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本棚の耐えられない重さ 一月




本棚を壊したことは、
二度ほど。
どちらもちゃちな材質で、
ふえゆく本の重みに、
耐えられなかった。
いまの本棚たちは、
2×4材を組み合わせて、
夫が作ってくれたやつなので、
たぶん壊れない。
端の本に、ときどき
松脂がついてて困るけど。


↓前回(きょねん)






戦争と平和 3
トルストイ

「安曇野」(臼井吉見)のなかの、
トルストイに影響をうけた日本の
 インテリゲンチャたちのこと、
おもいだす。
トルストイに辿り着いたってしかたない。
トルストイが語っている、
真理というひとを見つけ出さなきゃ
いけないのにね。


戦争と平和 四 五
トルストイ

真理を含有している。
つなげることだ、とピエールが言う。
わたしも似たようなことを、
このあいだ子どもに語った。
神さまのことと、ほかのことはふたつの
別の山ではなくて、
だんだん悟りがひらけてくると、
すべてのことがキリストに
つながってくるのだと。
写真ぶれてる。


「新版 チェルノブイリ診療記」
菅谷昭

松本の前市長の本。
共産党が母体になって当選した市長。
何期やったんだっけ?
けっこう長かったはず。
(四期、十六年)
甲状腺専門の外科医で、
ベラルーシで医者として働いた。
その徳が買われて、帰国後松本市長に。

なんだかかれが(松本に)残した精神みたいなのが、
本のなかからも感じられるようなきがした。
まあ、わたし松本市民じゃないから、わかんないけど。
しかし読みながら、井上百貨店やパルコが撤退する
松本の問題をおもう。
カタクラモールの跡地に、
イオンを建てさせてしまったのが、
すべての始まり?
そんな単純なはなしではないだろう。
でも須坂にもイオン出来るし……
信毎読めたらいいのになあ…

ベラルーシ、たいへんな国だ。
奈倉さんが訳した小説や、
アレクセーヴィチ、それですこしだけ。
ルカチェンコ……


復活 上
トルストイ

復活といえば、
「カチューシャ可愛や、別れの辛さ」で
松井須磨子だと思ってたから、
いままで読もうとしてなかったのね。
これは、超古典的「クリスチャン」小説だったのにね。
トルストイが破門された原因になったという、
痛烈なロシア正教批判部分、おもしろい。
真理について書いた本だった。
言いたいことはいっぱいある。
大正時代に、トルストイに傾倒して、
けれどもトルストイの語る真理には到達しなかった
インテリゲンチャのこととかね。
あ、これ二度目か?


復活 下
トルストイ

キリストについて語った本だったのね。
さいごの、信条、みたいなのは、
ちょっとサンテックスの闘う操縦士のクレドみたいな
むりに道を示そうとしてる感がしなくもないわ。
でも、それはかれらが、地上に神の御国を見いだそうと
しているからなのね。だから、そういうふうに
クレドを作ってしまうんだわ。
「神の国は、じつにあなたの内にあるのです」

トルストイ主義について、いろんな本で考える。
もしかれが、聖書のすべてを指し示していなかったのなら、それは完全ではない。聖書は部分的に受け入れるものではない、「わたしは御言葉であり、真理である」といった方は、すべてを受けいれなくてならない。
真理は、トルストイにもなく、サンテックスにもなく、わたしなんかにもない。真理は神であって、その真理を指し示すこと、その総体を指し示すこと、


「今日も小原台で叫んでいます」
ぱやぱやくん

このひとは、面白い文章を書く。
時々出てくる比喩がすごく効いてるし、
とても読ませる、とブログを読んで思ってた。
小原台刑務所、とわたしまで影響されて、
防衛大学のことを呼ぶので、
家族はあの山の上にみえるのは
刑務所なんだと信じていた。
体育会系の世界から、銀河四つぶんくらい
遠い人生を生きているので、
わたしはこういう暮らしは無理。
でもこないだ、観音崎公園であそんでいたら、
のぶとい掛け声が海のほうから聞こえてきて、
子どもとふたりで見に行ったら、
ちょうどカッター艇の練習をしてるとこだった。
あの子たち、お尻から血が出るくらい
大変なんだって、といいながら、
遠くから眺める防大生たちは平然としてるふうに
みえて、ひとの苦労って、外からじゃ
わかんないもんだな、とおもった。
血なんか、出してなかったかもしれないけど。


「漂泊民の居場所」
筒井功

石牟礼さんの書くむかしの水俣みたいな、
あのとらえがたい、隅っこの歴史。
穴居生活をしたりしていた、箕作りのひとたち。
吉見百穴にひとが住んでたのは、
いつかなんとなく調べて知ってた。
あの、山道を歩くときに感じる、
あの気配。文字に残らないやつ。
調べすぎてもいけない、
だれかの秘密を暴くことになるから。





「ウィトゲンシュタイン家の人びと」
アレグザンダーウォー

こういう家族史だいすきなので。
おもしろかった。
ナタリア・ギンズブルグのある家族の会話が、
すこし近い感じだけど、(インテリの上流の変人家族であるところ、時代がかぶる)、ウィトゲンシュタインの富ははんぱないのだ。ユダヤ人なのに、戦時中ドイツ国内に残ったふたりの老婦人が、無傷で(逮捕もされずに)いられたくらい。
かなりの財産を奪われた代わりに、だけれど。
哲学者のウィトゲンシュタインは知らなかった。
わたしが知ってたのは、その兄の、
ラヴェルの左手のためのピアノコンチェルトの
パウル・ウィトゲンシュタインの方だった。
その富を使って、書いてもらったのである。



「明暗」
夏目漱石

やっと読み終わる。
こんど湯河原に行くから、
それまでに読んでいたかった。
その大半を占める人間の執着の行き違いは、
解脱しろよ、悟りでもひらけよ、
みたいなふうに読んでたけど、
終わりの温泉小説は澄みとおっていた。


「星の王子さま」
サンテグジュペリ

よみきかせホームスクーリング。
これ、子どもに理解できるはなしじゃないだろう。
ふんわりと雰囲気で消費するのでなければ…
ふんわりと、雰囲気で、
消費されること、
べつに嬉しくはないのでしょうね。
指し示した場所に、
視線をむけてもらえないなら。


「立ったまま埋めてくれ」
ジプシーの旅と暮らし
イザベラ・フォンセーカ

わたしがホームスクーラーだった、
高校生時代にであった本、
よみかえす。
異質なひとたちと生きていくこと。
ははは、わたしの日常じゃないか。
きずなができれば、かれらは異質ではなくて、
わたしの友だちになって、そしてきっとわたしの方が、
この日本の社会において異質になっていくんだけど。
でも、そういうふうに浮遊して、
生きていくのは悪くないかもしれない。
根をもちながら、根をもたないことも。

かなしみ。
純粋な、すきとおったかなしみ。
押しつけではない、いつくしみ、
または、あわれみの気持ち。
わたしを越えて、
あふれていく、感情。
というのも、わたし自身は有限で、
愛も善も、限られただけしか持ってないから。
わたしはじぶんの心をまもりながら、
わたしを越えてあふれていく、
彼の思いに、手足を動かす。
まなざしを絶やさないこと。
じぶんの心を守りながら。


ハーレムの熱い日々
吉田ルイ子

読みたい! とおもって借りたのに、
返す前夜まで存在を忘れてた!
良いことじゃないけど、
そんなときに役に立つ、私の速読。
三十分で読んでいい本じゃないよ、これ。
もっと大切に読みなさいよ。
だけど明日返さないといけないからね。
こどもと暮らしていて、
役に立つスキルをひとつ持っているとしたら、
それは速読だ。上手にママをするスキル、
とくに物理的なのはなんも持ってないけど、
せめてじぶんの本を超スピードでよめる。
どうでもいいはなし。

1960年代のアメリカの黒人のひとたち。
藤本和子さんの世界の、ちょっと前かな?
その文脈でよむ。ばらばらと、
黒人のひとたちについて読むわけだけど、
かれらの自意識の変化みたいなのが、
みえてくるのはおもしろい。

わたしのまわりに、黒人のひとならいっぱいいる。
あの空間で、わたしたちは肌の色の関係のない
世界を築いている、といっていいとおもう。
うちの息子なんか、それがあたりまえだと思っているだろう。ちいさなころから、多国籍な教会にいるから。
アメリカでは、人種を感じていた。
わたしは旅人で、傍観者としてゆるされていたけど。
だけど、いま与えられている空間においては、
ふしぎにそういうことを飛び越えている。
それで、お互いを愛しあっている。
わたしの姉妹や、兄弟たち、家族。
なんでかな。わたし、いまなんだか自由だ。


「ヘルシンキ 生活の練習」
朴沙羅

「母親は人間でいられるし、人間でいるべきです」
という帯の文字で、おもしろそう、とおもった。
「移民」になることについて。
異質な存在として育つと、
見えてくるものがあるのかも。
彼女は在日朝鮮人としてそだって、
「ここではないどこか」を求めて、
子連れでフィンランドに移住した。
けれど賢いひとだから、
理想の国、だとか、そういうファンタジーが、
存在しないことを知っている。
でも、わかっていてもそうしないといけないくらい、
彼女はいきぐるしかったのでしょうね。
でも、自由な考えかたをする、
ユーモアがあってかしこいおんなのひとの文章、
読んでいてたのしかった。
もがいて、もがいて、
わたしたちは自由になる。


「ノモレ」
国分拓

NHKのイゾラドについてのドキュメンタリーをみて、
数日間そのことばかり考えていた。
文明と接したことのない、アマゾンの先住民たち。
アウラとアウレという、たったふたりしか
生き残らなかった部族のこと。
彼らの言葉は、彼らにしか伝わらない。
相方が死に、たったひとりで、
じぶんにしか伝わらない言語と残されたひとのこと。
この世界で、この世界に属さずに生きているひとたち。
追いつめられているひとたち。
信仰に生きることとのつながり。
西洋の概念をもって、未開人に福音を
伝えるのだといって弓矢で殺された
未開人のことはしらん。
十字軍の正義から抜け出せんやつら。

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