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オーケストラ部② ホルン初挑戦の日々

 地獄の楽器決めを経て、1年生全員の担当楽器が決まった。

 金管楽器1年はホルン、トランペット、トロンボーンに各2人ずつ。
 トロンボーンの1人は中学の吹奏楽部でトランペットをやっていたが、他の5人は全員が金管楽器初心者だった。
 つまり6人全員がその楽器の初心者。5人はマウスピースを鳴らすのが初めて、ゼロからのスタートということになる。

 みんなで線路沿いでマウスピースをプープー鳴らしながら一緒に帰ったのはとても良い思い出だ。
 中学からの経験者からすれば、マウスピースを鳴らすことくらい今更何とも思わないだろう。しかし音量も大きさもとっても手軽なこのマッピ(マウスピース)は、私達6人にとって重要な第一関門であると同時に、誰かが鳴らしていると思わず自分も加わりたくなる面白アイテムでもあった。

マウスピース

 少し時間が飛ぶが、夏ごろには私達はマッピだけで遊びの演奏をすることにはまっていた。

 夏休みの合宿中は「アルゴリズム行進」をマッピだけで吹きながら行進することが、6人の中で一大ブームとなった。
 私はマッピのなんとも間の抜けた音と、6人が隙あらば無意味に隊列を組んで行進する様子が何回加わってもおかしく、絶対に途中でくず折れて爆笑してしまうため、毎回行進から離脱していた。

 以上のエピソードからも分かる通り、我々金管1年はあっという間に仲良しになった。
 “ほぼみんな初心者”という条件も良かったのかもしれない。我々6人には「これから一緒に頑張っていこう」という結束感があった。自分と同じスタートラインから始めた仲間が少しずつ上達していくのを間近で見ていると、「自分も頑張ろう」というポジティブな刺激を受けて練習を頑張ることができた。

 1年生にとっての初めての曲は、7月の発表会「サマーコンサート」で演奏する3曲。わが校の校歌、となりのトトロの「さんぽ」、「パイレーツオブカリビアン」だ。

 ゴールデンウィーク明けに楽器が決まったので、楽器を初めて触ってからたった2か月でこの3曲を演奏できるようにならなければいけない。当時はそういうものだとしか思わなかったが、今考えるとなかなか無茶なことをやったと思う。

 配られたホルンの楽譜を見た私は、「音域も役割もフルートと全く違うなあ」と思った。4つしかないピストンで全ての音階を出すことといい、本当にホルンはフルートとは何もかもが違った。そして、違ければ違うほど新鮮で面白かった。

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