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#123_EU対アストラゼネカの戦い

コロナのワクチンについて、日本では今、米モデルナ、英アストラゼネカ、米ファイザーの3社と契約をしていますが、

(厚生労働省HP資料・1月20日更新)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000723995.pdf

そのうちのアストラゼネカと、EUが揉めているようです。

もともと両者は、2020年8月27日、The Advance Purchase Agreement(事前購入契約)を結んで、EUがアストラゼネカに対して資金援助する代わりに、アストラゼネカはEUの加盟国に対してワクチンを供給することを約束していました。

一方、アストラゼネカは、今年になって、ワクチンの供給量を削減することを通告。当然ながらEUはこれに反発していますが、面白いのは、これまで公表してこなかった同社との契約書を公表したこと。もちろん、価格等の情報は黒塗りですが。

ちょっと読んでみましたが、やはり気になるのは、アストラゼネカのワクチン供給義務が法的にbindingか(拘束力があるか)という点です。これについて直接規定しているのは5.1条などであると思いますが、パッと読むと、

“AstraZeneca shall use its Best Reasonable Efforts to manufacture the Initial Europe Doses…”

とあり、(最善の合理的な)「努力義務」のようにも思えます。

なお、“Best Reasonable Efforts”については、頭文字が大文字であることからもわかるように定義が設けられており(1.9条)、おおざっぱに言って、アストラゼネカと同規模のインフラやリソースを有する会社が、現状のコロナの状況等に鑑みて実施するであろう活動や努力とされています。まあ、そこまで通常の努力義務規定と違いはないように見えます。

アストラゼネカは英国企業なので、英国とEUの微妙な関係が背景にあることは否定できないですね。

ただ、上述のとおり、日本はそのアストラゼネカと契約をしているわけで。どんな契約内容になっているのか気になりますが、

プレスリリースには添付されておらず、公表されていないようです。このあたりのリスク分配について、きちんと作りこんでいることを願います。

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