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4日に1回は会いに行きたいけど
心地いい春を思い出せなくなるあの日を君は私の名前で呼んでいた。好んで端に座っているつもりはないのにいつも両端に私の名前を書いてしまうのはなぜなの。所有物にいつも名前を書く君の手のひらはずっと天を向いたまんま。右目だけ隠れるその前髪を勝手に切ってみる。雨の降らない梅雨は名前だけもらって安心しているんだよ。本屋で働いているのに本は読まないんだよ僕。とタバコを吸いながら話す同業者。週に1回は村上春樹好きですか?と聞かれる。好きか嫌いかで返事を出来るほど読めていないですと答える文句。バンドが好きだけどRADWIMPSを通らずにここまで来たあの子と同じ類だ。INAXギャラリー出版の本たちはなんであんなに私を惹きつけるのだろうか。河出文庫にそそられないのはあの梟と安っぽい黄色のせいだろうか。左肩の奥から湧き上がるポツポツとしたこの気持ちをどこへ出すのがいいだろう。褒められても貶されても怒られても、消えないこの蟠りは恋と呼ぶには軽すぎる。少し眠そうな君の瞼の裏には何が映っているの。あの時渡された防犯ブザーは1回も鳴らさないまま僕は死んでしまったよ。君の記憶に滞在したいという思いばかりが募って今日もお弁当を家に忘れてしまったよ。僕には到底叶いそうにないないけれど、ずっと見ていてもいいかな。多分今日もじゃんけんには勝てないけど。