まどみちお「くまさん」に見る、自分が自分であることの喜び
まどみちおさんという詩人を知っていますか??
数年前にお亡くなりになったけど、優しく深い童謡や詩をたくさん残された詩人です。いちばん有名なのは童謡「ぞうさん」ですね。
私はこの方がほんとうに大好きで、まさに哲学、まどさんの小宇宙というべき優しさに溢れた世界を見つめる目に何度も助けられました・
この「くまさん」は教科書にも載っていたことがあって、知ってる方も多いかな。
ぜひ検索して読んでみてもらいたいんだけど、冬眠からあけたクマの子がぼんやりしてたんぽぽを見つめながら「えーっとぼくは誰だっけ?」ってぼんやりしているのが第一連。
そのくまさんがぼんやりしたまま川へ来て
「みずに うつった いいかお みて
そうだ ぼくは くまだった
よかったな」
で、短い二連の詩が終わります。
私はこの詩を読むと、「自分が自分であることの喜び」みたいなものをすごく感じるんだよね。
「そうだ ぼくは ぼくだった よかったな」って言えることってものすごく幸せなことだと思う。
〇〇ができたからすごいとか、××で一番だからえらいとか、そういうんではなくて、ただ一人の存在として、「ぼくでよかった」と言えることの幸せ。
この詩を読むと、いつもちょっと泣きたくなるのは、そんな優しいメッセージが感じられるからだと思うんだよね。
私たち、自分で自分のことを「自分でよかった」って感じられる機会ってどれくらいあるんだろう??
大人も子どももあまりにも忙しすぎて、ぼんやりしたり、ぼんやりした自分を受け入れたり、自分という存在のかけがえのなさに気づいたり、そんなちょっとした生きる喜びみたいなものを感じづらくなってるかもしれないよね。
自己肯定感とか生きる力とか言うと陳腐だけど、そんな言葉を使わずにたった12行の詩の中に「自分であることの喜び」を表現したまどさんってやっぱりすごいよ。
ぜひいろんな人に、この詩をじっくり味わってほしいな。
詩を読むってたぶん、短い言葉の中に自分を見つける作業だと思う。
くまさんがたんぽぽや自分の顔を見つめたように。
それから子どもと読むなら一緒に「そうだ ぼくは くまだった よかったな」と言える幸せを感じてほしい。
子どもたちはきっとそんな「幸せ」とか「自分」とか考えもしないと思うけど、多分誰かと一緒に詩や絵本を味わう時間が、「そうだ ぼくは ぼくだった よかったな」っていつか感じられる心の土台になるんじゃないかなって思うよ。
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