ほろ酔いの夜に餃子を添えて
私の大好きな箱庭の1周年。
大学生の時は岡山で、今は東京でその夜を過ごす。
愛も変わらず相変わらず、
ネオンが光るその夜にニンニクの香りとパクチーの癖を添えてくれるこの世界が大好きなんだ。
そんな餃子世界。
笹塚の匂いは湿度が少し高くて歩くたびにその湿り気がまとわりつく。
私の楽園が一歳の誕生日を迎えた。
岡山で葛藤していたあの頃に句点を打つようにこの東京で突く餃子は感慨深いものがある。
仕事終わりのその足でいつものあの子と立ち寄った。
私には大きすぎる重低音は脳を揺らす。それに釣られて体も揺れる。
こんなにも多くの人が餃子世界を求めて来ていると。
ディズニー並みに並ぶタバコの列、押し寄せる人の波、暖色のライトが心地いいフロア。
ボウリング場を貸し切ってるもんだから、ピンが倒れる音が私の息継ぎ代わり。
岡山で知り合ったDJのあの子達は、やっぱりカッコよかった。瞬きを忘れるほどに見入ってしまって、イヤホンをしているかのように聴き入ってしまったよ。
普段文字とばっかり対峙しているもんだから、行かないんだよそういう空間。ちょっとソワソワした、あいがけカレーを一口、餃子を一つ食べるごとにそのソワソワがワクワクへと上書き保存されていく。
餃子世界を創り上げた守屋さん。
こんなに愛されてるんだよ。
あなたすごいよ。勝手に私が誇らしい気持ちを持ってしまっているくらいにね。
同世代の音楽愛好家たちが作り上げる音のせいで、財布の紐は緩まるばかり。たまにはいいんだよね。
音楽とお酒、それと餃子。
普段飲まないカシオレの甘さにさらに喉の渇きを覚えて、知らないお兄さんにもらったワインはすっきりとした後味だった。
フラフラっとそのまま
体の内側から熱を帯びてそのまま焚き火の中に入れられたさつまいもみたいにホクホクの焼き芋が出来上がるのを待つ感覚がずっと続いてた。
カメラ越しのライブで歌うあの人たちはイッツスモールワールドの人形みたいだった。夢の具現化だった。
私は目に焼き付けたいからあなたが代わりに動画を撮って欲しい。
この余韻のまま明日の仕事へ繰り出せるだろうかと。
この重低音に潰されてこのままこの世に存在しなかったことになってしまいたい。
あわよくばそのまま終わることのない税金の支払いから逃れたい。
そんな現実味のない事を懇願するほどの夜。
餃子の匂いで脳がよだれを出してしまうほどの夜。
帰り道に今日聴いた曲が頭から離れなくなってリズムを刻むように歩いてしまう夜。
湿度の高い匂いがする笹塚が帰る頃には鼻を通り抜けるほどの爽やかな匂いに変わっていた。
そんな夜だった。