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忘れないために私は息を吐いてるの
タバコの煙はため息と一緒に吐いてもいいし、美味しさの延長で満足感と吐いてもいいんだ。
なぜ吸うの?
忘れないためだよ。
大好きな祖父が吸ってたんだ。
私と祖父の秘密。
これはね家族みんな知らないかもしれない。
私と祖父だけの秘密。
両親が私が喫煙者だなんて知ったら怪訝な顔をしてくるんだろうな。
大好きな祖父が私の前から姿を消した時に、今までにない絶望と虚無感でいっぱいだったの。
今の私は祖父の考えや教えから出来ててさ。
そんな祖父とさよならを交わした日に決めたんだ。
祖父の好きだったタバコとお酒は私も愛したいなって。
愛の表れなんだ。
喫煙者は嫌われます。
喫煙者に厳しい世の中です。
でも私にとっては死んだ祖父との唯一の繋がりなの。
線香を毎日上げる感覚でタバコの煙を吐いてるの。
認知症で私の名前も分からなくなって、デミグラスソースのハンバーグに焼肉のタレをかけちゃうくらい味も分かんなくなってた。
でもタバコを吸うのだけは忘れないで続けてた。
唯一忘れずに入れたものを大切にしたくてさ。
おんなじ空気を吸えてるんだって。
いろんな場所を経験して自分が手にとるように変わっているからさ、
どんどん変わる自分が大好きで誇りを持っていて、
でもそれに伴って、変わらない何かと忘れたくないソレはあるのよ。
タバコを吸う理由はソレなの。
くっさいしさ、お金もかかるし、やってらんないよ。
でも、吸わなくなって、忘れてしまうことが怖いから。
パチ屋に連れてかれて、キッチンカーの肉巻きおにぎりを食べながら、タバコを吸う祖父の隣でファンタグレープを一缶。
大人になって、寝癖をアクセサリーにコーヒーの匂いを嗅ぎながら吸うその瞬間はあの時のファンタグレープの味そのものなの。
遺品みたいな感じなの。
すごく愛されている人だったの。
破天荒で法律なんて知らない人。
でも優しくて、寄り添ってくれる人。
お前はそのまんまでいいよって唯一言ってくれた人。
私の尊敬する人は祖父です。
大好きなんです。
祖父の得意技はカンチョーでした。
小学生の時にそれを真似して、友達にカンチョーをしたら失神しました。
流石に反省してます。
でもそれも笑い話に出来るくらいに成長してしまいました。
祖父の月命日はなるべく仏花を買うようにしてます。
今こうやって好きなことを野放しで出来ているのは祖父のおかげです。
世界で一番大好きな人なんです。
多分今頃酒とタバコに溺れて天国で飲酒運転してるんだと思う。
愛してます。
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