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「書くを遊ぶ、即興ライティング」を実施して

先日、「書くを遊ぶ」をコンセプトに、初めて即興ライティングのワークショップを実施した。

この即興ライティングをやろうと思ったもともとのきっかけは、インプロの演劇ワークショップだ。10年程前に、東京学芸大学の高尾隆先生を招いて月に1度、1年間のワークショップを実施してもらった。

その中で特に印象に残っているのが、即興で歌を歌った回と、その場で参加者が絵を描いてその絵をつなげて物語を作り、それを即興で演じた回だ。当時の自分は、人前で演じるなんてとんでもないし、しかも即興で演じたり歌ったりするなんて絶対ムリ!と思っていた。

だが、高尾先生がすごく丁寧に様々な取り組みをしながら、そういう「緊張」や「恐れ」を取り除いてくれた。

「私たちには、すでに物語の型が埋め込まれています。だから安心してください。そして、一緒にやるメンバーを信頼してください」

と言われた。その言葉を信じて実際にやってみると、自分の中から考えてもいなかった歌や物語が出てきて、それを発した自分が一番驚いたという経験を、何度もした。

そのインプロワークショップのように、誰かが何かを発すればそれを他の誰かが受け止めて何かを返してくれるという、キャッチボールのような、みんなでボールをつないでいくような場を、今回書くことでやろうと考えた。

当日は、3人の予定だったが、1人参加できなくなってしまい、はじめましてのMさんと2人で取り組んだ。Mさんは「即興」「書く」というキーワードでこのイベントを見つけてくれたらしい。こんな情報の海の中で見つけてくれたことがものすごくうれしかった。

当日の内容は、こんな感じ。

・自己紹介:自分を何かに例えて書く
・テーマに関連して書く:カードを引いて出た問いについて書く
・絵や写真を見て書く:今回はゴッホの絵と、写真賞の受賞作品を見て書く
・音楽を聞いて書く:歌詞のないBGMを聞いて書く
・リレー式物語創り:順番にリレー式で物語を書いていく
・フリーライティング:自由に書きたいことを書く

自分自身も「即興で書く」ことを体験するために、事前にリハーサルとして書かないでおいた。なのでどのくらいの時間でどの程度書けるのかみたいなものはあまり想定することができず、当日やってみて、あらためて、難しさと楽しさの両方を感じた。

難しさというのは、時間と言葉の難しさだ。内容をあれこれ盛り込んであるので、どのワークも書く時間が10分、20分と結構短い。何をどう書こうかと考えているとあっという間に時間が来てしまう。だからどうしても、こだわって書くのではなく、ざくっとふわっとした言い方になってしまう。さらに、短い時間の中で、自分の中に直感的に湧き上がってくるものに、ズバッとフィットする言葉を当てはめることは、そんなにホイホイできるものではないなと思った。

ただ、時間という制限があるからこそ書けるという要素は大きい。日常の中でこんなにぐーっと集中して書くことはない。もっとダラダラと書いている。制限があるからこそ、しかもそれが短い時間だからこそ、目のまえの書くに集中して、自分の中から何かしらを引っ張り出すことができるのだなあということも実感した。

楽しかったことは2つ。まず、同じ入り口なのに、全然違う方向に進む誰かの文章を読むこと。そうか、こういう風に書くこともできるんだなあとか、こんな風に書くと読む人にこういう印象を与えることできるんだなあと、自分にはない表現にとっても刺激を受けることができた。自分だけで書いているとどうしてもある種のパターンに陥ってしまうから。

もう1つは、筋トレのように、書くために必要ないろんな部位に負荷を与えているような楽しさがあった。特に音楽を聞いて書くときの負荷のかかり方は、普段あまり体験しないものだった。音楽によって自分の中に何かしらの感情や記憶への刺激が起こり、それが言葉になっていない状態のまま自分の中にあって、それをいかに引っ張り上げて言葉のまとまりにしていくか。これが難しいけれど楽しかった。ちょっと難しいくらいのときが、一番適度な負荷がかかってフローになりやすい状態なのかもしれない。

絵を見て書くことも、写真を見て書くことも、想像がいろいろ膨らんで、その想像の時間も楽しかったし、リレー小説も、いったいどう進むんだという先の読めない感じがおもしろかった。もっともっと続きを読んでみたくなる小品になった。このリレーだけで2時間くらい取り組んでみてもいいかもしれない。

書いた文章を、少し時間が経って読み直したら、改めて気づくこともあるだろう。それもまた後日の楽しみだ。

参加してくださったMさんがアンケートを寄せてくれた。

・絵を見て書く
 今回取り組み、純粋な気持ちで楽しめた。他の項目と比較しても、絵を観ながら書くことは、強く想像を刺激する部分があり、アイディアを膨らませていくような作用が自然に働いた。

・音楽を聞いて書く
 絵や写真と違い、聴いていて浮かんでくるのは具体的な状況や場面ではなく、観念的な部分が揺れ動いてくような感覚が終始あり、その心の変容の観察記録をしているようだった。今までにない体験で、掴みどころがほとんどないものに対して、言葉を当てはめて形にしようとする行為は新鮮だった。

・リレー式物語創作
 今回最も大変だったが、最もスリリングで、楽しかった。二人三脚で物語を仕上げて行く中で、一色に染まりそうだった文章に違う視点からの文章が混入することで違う選択肢の可能性が生まれた。書こうとするときに、その段階での意識にもっと目を向けてみようと思った。

今回、絵や写真、音楽やリレー式などを使用させて頂く中で、それらが書くきっかけとなり何かしらの散文を書けましたが、日常の中にも、何かしら心が動いて書けるようなことを体験していると思うので、今後、書くような視点で日常を観察してみたいと思いました。


これからも実験的に取り組みながら、「楽しく書く、遊ぶように書く」を発展させていきたい。そんな「楽しく書く、遊ぶように書く」仲間を増やしていきたい。その先に何があるか?それはまだ見えないけれど、進んでいくこと自体がとてもワクワクする道だ。

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