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熱すぎるくらいにチンして
東京に引っ越して4日目の夜。
カーテンとは言えない布を窓にかける。
結局は布なので、外の影が部屋から見えてしまう。
明かりを消して、眠りにつこうとすると、
カーテン越しに一つの影が。
最初は人かと少し怖くなったが、それはそれは小さな生き物だった。
多分ここは猫の恩返しの世界なのかもしれない。
この家はボロい。
インターホンは無いし、郵便ポストもない。
バストイレ別なんてもってのほか。
宅急便のお兄さんのごめんくださ〜い!で起きる朝。
それでもこの家が気に入ったのだ。
部屋の中がとにかくタイプだった。
広めの玄関に細い廊下を抜けた先にある私の部屋。
クローゼットは大きめで窓は4つもある。
駅近で、家に入る道は人が1人通るのがギリギリ。
即決だった。
内見をせずに決めようとした私を止めてくれた不動産屋のお姉さん。
実際に内見しても変わらない心があった。
まだ入居したてなのに、不思議と懐かしい感じがあるのは、築年数のせいだろう。私の歳の2倍以上あるこの家。
この家を見つけ出した私に褒美をあげたい。
全身鏡と机が見つからない。
作業するときに使う机を探している。
前の家で使っていたキャンプ机がやっぱりちょうどいい。
全身鏡はなんでこんなにも高いのか、うざったい。
出退勤する人間はなんでこんなにも心に余裕がないのか。
満員電車はありがたい。吊り革を持たなくてもいいから。勝手に知らない誰かに支えられている。
前の職場のギャルが言っていた。
余裕がなくてイライラしてるいる人や、態度が悪い人がいたら、全員赤ちゃんだと思えばいいんです。って
たしかに、、
赤ちゃんだと思って接してみる。
こちらに余裕が生まれる。
流石ギャル。ギャルマインド私も欲しい。
ああ、桃の季節なのに、なんでこんなに桃は高いのか。あんなに可愛い色をしているのに、値段は可愛くない。アメリカンチェリーなんてもってのほか。
前髪を切ると視界が明るい。鮮明に物事を見れる気がする。
今日の空事情は、黄色と水色だった。
電車から微かに見える空は雲に少しだけ覆われて、黄色と水色のグラデーションが眩しかった。
東京は街灯に虫が寄り付かない。
夜でも明るいこの街。どこに集まればいいのか分からなくなってるらしい。
私の家の玄関以外ならどこでもいいよ。
朝ごはんはシナモンロールだと気分がいい。
恵比寿で買った一つ450円のシナモンロールは熱すぎるくらいにチンをして。
白い砂糖のようなものを溶かして手でかぶりつくのがいい。
私の家は今日もブレーカーが落ちた。
そのまんま寝るとする。