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 年を取れば取るほど振り返る。振り返った所で何も変えられないのに。変える為に振り返るんじゃない。過去が好きだから振り返る。

 お世辞にも私の歩みは良いものではないし、消し去りたい事柄の方が遥かに多い。何より私の今を作り上げたのは過去であり、歩みを変えていたら私はきっともっと人を愛することが出来たし、憎しみを抱く人を増やさなかっただろう。過去を振り返るというのは、憎しみの追体験。人の過去を羨む程度には私は自分の過去が寧ろ嫌い。

 それでも振り返るのは、私の空白を埋める大事な人と出会っていたから。そして、振り返るのはその人と会っていた頃に戻りたいから。

 常に近くに居た人程、気づけば疎遠になっていた。縁を切った訳ではない。勿論嫌いになった訳ではない。だが、どんな人とも辿る道を同じく歩むことは出来ない。訪れる岐路で別れてしまっただけ。年を取るというのはそういう事だから。

 ただ、私はその岐路を戻りたいけど、戻った所で大事な人はもうそこには居ないのに。

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