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「贖罪」(湊かなえ)感想 やっぱりダメ人間に共感してる
湊かなえの3作目の小説、「贖罪」を読みました。めっちゃ刺さったので「ホンカツ」という読書会に持って行きます。
でも、その前にもうここで語りたくなってしまいました。
<「贖罪」のあらすじ的なやつ>
・5人の10歳の女の子が一緒に遊んでいると、男が現れてそのうちの一人を連れて行き、殺してしまう。
・残りの4人は犯人の目撃者として警察から事情聴取を受けるが、4人とも「犯人の顔が思い出せない」と言った。
・その3年後、殺された女の子の母親が4人を呼び出してもう一度事件の詳細を聞くが、4人とも「犯人の顔が思い出せない」と言った。そこで母親は次のセリフを4人に言う。
「バカの一つ覚えみたいに、顔は思い出せない、思い出せないの繰り返し。あんたたちがバカだから三年も経つのに犯人が捕まらないのよ。こんなバカたちと遊んでいたから、エミリは殺されてしまったのよ。あんたたちのせいよ。あんたたちは人殺しよ!」
「わたしはあんたたちを絶対に許さない。時効までに犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できるような償いをしなさい。そのどちらもできなかった場合、わたしはあんたたちに復讐するわ。わたしはあんたたちの親より何倍もお金も権力も持っているのよ。必ず、エミリよりもひどい目にあわせてやるわ。エミリの親であるわたしにだけは、その権利があるのだから」
・このセリフを言われた4人が25歳になるまでの12年間、4人がこの言葉にどのように影響され、どんな人生を送ってきたかが順番に語られる。
・最後に、このセリフを言った本人の人生も語られる。
もうなんか、「うわぁ……(引)」って感じですよね。この5人の女の人生については是非当書を読んで欲しいのですが、もう全体的に一人残らず「うわぁ……」って感じです。
そしてホンカツに備えて共感した箇所にふせんを貼っていったのですが、ふせんを貼った箇所が5人のうちの2人の語りに偏っていました。
そしてこの5人の中で断トツのダメ人間、問題のセリフを言った母親、麻子になんと一番共感してしまいました。
麻子の共感したダメな部分はざっと以下の通りです。
・恵まれているという自覚がなく、恵まれていない人間を無意識に見下しているが、その自覚もない。
・むしろ「自分は人に喜んで欲しい人間だ」と思っている。それは完全に間違いではないんだけど、「自分の身が一番可愛い」「他人よりも自分」という性格は自覚していなくて、「人に喜んで欲しい」の部分ばっかり認識しているから「自分は親切な人間だ」と思っている。で、「私は周りに親切にしているのに何で好きになってくれないの、なんで上手くいかないの。周りが悪いんだ」とヒステリックになってしまう。
・さらにその「自分は人に喜んで欲しい」も、「これをやってあげたら相手は喜んで感謝してくれて当然」という思い込みを含んでいて、自分の期待通りの反応が返ってこないと相手を責める。
はい、もう、白状します。全部やってました。これらがダメだという自覚を持った今だから言えます。
事実、この「贖罪」は大学生の時に一回読んだのですが、読解力が無さ過ぎたのと自分のダメな部分の自覚の無さとで当時はあんまり響きませんでした。
色々経験して自覚して良かったなあ……目も当てられねえよ……
さっきのあらすじ的なやつに書いた麻子のセリフは全く擁護できませんが、麻子の生き方を擁護するなら以下の苦悩があったんだなと読み取りました。
・中途半端に「人から好かれたい」と思っていることの辛さ。「人に好かれるために自我や本音を飲み込む」と、「他人の評価を気にせず好きなように振る舞う」のどちらにも振り切れないがための上手くいかなさ。自分なりに他人に気を遣っているつもりなのに、中途半端にわがままなせいで他人からいまいち好かれないことを気にするし、原因が分からないから周りを責めちゃう。
分かる……分かるぞ……!「人から嫌われたくない」と「人から嫌われる」の悪いとこ取りの人生になるんだよな。で、原因が分からないんだよな。辛い、それは辛いよな……
ホンカツでは他の参加者さんとの意見交換や質問もあるので、全く新しい感想や考察が出てくるかもしれません。楽しみです!