
爪は伸びて割れて、また伸びる
奥行きが果てしない時間だった。
両手では足りない愛を受ける日が来るとは思ってもいなかった。
淡白でたまに粘着質、遇らったくせに手を繋ぐ、付かず離れず傷跡が見えないようにやり過ごす、燃え移る前に鎮火。
そんな日々とはかけ離れていた。
感情が文字からしか読み取れないSNSでの執筆は楽だった。葛藤や揺らぎを完全犯罪で隠せるから。
一つの空間に直視できる文章を作る時間は非常に悩ましかった。手書きで書いてみたり、パソコンで打って印刷してみたり、テプラに頼り切ったり。清書前のメモを置いてみたり。限りなく裸に近い文章を載せる怖さとほんの少しの期待。
個展前まで文章を形として出すのが怖かった。そういう時期だったのだ。出来上がりとして印刷してしまうと気持ち悪くて鳥肌と吐き気が止まらない。だからwebでしか書いていなかった。夏だからだ。夏だからなのだ。夏が全部悪い。
今回の個展は所謂、自傷行為に近いものだと思っていた。文章を書いている時は楽しくてたまらないのに、書きあげた、となった瞬間にゴミのように思えてしまうのは捻くれたどうしようもない性格のせいなのだろうか。
想像を遥かに超えた人が見にきてくれた。
正直言ってしまえば、想像なんてしていなかった。仲のいい友達が数人、熱烈な愛をくれる読み手が2、3人。そう思っていた。それだけで十分だと思っていた。
カランカランと音が鳴り、こうべを垂れながら店に入ってくる。その光景は流石に気持ちが良かった。
感想を聞くのが怖いから、感想は聞きたくないし、言いたくない。でもこの個展中はアドレナリンでやり過ごせそうな気がして、感想ノートなるものを作ってみた。
個展が終わった後に全部全部、隅の隅まで読んだ。まっすぐすぎる愛は暴力と何ら変わりないと思っていたし今でも思っている。だけれど、あの空間へのみんなからの愛は、暴力へと変わることなく愛のまま私の元に届いた。
また今日からNOTEに書くと思う。書けるか知らないけど、書かないの?とLINEで催促されたから。
今日も爪が割れた。明日には気持ち伸びていたら嬉しい。な