにね。
トルストイが破門された原因になったという、
痛烈なロシア正教批判部分、おもしろい。
真理について書いた本だった。
言いたいことはいっぱいある。
大正時代に、トルストイに傾倒して、
けれどもトルストイの語る真理には到達しなかった
インテリゲンチャのこととかね。
あ、これ二度目か?
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トルストイ
*
キリストについて語った本だったのね。
さいごの、信条、みたいなのは、
ちょっとサンテックスの闘う操縦士のクレドみたいな
むりに道を示そうとしてる感がしなくもないわ。
でも、それはかれらが、地上に神の御国を見いだそうと
しているからなのね。だから、そういうふうに
クレドを作ってしまうんだわ。
「神の国は、じつにあなたの内にあるのです」
*
トルストイ主義について、いろんな本で考える。
もしかれが、聖書のすべてを指し示していなかったのなら、それは完全ではない。聖書は部分的に受け入れるものではない、「わたしは御言葉であり、真理である」といった方は、すべてを受けいれなくてならない。
真理は、トルストイにもなく、サンテックスにもなく、わたしなんかにもない。真理は神であって、その真理を指し示すこと、その総体を指し示すこと、
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ぱやぱやくん
*
このひとは、面白い文章を書く。
時々出てくる比喩がすごく効いてるし、
とても読ませる、とブログを読んで思ってた。
小原台刑務所、とわたしまで影響されて、
防衛大学のことを呼ぶので、
家族はあの山の上にみえるのは
刑務所なんだと信じていた。
体育会系の世界から、銀河四つぶんくらい
遠い人生を生きているので、
わたしはこういう暮らしは無理。
でもこないだ、観音崎公園であそんでいたら、
のぶとい掛け声が海のほうから聞こえてきて、
子どもとふたりで見に行ったら、
ちょうどカッター艇の練習をしてるとこだった。
あの子たち、お尻から血が出るくらい
大変なんだって、といいながら、
遠くから眺める防大生たちは平然としてるふうに
みえて、ひとの苦労って、外からじゃ
わかんないもんだな、とおもった。
血なんか、出してなかったかもしれないけど。
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筒井功
*
石牟礼さんの書くむかしの水俣みたいな、
あのとらえがたい、隅っこの歴史。
穴居生活をしたりしていた、箕作りのひとたち。
吉見百穴にひとが住んでたのは、
いつかなんとなく調べて知ってた。
あの、山道を歩くときに感じる、
あの気配。文字に残らないやつ。
調べすぎてもいけない、
だれかの秘密を暴くことになるから。
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アレグザンダーウォー
*
こういう家族史だいすきなので。
おもしろかった。
ナタリア・ギンズブルグのある家族の会話が、
すこし近い感じだけど、(インテリの上流の変人家族であるところ、時代がかぶる)、ウィトゲンシュタインの富ははんぱないのだ。ユダヤ人なのに、戦時中ドイツ国内に残ったふたりの老婦人が、無傷で(逮捕もされずに)いられたくらい。
かなりの財産を奪われた代わりに、だけれど。
哲学者のウィトゲンシュタインは知らなかった。
わたしが知ってたのは、その兄の、
ラヴェルの左手のためのピアノコンチェルトの
パウル・ウィトゲンシュタインの方だった。
その富を使って、書いてもらったのである。
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夏目漱石
*
やっと読み終わる。
こんど湯河原に行くから、
それまでに読んでいたかった。
その大半を占める人間の執着の行き違いは、
解脱しろよ、悟りでもひらけよ、
みたいなふうに読んでたけど、
終わりの温泉小説は澄みとおっていた。
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サンテグジュペリ
*
よみきかせホームスクーリング。
これ、子どもに理解できるはなしじゃないだろう。
ふんわりと雰囲気で消費するのでなければ…
ふんわりと、雰囲気で、
消費されること、
べつに嬉しくはないのでしょうね。
指し示した場所に、
視線をむけてもらえないなら。
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ジプシーの旅と暮らし
イザベラ・フォンセーカ
*
わたしがホームスクーラーだった、
高校生時代にであった本、
よみかえす。
異質なひとたちと生きていくこと。
ははは、わたしの日常じゃないか。
きずなができれば、かれらは異質ではなくて、
わたしの友だちになって、そしてきっとわたしの方が、
この日本の社会において異質になっていくんだけど。
でも、そういうふうに浮遊して、
生きていくのは悪くないかもしれない。
根をもちながら、根をもたないことも。
*
かなしみ。
純粋な、すきとおったかなしみ。
押しつけではない、いつくしみ、
または、あわれみの気持ち。
わたしを越えて、
あふれていく、感情。
というのも、わたし自身は有限で、
愛も善も、限られただけしか持ってないから。
わたしはじぶんの心をまもりながら、
わたしを越えてあふれていく、
彼の思いに、手足を動かす。
まなざしを絶やさないこと。
じぶんの心を守りながら。
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吉田ルイ子
*
読みたい! とおもって借りたのに、
返す前夜まで存在を忘れてた!
良いことじゃないけど、
そんなときに役に立つ、私の速読。
三十分で読んでいい本じゃないよ、これ。
もっと大切に読みなさいよ。
だけど明日返さないといけないからね。
こどもと暮らしていて、
役に立つスキルをひとつ持っているとしたら、
それは速読だ。上手にママをするスキル、
とくに物理的なのはなんも持ってないけど、
せめてじぶんの本を超スピードでよめる。
どうでもいいはなし。
*
1960年代のアメリカの黒人のひとたち。
藤本和子さんの世界の、ちょっと前かな?
その文脈でよむ。ばらばらと、
黒人のひとたちについて読むわけだけど、
かれらの自意識の変化みたいなのが、
みえてくるのはおもしろい。
*
わたしのまわりに、黒人のひとならいっぱいいる。
あの空間で、わたしたちは肌の色の関係のない
世界を築いている、といっていいとおもう。
うちの息子なんか、それがあたりまえだと思っているだろう。ちいさなころから、多国籍な教会にいるから。
アメリカでは、人種を感じていた。
わたしは旅人で、傍観者としてゆるされていたけど。
だけど、いま与えられている空間においては、
ふしぎにそういうことを飛び越えている。
それで、お互いを愛しあっている。
わたしの姉妹や、兄弟たち、家族。
なんでかな。わたし、いまなんだか自由だ。
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朴沙羅
*
「母親は人間でいられるし、人間でいるべきです」
という帯の文字で、おもしろそう、とおもった。
「移民」になることについて。
異質な存在として育つと、
見えてくるものがあるのかも。
彼女は在日朝鮮人としてそだって、
「ここではないどこか」を求めて、
子連れでフィンランドに移住した。
けれど賢いひとだから、
理想の国、だとか、そういうファンタジーが、
存在しないことを知っている。
でも、わかっていてもそうしないといけないくらい、
彼女はいきぐるしかったのでしょうね。
でも、自由な考えかたをする、
ユーモアがあってかしこいおんなのひとの文章、
読んでいてたのしかった。
もがいて、もがいて、
わたしたちは自由になる。
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国分拓
*
NHKのイゾラドについてのドキュメンタリーをみて、
数日間そのことばかり考えていた。
文明と接したことのない、アマゾンの先住民たち。
アウラとアウレという、たったふたりしか
生き残らなかった部族のこと。
彼らの言葉は、彼らにしか伝わらない。
相方が死に、たったひとりで、
じぶんにしか伝わらない言語と残されたひとのこと。
この世界で、この世界に属さずに生きているひとたち。
追いつめられているひとたち。
信仰に生きることとのつながり。
西洋の概念をもって、未開人に福音を
伝えるのだといって弓矢で殺された
未開人のことはしらん。
十字軍の正義から抜け出せんやつら。