映画「ズートピア」構成分析
ズートピア:完璧な脚本が描く理想と現実
「ズートピア」はまさに完璧な脚本が詰まった映画でした。以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。
※トップ画像は作品をイメージしたイラストで作品内容とは無関係です。
この映画のテーマは非常にシンプルで、「人は本気になれば何にでもなれる。生まれに左右されない」というものです。このテーマは「レミーのおいしいレストラン」や「モンスターズユニバーシティ」といったピクサー映画を彷彿とさせます。
主人公のジュディ・ホップスは、草食動物で小柄な雌ウサギでありながら、警察官になるという大きな夢を持ち、その夢を実現するために強い意志で努力します。彼女は「小柄で」「草食動物である」という最初からある種のハンデを背負っていますが、それに負けること無く一直線に警察官を目指します。こういった主人公像は「僕のヒーローアカデミア」の主人公などでも描かれていました。圧倒的に不利な状況にありながら夢を目指す主人公像は王道ながら視聴者が主人公を応援したいという気持ちにさせ、効果的です。
彼女の相棒となるニック・ワイルドは、このテーマに対するアンチテーゼの役割を果たしています。彼は「人は生まれに左右される」という信念を持っており、ジュディとの対比が物語を深めます。
ジュディは第一幕ですぐに警察官になりますが、彼女の試練はここからが本番です。小柄なウサギということで不当な扱いを受けますが、決してめげることなく逆境に打ち勝ち、次々と成功を収めていきます。この過程で、相棒のニックの心情にも変化が現れます。
しかし、成功も束の間、ジュディはある事件をきっかけに「人は生まれに左右される、縛られてしまう」といったニュアンスの発言をしてしまいます。これにより、テーマに対するアンチテーゼを自ら引き寄せてしまうのです。その結果、彼女はすべてを失い、共に行動していたニックも彼女の元を去ってしまいます。
こうした状況を打開するために、ジュディは自らの挫折を乗り越える必要があります。この過程の演出が非常に秀逸です。ジュディの言葉によって傷ついたニックですが、その言葉は彼女自身のこれまでの人生を否定するものでした。自分を裏切るような言葉で相棒を傷つけてしまった彼女は、感情が爆発し、涙を流します。このシーンによって、ドラマチックな展開が生まれます。
このような完璧な脚本は、一人の人間では作り上げられないでしょう。クレジットを見ると、脚本家が14人ほど名を連ねていました。非常に有機的かつシステマチックに、なおかつ柔軟でクリエイティブに物語を構築していく体制が整っているのでしょう。この映画を観て、その素晴らしい脚本に感銘を受けました。
ズートピアは、誰もが夢を追いかける勇気を与えてくれる、心温まる映画です。ぜひ一度ご覧になってください。
構成分析
AIの力を借りて構成分析してみました。
ログライン
熱意ある若いウサギの警察官ジュディ・ホップスは、理想の都市ズートピアで行方不明事件を解決しようとする。狡猾なキツネの詐欺師ニック・ワイルドと協力し、偏見や社会の分断と戦いながら、ズートピアの平和と共存の精神を守るために奮闘する。
主人公(ジュディ・ホップス)の主要な物語上の動機と葛藤
動機:
子供の頃からの夢を追い、ズートピアの警察官になること。
誰でも何にでもなれるという信念を証明すること。
ズートピアをより良い場所にするために、自らの力で貢献したいという強い願望。
葛藤:
他の動物たちからの偏見や差別に立ち向かうこと。
警察内部での軽視や見下される態度に直面すること。
失踪事件の捜査中に、自身の能力や判断力に対する自信を揺るがされること。
捕食者と非捕食者の間の分断を目の当たりにし、自分の発言が引き起こした結果に悩むこと。
相棒(ニック・ワイルド)の主要な物語上の動機と葛藤
動機:
自分自身と親友であるフィニックを養うために詐欺を働くこと。
ジュディとの協力を通じて、彼女の捜査を助けることで自分の名誉を回復しようとすること。
幼少期のトラウマから、自分が持っている潜在能力を証明したいという願望。
葛藤:
子供の頃に経験した差別や裏切りからくる、他者への不信感。
自分の犯罪歴や過去の行動に対する罪悪感。
ジュディとの信頼関係を築く中で、自分自身のアイデンティティや価値観を再評価する必要があること。
事件の真相に迫る中で、再び社会の偏見と向き合わなければならないこと。
ブレイクスナイダービートシートに沿った分解
ディズニー映画「ズートピア」をブレイクスナイダービートシート(BBS)に沿って分類すると、以下のようになります。私の感想を考慮した上でBBSにしてもらってあーだこーだいって色々直してもらいました。
オープニング・イメージ
映画は幼少期のジュディ・ホップスが学校で劇を演じているシーンから始まります。ズートピアが理想の都市であり、どんな動物でも何にでもなれるという夢を描いています。しかし、その後、ジュディはキツネのギデオン・グレイにいじめられ、現実の厳しさを知ります。
テーマの提示
ジュディの親が彼女に安全な農場生活を勧め、夢を追うことの危険性を語ります。ジュディは「誰でも何にでもなれる」というテーマに固執し、警察官になる夢を捨てません。
セットアップ
ジュディは警察アカデミーで厳しい訓練を受け、最終的にズートピアの警察官となる。しかし、最初の任務は駐車違反のチケットを切ることで、理想と現実のギャップに直面します。また、ニック・ワイルドと初めて出会います。
きっかけ
ミセス・オッタートンが夫の失踪を報告し、ジュディがこの事件の捜査を志願しますが、上司のボゴ署長に反対されます。ジュディは自らの決意でニックを捜査に巻き込みます。
悩みの時
ニックとジュディはミスター・オッタートンが最後に目撃された場所を訪れ、重要な手がかりを得ます。しかし、次々と現れる障害や危険によって、捜査は難航します。
第一ターニング・ポイント
ジュディとニックはミスター・オッタートンが「野生化」してしまったことを発見し、さらに複数の動物が同様に行方不明であることを知ります。この事件が単なる失踪事件ではなく、陰謀が絡んでいることが明らかになります。
サブプロット(Bストーリー)
ジュディとニックの関係の発展がBストーリーです。最初は互いに信頼していませんが、共に捜査を進める中で信頼と友情が芽生えます。
お楽しみ
ジュディとニックがさまざまなキャラクターと出会い、危険な状況を切り抜けるアクション満載のシーンが続きます。特に、ナチュラリストクラブやミスタービッグとの出会いなど、コミカルでエンターテインメント性の高い場面が特徴です。
ミッド・ポイント
ニックが幼少期にズートピアで経験した差別を語り、彼の過去と動機が明らかになります。これにより、ジュディはニックに対する理解と共感を深めます。
迫り来る悪い奴ら
ジュディとニックは、失踪した動物たちが政府の陰謀によって意図的に野生化させられていることを突き止めます。しかし、その情報を公開する前に、様々な勢力が二人を阻止しようとします。
すべてを失って
ジュディが記者会見で「捕食者」が本能的に危険だと発言し、それがズートピア全体の分断を引き起こします。ニックとの友情も壊れ、彼女は警察を辞職します。
心の暗闇
ジュディは故郷に戻り、夢を諦めかけます。しかし、彼女は農場で育ったニンジンから事件の真相を見つけ出し、再びズートピアに戻る決意を固めます。
第二ターニング・ポイント
ジュディはニックに謝罪し、再び共に捜査を再開します。二人は事件の真相を明らかにするために協力し合います。
フィナーレ
ジュディとニックはズートピア市長ベルウェザーの陰謀を暴き、彼女を逮捕します。ズートピアの市民たちは再び平和と協力を取り戻します。
ファイナル・イメージ
ジュディとニックが正式にズートピア警察のパートナーとなり、新たな事件に立ち向かう姿が描かれ、映画はハッピーエンドで締めくくられます。
参考にした書籍はこちら
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